【電子書籍の出版契約|著作権|『出版権』は平成27年から適用|印税相場】

1 電子書籍の方式と規格(フォーマット)
2 『紙の書籍の出版契約』は『電子書籍』をカバーしない|平成27年法改正で変わる
3 電子書籍の出版契約は『利用許諾』or『権利譲渡』方式
4 先行する紙の書籍出版契約の『独占権』×『電子書籍』の抵触
5 出版契約の『継続出版義務』×『電子書籍』→適用されない
6 出版契約の『サブライセンス』×『電子書籍』→該当する
7 『電子書籍』×『契約期間満了後のダウンロード』→契約書の工夫が必要
8 『電子書籍』×対価(印税)設定の特殊性

1 電子書籍の方式と規格(フォーマット)

『電子書籍』を簡単に言うと『オンライン上で本が読める』ということになります。
技術的な仕組みとしては,いろいろなバラエティがあります。

<電子書籍の仕組み・方式のバラエティ>

あ コンテンツ|構成要素

文字・画像・動画・振動

い 保管・記憶方式

ア インターネット上(サーバー)イ 情報記憶媒体(DVD・Blu-ray Discなど;※1)

う 情報ダウンロード方式

ア 完結型ダウンロード方式イ ストリーミング方式

え 再生方式

ア 専用端末イ スマートフォン・PC等の汎用機器

<電子書籍の呼称のバラエティ・規格>

あ 呼称のバラエティ

・電子書籍
・電子ブック
・デジタル書籍
・デジタルブック
・Eブック
・オンライン書籍

い 電子書籍の規格;例

ア Amazon Kindle(AZW)イ 楽天Kobo Touchウ EPUB(フォーマット)

<注意;本記事の『電子書籍』の呼称について(上記※1)>

DVDやBlu-ray Discの媒体を販売する方式も『電子書籍』と呼ぶこともあります。
しかし,より一般的な語法としては,オンライン上のサーバーの情報をダウンロードする方式を指すことが多いです。
技術的・法的にもDVD・Blu-ray Disc方式は『紙の書籍』に近いです。
そこで以下,DVD・Blu-ray Disc方式を除外したものを『電子書籍』と言います。

2 『紙の書籍の出版契約』は『電子書籍』をカバーしない|平成27年法改正で変わる

(1)現行著作権法では『紙の書籍』と『電子書籍』は別の扱い

『紙の書籍』の契約形態のうち代表的なものは『出版権設定契約』です。
『出版権』の対象は,『機械的or化学的方法』による『複製』が前提となっています。
別項目|出版権設定契約|独占権

<紙の書籍・電子書籍×『出版権』該当性>

書籍の種類 作成方式 著作権法の権利 出版権に該当するか
紙の書籍(紙への印刷) 機械的方法(印刷) 複製権
DVD・Blu-rayDisc方式 化学的方法(記録) 複製権
電子書籍=オンラインデータのダウンロード 『機械的・化学的』方法ではない 『(自動)公衆送信権』

(2)平成27年1月以降は『電子書籍の出版権』創設

『紙の書籍』と『電子書籍』で,法的な扱いを統一するという要請がありました。
そこで,法改正が成立しております。

<改正著作権法80条>

あ 改正法80条の条文

出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる権利の全部又は一部を専有する。
一 頒布の目的をもつて、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま前条第一項に 規定する方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する 権利を含む。)
二 原作のまま前条第一項に規定する方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利

い 施行時期

平成27年1月1日施行
※平成26年改正附則1条

う 経過措置

施行前に存在する出版権は従前の内容のままである
※平成26年改正附則3条

平成27年1月の施行時点よりも前に契約した『出版権(設定契約)』については,引き続き,従来のルールが適用されるのです。
そこで,以下,改正法施行前=現行法のルールの内容を説明します。

3 電子書籍の出版契約は『利用許諾』or『権利譲渡』方式

『電子書籍』の配信は,著作権法上の『複製』ではなく『(自動)公衆送信権』に該当するのです(著作権法23条)。

<電子書籍の出版契約の分析>

あ 電子書籍(データ)配信の分析

『公衆送信』+『公衆からの『求めに応じ』自動的に行う』→『自動公衆送信』

い 『自動公衆送信』の法的性格

『公衆送信権』(23条)+『送信可能化権(同様の権利)』(92条の2)

う 電子書籍出版契約の形態

ア 自動公衆送信権の譲渡イ 自動公衆送信の許諾 ※著作権法63条

<標準的な契約書の『電子書籍』に関する条項>

第 20 条(電子的使用)甲は、乙に対し、本著作物の全部または相当の部分を、あらゆる電子媒体により発行し、もしくは公衆へ送信することに関し、乙が優先的に使用することを承諾する。
外部サイト|一般社団法人 日本書籍出版協会 出版契約書フォーマット(一般用)

4 先行する紙の書籍出版契約の『独占権』×『電子書籍』の抵触

紙の書籍について,出版権設定契約を行った後は『独占』という性格に注意する必要があります。
第三者は当然として,ライター自身の行為も制限されます。

<出版権の『独占』を侵害する行為>

あ ライターが同一コンテンツをオンライン販売(電子書籍)すること

Amazon,Apple,Google等のサービスの利用など
フォーマットが『配信サービス独自』の場合,『侵害者』=『配信会社』となります。

い ライターがHP・ブログ・SNSなどで同一コンテンツを公開・公表すること

『頒布目的の公表』→『出版権』を侵害する,ということになります。
法的には『複製』ではなく『公衆送信』ですが,『出版権者の複製→頒布』を害する,ということに変わりはないのです。

5 出版契約の『継続出版義務』×『電子書籍』→適用されない

<『継続出版義務』の内容|紙の書籍・電子書籍>

あ 『継続出版義務』の内容

頒布可能な状態を維持すること

い 書籍の形態による内容の違い

紙の書籍 印刷・書店への配本など
電子書籍 送信可能な状態にあること

う 継続出版義務に含まれないもの

しっかりと宣伝すること

結局,『宣伝してくれない』という場合でも,『継続出版義務違反』ではない→著作者は消滅請求できない,ということになります。
紙の書籍では印刷・書店への配本という業務が存在するので,必然的に一定のプロモーションが行なわれます。
ところが,電子書籍の場合は,サーバーにアップロードするだけで,それ以外の物理的な作業がありません。
『アップロードだけした+宣伝(プロモーション)なし→何もしていないのと同じ(売れない)』と言えます。
ただ,法的には『義務違反』とはならないと考えられるのです。
『宣伝』が法的義務だとすると,その内容が明確にできない,という現実的な不都合が根本的な理由です。
逆に,電子書籍の出版の際は,『行うべきプロモーション内容』を契約上の条項として明確化しておくことが望まれます。

6 出版契約の『サブライセンス』×『電子書籍』→該当する

電子書籍の出版者が,別の『配信事業者』に発注(サービスを利用)する,ということも想定されます。
しかし,電子書籍の契約=『送信可能化権の譲渡・許諾』においても,『サブライセンス』が禁止されています(著作権法63条3項)。
この点は,契約の中に『再許諾(サブライセンス)できる権利』を条項として含めておくとベターです。

7 『電子書籍』×『契約期間満了後のダウンロード』→契約書の工夫が必要

電子書籍においては,『ユーザーが再度コンテンツをダウンロードする』というニーズがあります。
規格上,想定されるアクションです。

<ユーザーの再度ダウンロードについての配慮>

あ 問題点

電子書籍出版の契約上『配信期間』が設定される
→期間満了後にサーバーの保管ができない
→ユーザーが再ダウンロードできなくなる

い 対応策

ア 電子書籍の出版契約の条項例 頒布禁止の例外を設定する
『購入済のユーザーの再ダウンロードに限って配信可能とする』
イ ユーザーとの契約条項(了承事項)例 『再ダウンロードの期間制限』

8 『電子書籍』×対価(印税)設定の特殊性

<印税>

著作物の利用の対価
『ロイヤリティ』とも呼ぶ

<電子書籍における印税に関する特殊性>

書籍の種類 印刷・流通のためのコスト・先行投資 印税 相場(概要)
紙の書籍 5〜10%
電子書籍 30〜70%(※2)

※2 電子書籍の印税
AmazonKindleストアでは,35or70%−配信コスト,という設定があります。

また,電子書籍においては,レガシー紙書籍とは違う,収益構造の特徴があります。
印税を含めた『利益分配』の構造も従来のものとは違うものとして定着しつつあります。

<電子書籍の収益構造の特徴>

あ コンテンツ『販売単価』の変動リスク

ア エンド販売価格を変動させられる(※3)イ 他の書籍とのセット販売が容易ウ 月額課金方式も可能 一定の期間内に対象書籍を閲読可能という方式

い コンテンツのクオリティと販売数の相関関係が濃くなる

コンテンツ一部の無償提供というプロモーション方法がある

う 配信業者の長期的メリットとのバランス

配信業者の長期的メリット
『良質コンテンツ確保』→電子書籍規格のシェア拡大

※3 紙の書籍の再販制度
紙の書籍・雑誌については,再販制度で『販売価格』を拘束しています。
電子書籍の『出版者』(配信業者)は一般的に再販制度を利用していません。
参考コンテンツ|書籍の再販制度;H13公正取引委員会の見解→現在では合理性なし

<参考情報>

電子書籍・出版の契約実務と著作権 民事法研究会

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