【土地売買後の河川付近の建築制限・水没予定の発覚によるトラブル】

1 河川付近の建築制限・水没と売買に関する責任(総論)
2 水没予定の土地売買と不法行為(肯定裁判例)
3 河川拡幅による建築制限と売主の説明義務(肯定裁判例)
4 河川拡幅による建築制限と仲介の説明義務(肯定裁判例)

1 河川付近の建築制限・水没と売買に関する責任(総論)

河川付近の土地には建築制限があることもあります。
また,河川拡幅などにより水没が予定される土地もあります。
当然,売買の後からこのような事情が発覚すると,買主は想定外の損失を受けます。
本記事では,実際にこのような事情が生じたケースに関する裁判例をいくつか紹介します。

2 水没予定の土地売買と不法行為(肯定裁判例)

水没予定の土地を売却したケースです。
当然,これを知っていれば買う人はいないでしょう。
いわば騙したといえる状況です。
裁判所は不法行為の成立を認めました。

<水没予定の土地売買と不法行為(肯定裁判例)>

あ 事案

売買契約の後から『い』の事情が発覚した
売主・媒介業者はこれを知っていた

い 後から発覚した事情

ア 河川区域である 埋立には河川法の許可が必要である
イ 水資源開発工事が実施予定 水資源開発工事が実施予定であった
→工事完了時には水没する

う 裁判所の判断

売主・媒介業者について
→『い』の事実を告げなかったor虚偽の事実を告げた
→不法行為である
→手付金返還請求を認めた
※東京地裁昭和61年10月15日

3 河川拡幅による建築制限と売主の説明義務(肯定裁判例)

河川拡幅の対象となっており,建築が制限される土地の売買のケースです。
この制限を知らせずに売却されたのです。
そこで,売主の説明義務違反が認められました。

<河川拡幅による建築制限と売主の説明義務(肯定裁判例)>

あ 事案(※1)

土地甲は河川に接していた
河川は拡幅する計画があった
所有者は『建築物の建築は認めない』という行政指導を受けた
所有者は土地甲を売却した
買主は建築制限を理解していなかった

い 過失相殺

買主に対する情報の提供が不十分であった
買主にも一定の落ち度がある
→買主には5割の過失(相殺)を認める

う 賠償額

違約金の5割(手付金相当額)の損害賠償を認めた
※東京高裁平成2年1月25日

4 河川拡幅による建築制限と仲介の説明義務(肯定裁判例)

前記事案については,別の裁判で仲介業者の説明義務違反も認められました。

<河川拡幅による建築制限と仲介の説明義務(肯定裁判例)>

あ 事案

前記※1と同様の事案である

い 裁判所の判断

仲介業者は,(売主より)注意すべき要請が強い
買主の過失割合は2割とする
→違約金の8割の損害賠償を認めた
※東京地裁平成3年2月28日

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