【借地の更新料の基本(更新料の意味と支払の実情)】

1 借地の更新料の意味
2 借地における更新料支払の実情
3 借地の更新料の趣旨(概要)
4 更新料の支払義務(概要)
5 借地の更新料の金額の相場(概要)
6 借地の更新料の供託
7 更新料と賃料増減額との関係

1 借地の更新料の意味

借地契約において更新料の支払に関するトラブルが発生することは多いです。
本記事では,借地の更新料の基本的事項を説明します。
更新料とは,文字どおり,更新の際に支払われる金銭です。

<借地の更新料の意味>

期間満了時において
借地契約の更新の対価として
借地人から地主に支払われる金銭である
※澤野順彦『判例にみる 借地・借家における特約の効力』新日本法規出版2008年p161

2 借地における更新料支払の実情

まずは,実情として,合意更新に伴って更新料が払われる実例がとても多いです。

<借地における更新料支払の実情>

あ 合意更新と更新料

賃貸人・賃借人において
賃貸借契約書を書き換える
賃借人が更新料を支払うことが多い
※最高裁昭和59年4月20日
※澤野順彦『論点 借地借家法』青林書院2013年p269
※澤野順彦『実務解説 借地借家法』青林書院2008年p346
※鵜野和夫『不動産の評価・権利調整と税務 第38版』清文社2016年p607

い 紛争解決時の更新料支払

借地に関する紛争の裁判所における和解・調停について
(実質的な)更新料の支払いを伴うケースも多い
※東京地裁昭和51年9月14日

なお,紛争解決時に更新料を実際に支払うのではなく,将来の更新料支払を約束(合意)する,という実例もあります。
詳しくはこちら|更新料支払合意(特約)の基本(種類・法的問題の分類)

3 借地の更新料の趣旨(概要)

更新料を払う合意(特約)がなければ更新料の支払義務はありません(後記)。
しかし,そのようなケースも含めて,更新料が実際に支払われることはよくあります。
この食い違いは一見不思議ですが,当然,更新料を支払う趣旨や目的(メリット)があるのです。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地の更新料の趣旨や目的

4 更新料の支払義務(概要)

理論的に更新料の支払義務があるかどうかということがトラブルに発展することが多いです。
更新料を支払う合意(特約)がなければ支払義務はありません。
これは単純です。
しかし,更新料支払の特約がある場合は解釈が複雑になります。
一律に無効とはいえませんが,有効となる前提や範囲が限定されるのです。

<更新料の支払義務(概要)>

あ 更新料の特約なし

更新料を支払う合意(特約)がない場合
→更新料の支払義務はない
ただし,任意に支払うことは適法(有効)である

い 更新料の特約の有効性

更新料を支払う特約がある場合
→合意更新においては特約は有効となる

う 更新料特約と法定更新

法定更新においては更新料支払義務が否定される傾向がある
ただし,特約の内容(文言)によっては肯定される可能性もある
詳しくはこちら|更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無

5 借地の更新料の金額の相場(概要)

以上の説明のように,更新料支払義務が発生することがあります。
また,支払義務はなくても更新料が支払われることもよくあります。
このように更新料を支払うことを前提として,次に,金額が問題となります。
地主と借地人において,更新料の金額の見解が対立することも多いのです。
金額については,実際の事例を元にした相場があります。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地の更新料の金額の相場

6 借地の更新料の供託

借地人は更新料を払うつもりだが金額について合意に至らないケースも多いです(前記)。
このような場合は,通常,借地人は供託を活用できます。

<借地の更新料の供託>

あ 前提事情

借地人が更新料を支払うことを希望している
地主は更新料の受領を希望している
金額について地主と借地人の希望が合致しない

い 供託

借地人は更新料の供託ができることがある
受領拒否による弁済供託である
※民法494条
詳しくはこちら|受領拒絶による供託|基本|弁済提供の必要性・賃料増減額との関係

7 更新料と賃料増減額との関係

更新料の問題は賃料(地代)の増減額と間接的に関係することがあります。
改定賃料の算定において,更新料の支払いの有無も考慮されるのです。
ただし,更新料の支払いの有無がストレートに賃料の増額や減額につながるわけではありません。

<更新料と賃料増減額との関係>

賃料増減額請求の判断において
更新料の支払いの有無も考慮される
→更新料の不払いが賃料増額につながることもある
※不動産鑑定評価基準p52(第2章第1節Ⅱ2(9))
詳しくはこちら|改定(継続)賃料に関する不動産鑑定評価基準の規定内容

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