【土地売買と場所的・環境的要因(浸水リスク)に関する瑕疵】

1 土地の場所的・環境的要因と瑕疵(総論)
2 土地の場所的・環境的要因と瑕疵(否定判断)
3 土地売買×浸水|事案
4 土地売買×浸水|裁判所の判断

1 土地の場所的・環境的要因と瑕疵(総論)

不動産は場所や環境によって活用できる程度が大きく異なります。
当然,評価額(売買代金の相場)も異なってきます。
売買の後に,想定外の事情が発覚して問題になるケースもよくあります。
場所的・環境的要因の主なものはそのエリアが浸水しやすいというものです。
建物の売買については,場所的・環境的要因が瑕疵として認められやすいです。
詳しくはこちら|建物・マンション売買における水害・浸水リスクの責任
ところが土地の売買については,場所的・環境的要因が瑕疵として認められない傾向があります。
本記事では,土地の売買における瑕疵の判断について説明します。

2 土地の場所的・環境的要因と瑕疵(否定判断)

土地の浸水リスクを前提として,瑕疵に該当しない判断を示した裁判例を紹介します。

<土地の場所的・環境的要因と瑕疵(否定判断)>

あ 土地以外に起因する性質

対象土地以外の要因による影響が大きい
ア 周囲の土地の宅地化の程度イ 土地の排水事業の進展具合

い 時間経過により変化する性質

時の経過による変化も大きい
例;排水の整備・周囲の環境変化

う 価値として評価済み

浸水リスクは,付近一帯の土地全体に共通する
→通常,付近一帯の土地の価格評価に織り込まれる
→冠水被害が生じることは既に考慮・反映済みである

え 結論

場所的・環境的要因について
例;浸水リスク
→独立して『瑕疵』とは認めない
※東京高裁平成15年9月25日

このように『瑕疵』認定のハードルは結構高いです。
一方『調査・説明義務』についてはこれよりはハードルが低いです。
次に説明します。

3 土地売買×浸水|事案

土地の売買に関して,浸水リスクの責任が判断された裁判例があります。
まず,事案から紹介します。

<土地売買×浸水|事案>

あ 事案・概要

港区の土地・建物
AがBに売却した
Bは購入後,建物を取り壊した
建物を新築した
翌年,集中豪雨が生じた
建物の一部が浸水した

い 『物件状況等報告書』の記載

『浸水等の被害』欄には『知らない』と記載されていた
※東京地裁平成19年1月25日

4 土地売買×浸水|裁判所の判断

前記の事例について,裁判所の判断をまとめます。

<土地売買×浸水|裁判所の判断>

あ 裁判所の評価

建物は取り壊されているので『土地』を中心に判断する
『建物』の構造により被害を受けるかどうかが決まる
『土地』の性状によって決まるものではない

い 裁判所の判断|瑕疵

『土地』の性状としての不足はない
→『瑕疵』には該当しない

う 裁判所の判断|説明義務

仲介業者は過去の浸水被害を実際に知らなかった
→信義則上の説明義務もない
※東京地裁平成19年1月25日

責任が否定されたポイントは『建物』は解体されていたことです。
つまり,実質的に『土地自体の欠陥かどうか』が考慮対象だったのです。

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