【買付証明書・売渡承諾書・仮契約書(記載事項・活用方法・法的意味)】

1 買付証明書|典型的記載事項・法的意味
2 買付証明書|作成の経緯・活用方法
3 売渡承諾書|典型的記載事項・法的意味
4 売渡承諾書|作成の背景・活用方法
5 買付証明書・売渡承諾書×契約の成立|概要
6 売買の基本的要素の合意不足
7 売買契約の完結未到達
8 『仮契約書』×契約の成立|概要
9 売買契約の成立時期と交渉破棄の責任(概要)

1 買付証明書|典型的記載事項・法的意味

不動産売買の交渉の過程で『買付証明書』が作成されることがあります。
記載される内容や法的意味についてまとめます。

<買付証明書|典型的記載事項・法的意味>

あ メイン事項

『対象物件を購入します』という意思表明

い 典型的記載事項

ア 物件の表示イ 契約締結予定日ウ 売買代金の予定額エ 代金支払条件オ 取引条件カ 有効期限

う 法的意味

一定期間は『優先的な交渉当事者である』ことを確認する
※『月報司法書士2014年9月号』日本司法書士会連合会p58〜

2 買付証明書|作成の経緯・活用方法

買付証明書が作成される経緯・活用方法についてまとめます。

<買付証明書|作成の背景・活用方法>

あ 売却交渉で活用

物件所有者(売主候補者)が,他の購入希望者に対して提示する
売買代金額などの条件交渉に使う
→有利な金額を引き出すための1つの材料となる

い 仲介業者が依頼者に説明

仲介業者が,依頼者=所有者に状況・進捗の報告をする
この時,買付証明書を示す

う 任意売却・抵当権抹消の打診

不動産の任意売却において,金融機関に抵当権抹消の打診をする
この時『買主候補者が存在する』ことを明確に伝える
※『月報司法書士2014年9月号』日本司法書士会連合会p58〜

3 売渡承諾書|典型的記載事項・法的意味

不動産売買の交渉段階で『売渡承諾書』が作成されることがあります。
売渡承諾書の記載事項・法的意味をまとめます。

<売渡承諾書|典型的記載事項・法的意味>

あ メイン事項

『対象物件を売却します』という意思表明

い 典型的記載事項

ア 物件の表示イ 契約締結予定日ウ 売買代金の予定額エ 取引条件オ 有効期限

う 法的意味

一定期間は『優先的な交渉当事者である』ことを確認する
※『月報司法書士2014年9月号』日本司法書士会連合会p58〜

4 売渡承諾書|作成の背景・活用方法

売渡承諾書が作成される経緯や活用方法についてまとめます。

<売渡承諾書|作成の背景・活用方法>

融資の交渉で活用する
買主候補者が,金融機関に融資の申込・交渉をする
この時『売渡承諾書』を提示する
→融資の審査において有利に働く
※『月報司法書士2014年9月号』日本司法書士会連合会p58〜

5 買付証明書・売渡承諾書×契約の成立|概要

買付証明書と売渡承諾書の交換で売買契約が成立するような発想もあります。
しかし,法的には『売買契約成立』と認められない傾向が強いです。
これについて概要をまとめます。

<買付証明書・売渡承諾書×契約の成立|概要>

あ 概要

買付証明書・売渡証明書の両方の受授が行われた
→通常は不動産の売買契約成立とは認められない

い 理由

ア 売買の基本的要素の合意不足(※1)イ 売買契約の完結未到達(※2) ※東京地裁昭和57年2月17日
※大阪高裁平成2年4月26日
※東京地裁平成2年12月26日
※東京地裁昭和63年2月29日

契約成立が認められない理由については次にまとめます。

6 売買の基本的要素の合意不足

『売買の基本的要素の合意』が不十分だと契約成立が否定されます(前述)。
これについてまとめます。

<売買の基本的要素の合意不足(上記※1)>

あ 基本的事項

『基本的要素すべてについての確定的合意』に至っていない

い 売買の基本的要素

ア 売買代金額イ 支払時期ウ 引渡,移転登記の時期 ※前記裁判例

7 売買契約の完結未到達

『完結』していないという理由で契約成立が否定されることがあります(前述)。
これについてまとめます。

<売買契約の完結未到達(上記※2)>

買付証明書・売渡承諾書の交付段階
→通常,後日正式な売買契約書を調印する予定となっている
→当事者の意思として,最終的・確定的な段階には至っていない
→売買契約を完結させた状態ではない
※前記裁判例

8 『仮契約書』×契約の成立|概要

売買契約において『仮契約書』が作成されることがあります。
法的な意味・解釈論の概要をまとめます。

<『仮契約書』×契約の成立|概要>

契約の成立の判断は『契約書のタイトル』で決まるわけではない
『仮契約書』というタイトル
契約として成立する可能性もある
現実には『確定していない内容・事項』が多い
→『契約は成立していない』と判断される傾向が強い
※東京高裁昭和57年2月17日

9 売買契約の成立時期と交渉破棄の責任(概要)

売買契約が成立する時期の判断が問題になることが多いです。
判断基準については別に説明しています。

<売買契約の成立時期と交渉破棄の責任(概要)>

あ 契約の成立時期

契約の成立の有無や成立時期が問題なることがある
→一定の基準(目安)がある
詳しくはこちら|売買契約の成立時期・成立の判断基準

い 交渉破棄の責任

売買契約が成立していない段階において
→原則的には責任は発生しない
特殊事情がある場合
→『交渉破棄の責任』が認められることもある
詳しくはこちら|契約締結に向けた交渉を破棄した責任(全体)

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