【訴訟で有利な結果を獲得するためには審理だけでなく和解協議も重要】

1 訴訟では,判決に向けた審理だけではなく和解に向けた協議も行なわれる
2 裁判官の訴訟指揮により和解協議が行われる
3 当事者(弁護士)の行為により有利な和解実現可能性を高める
4 裁判所から和解勧告案が出されても,諾否は任意
5 裁判所の和解勧告案を拒否する時の工夫
6 訴訟;裁判所の和解勧告案→裁判所の心証を予測
7 控訴審における裁判所の和解勧告案はより慎重に検討すると良い

1 訴訟では,判決に向けた審理だけではなく和解に向けた協議も行なわれる

判決を出すということを前提とすると,書類の証拠や,証人尋問が非常に重要です。
しかし,実際の訴訟においては,そのような調査,審理,と併行して,和解に向けた話し合いが持たれることが多いです。
別項目;ご相談者へ;訴訟;判決/和解レシオ

2 裁判官の訴訟指揮により和解協議が行われる

訴訟の進め方については裁判官に大きな裁量があります。
これを訴訟指揮と言います。
より具体的には,裁判官としても,和解をトライする意味があるかどうかを考えます。
訴訟の内容や当事者(原告や被告)の意向によって,どのタイミングで和解を打診するのか,あるいはしないのか,を決めることになります。
ですから,裁判官が当事者(原告や被告の代理人)に,進め方について意見を聞いてくるのが通常です。
逆に,代理人弁護士から,進め方について積極的に意見を述べることもあります。

なお,当事者から積極的に裁判所の和解的判断を求める手続もあります。
詳しくはこちら|判決と和解の中間的手続(裁定和解・17条決定・調停に代わる審判)

3 当事者(弁護士)の行為により有利な和解実現可能性を高める

判決は,証拠の積み上げで出来上がるものですが,和解協議はそのような厳密な証拠評価・事実認定と直結しません。
ですから,現実に,和解協議の進め方によって結論が異なるということは十分にあり得ます。
逆に言えば,和解協議というのは非常にデリケートなのです。
典型的,というか単純で分かりやすい例を挙げておきます。

(1)書証による有利な心証形成

書証によって裁判官に,当方に有利な心証を持ってもらうという活動です。

<裁判官が当方に有利な心証を形成した場合の影響>

当方に有利な内容の和解勧告につながる
・裁判官が相手方に対する譲歩を要求,説得する,ことにもつながる

(2)相手方の信用性欠落を決定付ける

<相手方の信用性欠如が強固にする例>

相手方が虚偽の主張をした

すぐには反論せず,相手方に,『主張の具体化』を進めさせる

当方から,これを否定する証拠(弾劾証拠)を提出する

当方に有利な心証となったら,上記『(1)』に続きます。

4 裁判所から和解勧告案が出されても,諾否は任意

裁判官から当方に不利な和解勧告案が出されることがあります。
和解勧告案を断るのは自由です。
和解というのは双方が納得・合意して初めて成立するのです。
裁判所が提示するのはあくまでも提案です。
強制されません。

5 裁判所の和解勧告案を拒否する時の工夫

裁判官から不利な和解勧告案が出された場合,どのように対応すべきでしょうか。
原則としては,きちんと理由を説明した上で断るべきです。

裁判所の和解勧告案を断ることは可能です。
しかし,内容を大して考慮せずに断るのは得策ではありません。
態度によっては,『頑固だ』,『解決への協力の態度に欠ける』と受け取られるおそれがあります。
いわゆる心証印象が悪いということです。
もちろん,仮に判決まで行ったとして,裁判官はそのような態度イメージだけで判断するわけではありません。
しかし,実際に,どのような事情がどの程度影響を与えるか,についての科学的検証は不可能です。
少なくとも代理人として弁護士が遂行している場合,プロフェッショナルとしては,多少でも不利になる可能性があることは極力避けるべきだと思います。
この視点とは別に,当初の和解成立への道筋想定を外れることもあります。

<和解成立への道筋が想定を外れる例>

当初『こんなに見解が違ったら和解なんて成立しないな』と思われる

先入観を持たずに,真面目に和解案について検討する

結果的に和解が成立した

いろんな意味で,裁判官による和解勧告案は真面目に検討して,どのような回答にしても誠実に説明すべきです。

6 訴訟;裁判所の和解勧告案→裁判所の心証を予測

書証提出や証人尋問がほとんど終わった段階では,裁判官が心証を開示することがあります。
つまり,判決を出すとした場合の内容を説明することです。
書証,証言などの証拠が出揃っているので判断できる状態にあるのです。
この場合は,仮に和解勧告案を断ったとしても,同じ内容の判決が出る可能性が高いです。
単純に『断れば避けられる』ということにはなりません。
ただし,逆に『受け入れるしかない』というのも間違いです。
本当に不当な内容であれば,判決が出された後に控訴することまで視野に入れた上で断ることも検討すべきです。

7 控訴審における裁判所の和解勧告案はより慎重に検討すると良い

(1)控訴審は事実上の最終審

控訴と異なり,上告はその理由が非常に制限されています。
一般的に言えば,上告は『審理に入ること』自体が非常に少ないです。
大半は審理前に棄却されます。
そこで,控訴審実質的な最終審と言えます。

(2)審理によって心証が変わる可能性が類型的に低い

控訴審まで進んでいるということは,当然,第1審(原審)で審理が一通り終わっているはずです。
そこで,控訴審で裁判官(裁判所)からの和解勧告案は,仮に決裂した場合に言い渡される判決と同じ内容である可能性が高いです。
その意味で,控訴審の和解勧告案はミニ判決とも言うべきものです。
実際上応じざるを得ないという状況に近いとも言えます。

(3)控訴審の和解勧告判決と同様に批判した例

分かりやすい例としては,青色ダイオード職務発明事件の控訴審があります。
被控訴人(原告)が和解案に応じて,和解が成立しました。
その直後の記者会見で原告は,裁判所の判断を批判されていました。
納得したから和解が成立したのに,なぜ不満を言っているのだろうという声を当時よく聞きました。
その回答(理由)は上記のような構造なのです。

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