【土地売買後の地下埋設物発覚によるトラブル(基本と裁判例の集約)】

1 売買後の地下埋設物の発覚と法的責任(概要)
2 産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度
3 コンクリート基礎の埋設と瑕疵担保責任(否定裁判例)
4 PC杭の埋設と瑕疵担保責任(肯定裁判例)
5 がら埋設と瑕疵担保・説明義務違反(肯定裁判例)
6 ガソリンスタンド埋設物と瑕疵担保責任(肯定裁判例)

1 売買後の地下埋設物の発覚と法的責任(概要)

土地の売買の後に,地下の埋設物が発覚することがあります。
当然,買主は想定外の損失を生じます。
売主や仲介業者などの売買の関係者に責任が認められることもあります。
本記事では,地下の埋設物に関する売買の関係者の責任を説明します。
まずは法的責任の全体的な内容をまとめます。

<売買後の地下埋設物の発覚と法的責任(概要)>

あ 典型的トラブル

売買契約の後において
地下に廃棄物・ガラなどが発覚するケースが多い

い 実害

このような埋設物を撤去することについて
→多額のコストを要する傾向がある
ただし,有害物質というわけではない
詳しくはこちら|土壌汚染に関する公的規制(汚染除去指示・第1〜3種特定有害物質)

う 法的責任(概要)

ア 基本的事項 『イ・ウ』の法的責任が発生することがある
イ 瑕疵担保責任 売買契約解除や売主の損害賠償責任
ウ 調査・説明義務違反 事前のマニフェスト(後記※1)の確認で分かったケースもある
売主や仲介業者の調査・説明義務違反
→損害賠償責任
詳しくはこちら|売買契約に関する責任の種類(瑕疵担保・債務不履行・不法行為)

2 産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度

土地の売買では,不適切な地下埋設物があるかどうかの調査において,マニフェストを用いることができます。
マニフェストには,産業廃棄物の処理をした時に,その処理の内容を記録(記載)したもののことです。具体的には,廃棄物の種類や量が記載されます。そこで,マニフェストを入手すれば,過去(搬出前)に,その土地にどのような埋設物があったのかということが分かることがあります。そして,現時点で発覚した埋設物と同様の廃棄物がマニフェストに載っていれば,撤去しきれていなかったということになります。
マニフェストの確認は,本来は売買の前にしておくことが望ましいです。一方,売買の後に埋設物が発覚して,その責任追及の中でマニフェストを確認するケースもあります。

<産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度(※1)

あ 『マニフェスト』の正式名称

『産業廃棄物管理票』
※廃棄物処理法12条の3

い マニフェスト制度の仕組み

排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する場合
→『マニフェスト』の受け渡しをする

う マニフェストの記載事項

産業廃棄物の種類・数量・運搬業者名・処分業者名など

3 コンクリート基礎の埋設と瑕疵担保責任(否定裁判例)

実際に,売買の後に不適切な地下埋設物が発覚して責任追及がなされるケースは多いです。
以下,実際のケースにおける裁判所の判断を紹介します。
まずは,コンクリート基礎が埋設されていたケースです。
程度が小さかったので瑕疵は否定されました。

<コンクリート基礎の埋設と瑕疵担保責任(否定裁判例)>

あ 事案

土地+建物の売買契約
地中にコンクリート製のブロックフェンス基礎部分の存在が発覚した

い 瑕疵の判断

埋設物があるのは建物と境界の間であった
→わずかな幅に過ぎない
→住宅用地として,利用が大きく妨げられない
→『瑕疵』にあたらない

う 結論

瑕疵担保責任を認めない
※東京地裁平成22年4月8日

4 PC杭の埋設と瑕疵担保責任(肯定裁判例)

地下に『杭』が多数埋設されていたケースです。

<PC杭の埋設と瑕疵担保責任(肯定裁判例)>

あ 事案

マンション建設用地の売買
売買代金=約7億4500万円
多数のPC杭・2重コンクリートの耐圧盤等の地中障害物が発覚した

い 瑕疵の判断

マンション建設用地として通常有すべき品質に達していない
→『瑕疵』にあたる
→瑕疵担保責任が認められる

う 賠償額

撤去費用全額(相当額)が認められた
=約3000万円
※東京地裁平成10年11月26日

5 がら埋設と瑕疵担保・説明義務違反(肯定裁判例)

コンクリートがらが地下に埋設されていたケースです。

<がら埋設と瑕疵担保・説明義務違反(肯定裁判例)>

あ 事案

住宅用地としての土地売買
コンクリートがらなどの地中埋設物が発覚した

い 瑕疵の判断

地盤調査,地中埋設物の除去+地盤改良工事を行う必要がある
住宅を建築する土地として『通常有すべき性状』を備えていない
→瑕疵にあたる

う 免責特約の有効性

地中に埋設物が残置されている可能性を認識できた
→重過失あり
→免責特約は無効である
※民法570条類推適用

え 責任の有無

瑕疵担保責任・説明義務違反(債務不履行)
→肯定された

お 賠償額

約990万円
※東京地裁平成15年5月16日

6 ガソリンスタンド埋設物と瑕疵担保責任(肯定裁判例)

過去にガソリンスタンドとして利用されたいた土地の売買のケースです。
ガソリンスタンドは大きな地下埋設物を用います。
基礎が埋設されていたままだったことは『瑕疵』にあたると判断されました。

<ガソリンスタンド埋設物と瑕疵担保責任(肯定裁判例)>

あ 事案

住宅用地としての売買
過去,ガソリンスタンドとして利用されていた
地中にガソリンスタンドの埋設基礎などの存在が発覚した

い 免責特約の有効性

免責特約は無効である

う 責任の有無

瑕疵担保責任
→肯定された

え 賠償額

撤去費用相当額が認められた
=約360万円
※札幌地裁平成17年4月22日

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