1 名誉棄損罪の基本
2 『公然・毀損』の解釈
3 『事実の摘示』の要件と人物の特定
4 公共の利害に関する場合の特例(基本)
5 犯罪行為と公務員に関する特別扱い

1 名誉棄損罪の基本

本記事では,名誉毀損罪について説明します。
まずは構成要件と法定刑をまとめます。

<名誉棄損罪の基本>

あ 構成要件

公然と事実を摘示し,人の名誉を毀損すること
事実が真実かどうかは関係ない

き 法定刑

法定刑=『ア』or『イ』
ア 懲役or禁錮3年以下
イ 罰金50万円以下
※刑法230条1項

2 『公然・毀損』の解釈

名誉毀損罪の構成要件の中に『公然・毀損』という用語があります。
この意味の解釈をまとめます。

<『公然・毀損』の解釈>

あ 『公然』

ア 認識可能性
不特定または多数の者が『認識し得る』状態のこと
実際に『認識した』に至る必要はない
※大判明治45年6月27日
イ 伝播性の理論
伝達対象が『少数』でも伝播可能性があれば成立する

い 『毀損』

ア 基本的事項
被害者の社会的評価が低下する危険が生じたこと
イ 抽象的危険犯
現実に社会的評価が低下することは必要ではない
※大判昭和13年2月28日

3 『事実の摘示』の要件と人物の特定

名誉毀損の構成要件の一部に,事実の摘示があります。
事実の摘示の内容をまとめます。

<『事実の摘示』の要件と人物の特定>

あ 基本的事項

名誉毀損罪の成立のためには
『事実』が表現に含まれることが必要である
『事実』がなく『評価』のみの場合は『侮辱罪』に該当する
<→★侮辱罪との比較

い 事実の摘示の方法(基本)

事実の摘示の方法について
→特に制限はない

う 事実の摘示の具体例

ア オンライン
例;インターネットのサイト(掲示板)・アプリに投稿する
イ 張り紙
ウ 街宣車
エ 記者会見

う 対象人物の特定

氏名を明示しなくても,『察知可能』で足りる
※最判昭和28年12月15日

4 公共の利害に関する場合の特例(基本)

名誉毀損罪については,非常に大きな特例があります。一定の事項については公表しても犯罪にはならないというものです。
表現の自由の方が尊重されるという趣旨です。

<公共の利害に関する場合の特例(基本)>

あ 基本的事項

『い〜え』のすべてに該当する場合
→違法性が阻却される

い 公共性

摘示した事実が公共の利害に関する事実である(※1)

う 公益目的

摘示の目的が専ら公益を図ることにあった

え 真実性

真実であることの証明があった
※刑法230条の2第1項

5 犯罪行為と公務員に関する特別扱い

公表(摘示)された内容が犯罪行為や公務員の行動であるケースでは特別扱いがあります。

<犯罪行為と公務員に関する特別扱い>

あ 公訴提起前の犯罪行為

公訴が提起されていない犯罪行為に関する事実について
→『公共の利害に関する事実』(前記※1)とみなす
※刑法230条の2第2項

い 公務員の公益性

『ア・イ』の両方に該当する場合
→違法性が阻却される
ア 公務員
公務員or公選による公務員の候補者に関する事実である
→公共性+公益目的が肯定されるという趣旨である
イ 真実性
真実であることの証明があった
※刑法230条の2第3項