【建設業における下請契約の規制のまとめ;建設業法】

建設業において,元請から下請に発注する,ということがよく行われています。
特別なルール・規制はありますか。

1 建設下請契約は元請の優越的地位を抑制されている;建設業法
2 下請契約では不当に低い請負代金が禁止されている
3 元請が一方的に請負代金を決めることは禁止されている;指値発注
4 元請が使用材料等の購入を強制すると違反になることがある
5 下請の負担によるやり直し工事は禁止されている
6 経費を下請代金から控除すると違反になることがある;赤伝処理
7 下請代金の支払いサイトは発注元からの入金後1か月までとされる;支払留保

1 建設下請契約は元請の優越的地位を抑制されている;建設業法

元請と下請では,継続的に工事を発注・受注する関係が通常です。
このような関係上,元請が強く,下請が弱い立場にある,という関係になりがちです。
元請業者には,下請業者の指名権,選択権があるからです。
このような立場の差,つまり優越的地位を利用した,不当な契約が広く行われていました。
そこで,建設業法で,典型的な不当な取引を規定し,これを禁止するに至りました。

2 下請契約では不当に低い請負代金が禁止されている

請負代金額が不当に低い請負契約は禁止されています(建設業法19条の3)。

<条文上禁止される請負金額>

建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額

<国土交通省のガイドラインによる説明>

当該工事の施工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格

さらに,当該ガイドラインでは,一般的に必要と認められる金額の内訳を次のように説明しています。

<『一般的に必要と認められる金額』の内訳>

あ 直接工事費
い 間接工事費

共通仮設費
現場管理費

う 一般管理費

利潤相当額は含みません。

3 元請が一方的に請負代金を決めることは禁止されている;指値発注

元請業者が,下請業者と協議を十分に行わず,一方的に請負代金を決めて下請契約を締結することは禁止されています。
形式的に下請契約が成立(契約書の調印など)が認められても,請負代金額によって違反となることがあります。
請負代金額について,下請業者が十分に納得していない場合は違反となるのです。
建設業法18条では,対等な立場公正な契約が規定されています。
なお,実際に一方的な金額決定となった場合は18条以外の条項に抵触することもあります。

4 元請が使用材料等の購入を強制すると違反になることがある

元請業者が下請業者に対して,使用する資材,機械器具等を指定することは制限されています。
取引上の地位を不当に利用したとされる場合は違反となります。
この地位の『不当な利用』の内容については条文上規定されていません。
実務上,このような指定の結果,下請業者が損失を被った場合に該当すると判断される傾向があります。
また,資材,機械器具自体を指定しなくても,購入先を指定した場合も同様に扱われます。

5 下請の負担によるやり直し工事は禁止されている

現実的な建設工事で,仕様変更などは通常あり得ます。
工事の一部がやり直しとなることもあります。
その場合,請負契約の変更,と考えられます。
元請業者と下請業者で代金を含めて条件を協議します。
そして,双方が実質的に納得して契約書に調印する必要があります(建設業法19条2項)。
元請業者が優越的地位を利用して,下請業者の費用負担となる前提でやり直し工事をさせるという場合は,この条項違反となります。
なお,同時に別の条項に抵触することもあります。

6 経費を下請代金から控除すると違反になることがある;赤伝処理

元請業者が下請業者と合意しないまま,一定の経費を下請代金から控除することは禁止されています。
経費分を控除するという処理に着目して赤伝処理と呼ばれています。
これについては,一定の制限があります。

<控除することが禁止される経費の例>

・下請代金支払に関して発生する経費(下請代金の振込手数料)
・建設廃棄物の処理費用
・駐車場代,弁当ごみ等の処理費用,安全協力会費

経費の控除(赤伝処理)は絶対的に違反となるわけではありません。
元請業者が控除額の内容(使途),根拠を十分に説明し,下請業者も十分に納得していれば別です。
その上で,下請契約において,下請業者の負担と規定した場合は,違反とはなりません。
この場合は,当然,見積書や契約書に明記されていることが大前提となります。

7 下請代金の支払いサイトは発注元からの入金後1か月までとされる;支払留保

下請工事完了後,不当に長期間下請代金を支払わない(留保する)ことは禁止されています。
一般に,元請業者が発注元から請負代金の支払を受けた場合,その後1か月が下請業者への支払期限とされています(建設業法24条の3)。
これ以上長いサイト(支払期限)は違反となります。
当然,支払を受けられるのは出来高割合だけ,となります。
なお,元請業者の規模が一定以上(特定建設業者)の場合は,1か月の制限が50日に緩和(長期化)されます(建設業法24条の5)。

条文

[建設業法]
18条(建設工事の請負契約の原則)
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

19条2項
請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

19条の3(不当に低い請負代金の禁止)
注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)
注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。

24条の3(下請代金の支払)
1 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
2 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。

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