【裁判員裁判は重大事件に一般市民が参加する】

裁判員制度とはどのようなものですか。
刑事裁判のうち,一定の類型については,裁判員裁判の対象とされます。
一般の市民が刑事裁判の判断過程に参加するものです。

1 裁判員制度は刑事裁判に一般の国民が参加する制度
2 裁判員制度の対象事件は一定の重大事件に限られている
3 裁判員の参加を適用しない例外もある
4 一般人の裁判員に分かりやすく伝える準備が結果に影響する
5 裁判員制度導入により分かりやすさが結果に影響しやすくなった

1 裁判員制度は刑事裁判に一般の国民が参加する制度

裁判員制度とは,一定の刑事裁判について,一般の市民が参加する制度です。
参加する一般市民を裁判員と言います。
裁判員6人と裁判官3人がメンバーとなって,裁判への出席・評議・判決宣告を行います。

2 裁判員制度の対象事件は一定の重大事件に限られている

裁判員裁判の対象は,一定の重大事件とされています。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律という法律の第2条で規定されています。
ちょっと分かりにくいので,典型例を示しておきます。

<裁判員裁判対象事件の例>

・殺人罪
・強盗致死傷罪
・傷害致死罪
・危険運転致死罪
・現住建造物等放火罪
・身代金目的誘拐罪
・保護責任者遺棄致死罪
・覚せい剤取締法違反(覚せい剤の密輸入など)

3 裁判員の参加を適用しない例外もある

裁判員裁判の対象事件でも例外的に裁判員を付けないこともあります。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の2条7項に例外の規定があります。

合議体(裁判員のことです)で取り扱うことが適当でないと認めた場合は裁判員を付けないことになっています。
適当でない例としては,被告人が暴力団幹部で,裁判員になった人に危害が加えられる恐れがある場合,などです。
実際には,例えば,暴力団より裁判員に報復すると声明が出ているなど,具体的な事情により判断されます。

4 一般人の裁判員に分かりやすく伝える準備が結果に影響する

裁判員裁判への対策について説明します。
法律に詳しくない裁判員にも分かるように,有利な事情をより分かりやすく説明する,ということを意識します。
これは,有利な結果獲得につながる重要な事です。

従来の方式ですと,調書という取調内容が書かれた書面が多用されていました。
また,図も,書面として提出されており,法廷で説明を加えることは少ない傾向にありました。
判断する人が裁判官だけだとそのようなやり方が効率的でした。
しかし,裁判員の裁判では,一般の方が判断することになります。
特に,被告人に有利な事情をより分かりやすく説明する技術が重要です。
具体的には,分かりやすい図面や映像を使いながら,法廷で丁寧に説明を加える,という方法が典型例です。

5 裁判員制度導入により分かりやすさが結果に影響しやすくなった

職業裁判官による判決と裁判員の判決では異なる傾向も出てきています。
有罪か無罪か,などの事実認定については,傾向がハッキリ見えません。

量刑については,違いがあるように見えます。
裁判員の裁判でも,過去の量刑は十分に検討されます。
その意味で相場から大幅にずれた,ある意味,極端に不公平な判決はないと思います。

一方で,個別的な事情が重視されて,良い意味で相場に固執しない,という傾向は現れています。
違う言い方をすれば,裁判員への分かりやすさが結果に響きやすい,ということが言えましょう。

条文

[裁判員の参加する刑事裁判に関する法律]
(対象事件及び合議体の構成)
第二条  地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条 の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二  裁判所法第二十六条第二項第二号 に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2  前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。
3  第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4  裁判所は、前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
5  第三項の決定は、第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。
6  地方裁判所は、第三項の決定があったときは、裁判所法第二十六条第二項 の規定にかかわらず、当該決定の時から第三項に規定する合議体が構成されるまでの間、一人の裁判官で事件を取り扱う。
7  裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を第三項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。

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