1 更新料不払による解除(総論)
2 合意した更新料の不払による解除の有効性(まとめ)
3 更新料不払による解除の有効性判断基準
4 更新料不払による解除(事案)
5 更新料不払による解除(有効判断)
6 更新料不払による解除と法定更新(解除無効)

1 更新料不払による解除(総論)

借地契約において,更新料を支払う合意(特約)がなされるケースがあります。
この合意(特約)の有効性についてはいくつかの見解があります。
詳しくはこちら|更新料の特約の有効性(一般的な更新料支払義務の有無)
個別的事情によって有効となるケースも多いです。
本記事では,有効な更新料支払合意があることを前提にします。
そして,借地人が更新料を支払わなかった場合に解除が認められるかどうかという問題を説明します。

2 合意した更新料の不払による解除の有効性(まとめ)

更新料の支払を合意したのに支払わないことを理由とする解除を前提にします。
個別的な事情によって解除の有効性が判断されます。
最初に,有効性判断の全体的なまとめを示します。

<合意した更新料の不払による解除の有効性(まとめ)>

あ 前提事情

地主・借地人が更新料を支払う合意をした
期間満了時において借地人が更新料を支払わない
地主が契約解除の通知をした

い 解除の有効性の方向性

個別的な事情によって有効性を判断する
信頼関係の破壊と評価できる場合は有効となる(後記※1)

う 典型的な判断要素

『え』の事情がある場合
→解除が有効となる方向性である(後記※2,※3)
『え』の事情がない場合
→解除は無効となる方向性である(後記※4)

え 解除が有効となる方向の事情の例

ア 過去に借地人側に解除原因があった
例;債務不履行
イ 慎重な判断・プロセスにより更新料の合意をした
例;裁判所の調停条項として合意した
※最高裁昭和59年4月20日

3 更新料不払による解除の有効性判断基準

更新料の不払を理由とする解除の有効性について,最高裁が示す判断基準をまとめます。
細かい事情の評価によって決まるというものです。
個別的な事案での再現可能性(予測の精度)が低いといえます。

<更新料不払による解除の有効性判断基準(※1)>

あ 更新料支払合意

更新料の支払を合意した
借地人が更新料を支払わない
地主が借地人に対して契約解除の通知をした

い 判断基準(基本)

更新料の性格を元にして
具体的事実関係(う)を総合考量する
→賃貸借契約の解除原因となるかどうかを判断する

う 考慮する事情

更新料の支払がなくても法定更新がされたかどうかという事情
賃貸借成立後の当事者双方の事情
更新料の支払の合意が成立するに至った経緯
その他諸般の事情
※最高裁昭和59年4月20日

4 更新料不払による解除(事案)

前記の判断基準を示した最高裁の判例では,対象となった事案について有効性を判断しています。
事案の内容をまとめます。
過去に借地人に重大な違反行為があり,さらに裁判所の調停で更新料の支払いを合意したという特殊性がありました。

<更新料不払による解除(事案;※2)>

あ 更新料込みの解決金の合意

借地人が賃貸借契約違反行為を行った
内容=無断増築・無断転貸
解決金を含めた更新料100万円を支払う旨の調停が成立した
趣旨=違反行為を不問に付すため

い 更新料の不払いと解除

借地人は『あ』の更新料を支払わなかった
地主は解除の通知をした
※最高裁昭和59年4月20日

5 更新料不払による解除(有効判断)

前記事案について,最高裁は解除を有効と認めました。

<更新料不払による解除(有効判断;※3)>

あ 更新料の性格の判断

更新料には『ア〜ウ』の性格があった
ア 土地利用の対価(将来の賃料)という性格
イ 異議権の放棄の対価という性格
ウ 紛争予防の解決金の趣旨

い 解除の有効性の判断

更新料の支払は,賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしている
更新料の不払いは,この基盤を失わせる著しい背信行為である
賃貸借契約の解除原因となる
※最高裁昭和59年4月20日

う 補足説明

単純・純粋な『更新料』ではない
特殊性による影響が大きい

前記のように特殊性が反映されて,解除を認める結論に至っています。
しかし広く『更新料を支払わないと解除が認められるかもしれない』という萎縮的な効果として実務に大きな影響を与えています。

6 更新料不払による解除と法定更新(解除無効)

前記の最高裁の判断とは結論が大きく異なる高裁判例もあります。
要するに,更新料の合意どおりに支払わなくても,更新料合意とは別の『法定更新』はできるというものです。
法定更新には更新料合意は適用されないので,結論として更新料支払義務はない,という結論です。

<更新料不払による解除と法定更新(解除無効;※4)>

あ 更新料支払合意

土地の賃貸借契約満了の約1年前において
地主・借地人が更新料支払の合意をした

い 合意した更新料の性質

合意した更新料の性質について
賃貸借契約の期間満了時に地主が有する異議権の行使を放棄する対価である

う 更新料遅滞と更新料契約の解除

更新料支払の遅滞があった場合
→地主は『更新料の支払契約』を解除できる
→『異議権行使の放棄』が解消される
=地主は異議権を行使できる状態に戻る

え 法定更新への影響

賃貸借契約は法定更新されている
→更新料支払義務はない
→借地人に債務不履行は生じていない
→地主は解除できない
※東京高裁昭和45年12月18日

なお,更新料の特約として『法定更新も含めて更新料を支払う』内容を設定するケースもあります。
このような特約については有効・無効の両方の見解があります。
詳しくはこちら|更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無