1 公図・地図|法律上は別の意味|土地境界特定のヒントになる
2 公図の不正確性・公表システム|古い+『長さ』記載なし
3 境界確定の判断基準(簡略版)
4 境界確定の総合的判断要素|非常に多くの情報・状況
5 鑑定費用の相場
6 境界確定訴訟の概要|公的・最終的な境界の判断
7 境界確定訴訟×土地の共有|共有者全員参加が必須
8 判決×再現不能→違法|訴訟が無意味になるケース

1 公図・地図|法律上は別の意味|土地境界特定のヒントになる

土地の境界を明確に特定する時に『公図・地図』をよく使います。
『公図・地図』の基本的な意味をまとめます。

<公図・地図|意味>

あ 『公図』

土地台帳の附属地図
=『地図』に『準ずる』図面
※不動産登記法14条4項
※不動産登記事務取扱手続準則29条

い 『地図』

ア 現在
不動産登記法14条の『地図』
→『法14条地図』と言う
イ 平成17年3月前
改正前の不動産登記法では『17条』であった
→『法17条地図』と呼んでいた

2 公図の不正確性・公表システム|古い+『長さ』記載なし

公図・地図ともに『長さ』が記載されていません。
さらに公図は通常古いので,より『不正確』であることが多いです。
このような事情で『境界が不明確→トラブルに発展』ということがよくあります。

<公図の不正確性・公表システム>

あ 公図の不正確性

『長さ』が記載されていない
+『公図』は測量時期が非常に古いことが多い
→正確性は低い傾向がある
※東京地裁昭和49年6月24日
※水戸地裁昭和39年3月30日

い 公図と現況のずれ|公表システム

国土交通省が『ずれ』の情報を公表している
=『都市部における公図と現況のずれ公表システム』
外部サイト|国土交通省|境界の調査成果公表システム

3 境界確定の判断基準(簡略版)

境界が不明確な場合の特定・判断の基準の理論的な内容は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|境界の判断基準に関する法的理論(判例の基準とドイツ民法)
これはちょっと抽象的で分かりにくいので,ここでは,簡略化してまとめます。

<境界確定の判断基準(簡略版)>

あ 客観的な境界線

客観的に存在している『境界線を示すもの』を発見するよう努力する

い 総合判断

次のようなさまざまな情報を総合的に考慮する
例;対象地域の占有状況・登記・公図の情報・人為的・自然的状況
→詳しい内容は後記

う 公募上の面積と実測面積のバランス

隣接地それぞれについて『比率』を算定する
→これを参考にする

え 公平・中立性

最終的には『公平・中立性』をベースにする

お 合理的な理由

判決については裁判所の判断として『合理的な理由』が必要である
→上訴において『合理性の検証可能性』が確保される
※大判昭和11年3月10日
※東京高裁昭和39年11月26日
※東京高裁昭和48年8月30日

実際には『客観的に境界を特定できない』から見解の対立=トラブルが生じます。
実務では『総合判断』がよく使われる『基準』と言えます。
判断要素は非常に多いです。
次にまとめます。

4 境界確定の総合的判断要素|非常に多くの情報・状況

境界確定の公的な判断では『総合判断』がよく使われます(前述)。
総合判断の内容=考慮事項をまとめます。

<境界確定の総合的判断要素>

あ 土地の占有状況

ア 不明確になる典型例
通路など『共用』の場合は曖昧になる
イ 立証・証拠
現地の実際の使用状況

い 登記面積との関係

ア 不明確になる典型例
『登記面積』自体が不正確であることも多い
イ 立証・証拠
登記事項証明書・実況測量図

う 公的な地図

ア 不明確になる典型例
主に公図である
→『再現の精度』が低いことが多い(前述)
イ 立証・証拠
・現在の公図・地図
・分筆時(前)の公図
・古図
・土地台帳付図

え 人為的痕跡との関係

ア 具体例=証拠
境界石・境界標
イ 不明確になる典型例
設置経緯が不明=正確性に乏しい,ということも多い

お 自然的状況との関係

地形 道路・自然道・尾根・崖・谷
林相 植林状況・樹齢・樹木の種類・植林時期

か 住民の記憶

例;当事者・近隣住民・長老的人物の証言

き 鑑定結果

鑑定人による鑑定書
鑑定費用を当事者が負担する必要がある(後記※1)

このようにとても広い範囲にわたります。
主張する事情・証拠の取捨選択をしっかりを行う必要があります。
逆に言えば『やり方によって結果に違いが出やすい』判断事項と言えます。

5 鑑定費用の相場

境界確定訴訟の中で鑑定を実施することは多いです。この場合の鑑定費用の金額の相場をまとめます。

<鑑定費用の相場(※1)>

あ 鑑定人の選任

鑑定人による鑑定を実施する場合
裁判所が鑑定人を選任する
一般的に,測量士や土地家屋調査士が選任される

い 鑑定費用の負担

鑑定を申し立てた当事者が鑑定費用を負担する
最終的に判決の中で負担すべき者と割合(金額)を定める

う 鑑定費用(金額)の相場

100坪以下の一般的な住宅地について
目安=30〜60万円程度
個別的事情により大きく異なることもある

え 現況測量の費用の相場(参考)

現況測量は鑑定よりも大幅に簡略化されている
鑑定よりも費用が低い
目安=10〜15万円程度

6 境界確定訴訟の概要|公的・最終的な境界の判断

『境界確定訴訟』は,裁判所で証拠を元に,境界の正しい位置を確定する手続です。
和解で終わることもありますし,判決で境界の位置を決めることもあります。
なお,和解の場合は,厳密には所有権の境の位置を確認するということになります。
厳密な意味での境界は,一般の方(私人)が決められるものではない,とされているからです。

7 境界確定訴訟×土地の共有|共有者全員参加が必須

境界確定訴訟に関わる土地が共有となっているケースもあります。
この場合,訴訟の性質とともに『原告・被告』が問題となります。

<境界確定訴訟×土地の共有>

隣接する土地の一方or双方が共有である
→境界確定の訴えは『固有必要的共同訴訟』である
=共有者全員が原告/被告になる必要がある
※最高裁昭和46年12月9日

8 判決×再現不能→違法|訴訟が無意味になるケース

レアケースですが,境界確定訴訟の判決が無意味になる,ということもあります。

<判決×再現不能→違法>

あ 再現不能の判決

判決内容の境界が『再現』できない
→『主文不明確』の違法となる

い 具体例

主文には『基点』を用いて境界が表示されている
『基点』が現地のいずれの地点にあるか特定できない
※最高裁昭和35年6月14日

判決は当然,訴訟における主張の時点で当事者の主張に影響されます。
弁護士がしっかりと主張をしていれば,このようなアクシデントは防げるはずです。