1 違法な表現行為による刑事責任(総論)
2 名誉毀損罪(概要)
3 侮辱罪の基本
4 侮辱罪の『公然・侮辱』の解釈
5 名誉棄損罪と侮辱罪の共通事項
6 名誉棄損罪と侮辱罪の違い
7 『事実の摘示』の判断の具体例
8 信用毀損罪の基本
9 信用毀損罪の『信用・毀損』の解釈

1 違法な表現行為による刑事責任(総論)

一定の違法な表現行為は損害賠償などの民法上の責任が生じます。
詳しくはこちら|違法な表現行為×民事責任|判断基準|損害賠償・差止・削除・謝罪広告
一方,民事責任とは別に,刑事責任を生じることもあります。
犯罪の種類は,名誉棄損罪・侮辱罪・信用毀損罪があります。

2 名誉毀損罪(概要)

まずは名誉棄損罪について,基本的事項をまとめます。

<名誉毀損罪(概要)>

あ 構成要件

公然と事実を摘示し,人の名誉を毀損した
事実の有無に関わらない

い 法定刑

法定刑=『ア』or『イ』
ア 懲役or禁錮3年以下
イ 罰金50万円以下
※刑法230条1項
詳しくはこちら|名誉毀損罪(構成要件と公共の利害に関する特例)

3 侮辱罪の基本

侮辱罪の基本的事項についてまとめます。

<侮辱罪の基本>

あ 構成要件

事実を摘示していない
公然と人を侮辱した

い 法定刑

拘留or科料
※刑法231条

う 拘留・科料の内容
拘留 刑事施設への拘置1日以上30日未満 刑法16条
科料 1000円以上1万円未満 刑法17条

4 侮辱罪の『公然・侮辱』の解釈

侮辱罪の構成要件の解釈をまとめます。

<侮辱罪の『公然・侮辱』の解釈>

あ 『公然』

名誉毀損における『公然』と同じ(前述)

い 『侮辱』

他人の人格を蔑視する価値判断を表示すること

う 構成要件全体のまとめ

事実を摘示しないで名誉を毀損すること
※通説

5 名誉棄損罪と侮辱罪の共通事項

以下,名誉毀損罪と侮辱罪を比較します。
最初に,共通する事項をまとめます。

<名誉棄損罪と侮辱罪の共通事項>

あ 名誉棄損と侮辱

『名誉を毀損』と『侮辱した』の共通事項
→社会的評価を低下させること

い 公然

名誉毀損罪・侮辱罪ともに『公然』が含まれている
『公然』の意味について
→不特定・多数の者(に伝えたこと)

このように,根幹部分が共通なので似ているのです。
いずれにしても,単に公表しただけではいずれの罪にも該当しません。
不特定・多数への伝達,によってはじめて罪に該当するのです。

6 名誉棄損罪と侮辱罪の違い

名誉棄損罪と侮辱罪は似ているけど違いもはっきりしています。
2つの罪の違いは『事実の摘示』の有無ということになります。

<名誉棄損罪と侮辱罪の違い(概要)>

罪名 事実の摘示の有無
名誉棄損罪 あり
侮辱罪 なし

詳しくはこちら|名誉毀損罪(構成要件と公共の利害に関する特例)

7 『事実の摘示』の判断の具体例

実際には『事実の摘示』に該当するかどうかの判断が難しいケースもあります。
ここでは,分かりやすい典型例を紹介します。

<『事実の摘示』の判断の具体例>

伝達内容 事実の摘示or評価 成立する罪名
『甲は浮気症だ』 評価 侮辱罪
『甲は頭が悪い』 評価 侮辱罪
『甲は乙と不倫している』 事実の摘示 名誉棄損罪
『甲のIQは70だ』 事実の摘示 名誉棄損罪

不倫関係をいいふらしたケースの法的責任については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不倫を公表したことの法的責任(名誉毀損罪・侮辱罪など)

8 信用毀損罪の基本

表現行為が特定の者の信用の喪失につながることもあります。そうすると信用毀損罪が成立する可能性があります。
信用毀損罪の基本的事項をまとめます。

<信用毀損罪の基本>

あ 構成要件

(虚偽の風説を流布したor偽計を用いた)+人の財産的信用を毀損すること

い 法定刑

懲役3年以下or罰金50万円以下
※刑法233条

9 信用毀損罪の『信用・毀損』の解釈

『信用・毀損』の解釈についてまとめます。

<信用毀損罪の『信用・毀損』の解釈>

あ 『信用』

経済的信用の全般を意味する
※大判大正5年6月26日
※最判平成15年3月11日

い 『毀損』

信用が低下する危険が生じたことで足りる
→抽象的危険犯という性格である
※大判大正2年1月27日