1 法定借家権(総論)
2 法定借家権の発生の請求
3 法定借家の賃料の決定方法
4 裁判所による法定借家の賃料算定の基準
5 裁判所による法定借家の賃料算定の考慮事情
6 法定借家の期間と定期借家とする合意や設定(概要)

1 法定借家権(総論)

建物譲渡特約付借地では法定更新が適用されません。
期間満了時に確実に借地契約が終了します。
その代わり,建物が地主に譲渡されることになります。
地主の負担はこれだけではありません。
借地人などの請求により建物の賃貸借の状況が生じるのです。
本記事では,この法定借家権の制度について説明します。

2 法定借家権の発生の請求

法定借家権は借地人か建物賃借人の請求により発生します。
一方的な意思表示だけで生じるのです。

<定期借家権の発生の請求>

あ 前提事情

建物譲渡特約付借地において
特約に基づき建物が地主に譲渡された

い 法定借家権の発生

借地人側が法定借家権の発生を請求した場合
→法定借家権が発生する
※借地借家法24条2項

う 現実的な状況変化

従前の土地賃借人が建物賃借人という立場に変わる
土地賃貸人は建物賃貸人という立場に変わる

3 法定借家の賃料の決定方法

借地人などの意思表示だけで法定借家権が発生します(前記)。
建物の賃貸借の関係が生じるのです。
この賃貸借の賃料が定まる方法はいくつかあります。
最終的には裁判所が判断する手続も用意されています。

<法定借家の賃料の決定方法>

あ 原則

法定借家権が発生した場合
→賃料は次のいずれかによって定まる
ア 法定借家権発生前から合意されていた
例;定期借地権設定の契約書の条項
イ 当事者が協議によって合意した

い 裁判所による決定

『あ』によって賃料が定められない場合
→裁判所が賃料を定める
※借地借家法24条2項

4 裁判所による法定借家の賃料算定の基準

当事者で賃料の合意ができない場合は最終的に裁判所が賃料を算定します。
裁判所は,不動産評価鑑定基準に準じて算定することになると思われます。
法定借家以前の経緯という個別的な事情も考慮して賃料の算定に反映されるべきです。

<裁判所による法定借家の賃料算定の基準>

あ 借地人が建物賃借人となるケース

従前の借地人が建物賃借人となる場合
→『新規賃料』が目安となる
=新規賃貸借する場合の経済的に合理的な賃料である

い 従前の建物賃借の継続となるケース

従前の建物賃借人が引き続き建物賃借人となる場合
→『継続賃料』が目安となる
=賃貸借が継続していることを前提にした相当な賃料である

5 裁判所による法定借家の賃料算定の考慮事情

裁判所が法定借家の賃料を算定する際に考慮される事情を整理します。

<裁判所による法定借家の賃料算定の考慮事情>

ア 建物譲渡の代金額
『相当の対価』の金額
詳しくはこちら|建物譲渡特約付借地の建物譲渡代金の算定(相当の対価)
イ 権利金授受の有無,金額
ウ 存続期間
エ 従前の支払賃料
オ 敷金の有無,金額
※澤野順彦『論点 借地借家法』青林書院p159

6 法定借家の期間と定期借家とする合意や設定(概要)

法定借家の内容として,期間も重要です。
期間がどのようになるかは,状況によって違います。
また法定借家の内容を定期借家とする方法もあります。
借地の開始の段階から計画的に設計して契約書上で設定しておくことが望ましいです。
詳しくはこちら|建物譲渡特約付借地の法定借家の期間と定期借家とする合意や事前設定