1 スライド法の考え方と算定式
2 純賃料を用いる理由
3 基準時点の3種類の見解
4 直近改定時を基準とする理由と欠点
5 スライド法で用いる指数(概要)
7 鑑定評価基準の引用

1 スライド法の考え方と算定式

継続賃料の算定は複数の算定手法を組み合わせた総合方式を用いられています。
詳しくはこちら|改定賃料算定の総合方式(一般的な比重配分の傾向や目安)
本記事では,算定手法の1つであるスライド法について説明します。
スライド法の基本は,従前の賃料が物価と連動するというものです。

<スライド法の考え方と算定式>

あ 基本的考え方

直近合意時の利回りを固定する
この利回りを物価変動率でスライド(比例)させる

い 改定賃料の算定式

改定賃料
=直近合意時の純賃料×物価変動率+現在の必要諸経費など

う 純賃料

純賃料
=実際支払賃料−必要諸経費など

え 必要諸経費

必要諸経費について
→主に固定資産税・都市計画税である
※不動産鑑定評価基準p35(第7章第2節Ⅲ3)(後記※2)
※名古屋高裁昭和51年12月14日

2 純賃料を用いる理由

スライド法の試算では,賃料そのものの金額ではなく,公租公課を控除した純賃料が使われます。
公租公課は物価などの社会全体の経済と連動しないという特性に応じたものです。

<純賃料を用いる理由>

あ 一般的な指数と基礎の賃料

一般的な指数は消費者物価指数である
→消費される物・サービスの価格変動を示す
→当然に支払賃料そのものが対象となる

い 公租公課の考慮

継続地代の評価では公租公課の独立性が強い
→一般的には支払地代から公租公課を控除する
純賃料のことである

う 具体的算定方法

控除後の金額をスライドする
→その後公租公課を加算する
※江間博『新版 不動産鑑定評価の実践理論』株式会社プログレスp96

3 基準時点の3種類の見解

スライド法の試算で基準として用いる,従前は『いつの時点のもの』を使うかについては3つの見解があります。
一般的には直近の合意時点ですが,絶対的なものではありません。

<基準時点の3種類の見解>

あ 基準時点の賃料の前提

従前の基準時点の賃料は次のことが前提である
前提=理想的な状況下で決定された

い 基準時点についての見解の種類

『従前地代』の基準時点について
→『ア〜ウ』の見解がある
ア 直近改定時
最近時に合意改定した賃料である(う)
イ 過去の複数の賃料額
過去の複数の初期・改定賃料を用いる
→偶然性を排し,より妥当性を増す
ウ 契約開始時
借地契約当初の賃料である(え)
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p760

う 一般的な見解

裁判例は『直近改定時』が多数であった
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p760
現在の不動産鑑定評価基準は『直近改定(合意)時』を採用している(後記※1)
※鈴木忠一ほか『実務民事訴訟講座4 不動産訴訟・手形金訴訟』日本評論社1969年p157,158

え 契約開始時の理由

契約当初に当事者が新たに契約を締結するに至った
不自然な要素が介入する可能性が少ない
→契約開始時の賃料は適正なものである

4 直近改定時を基準とする理由と欠点

スライド法の基準となる賃料として直近改定時のものを用いる理由があります。
一方で,不合理性・欠点もあります。

<直近改定時を基準とする理由と欠点(※1)>

あ 直近改定時の理由

年月の経過の中で不公正や不都合が濾過される
最近時の当事者が合意で改訂した賃料額について
→適正かつ公平な主観的事情が反映されている

い 直近改定時の欠点

賃料の改定時が明らかでない場合
→この方式を適用できない
※東京高裁昭和51年5月27日

5 スライド法で用いる指数(概要)

スライド法では『変動率』として指数を用います。
物価の変動に関する指数が用いられることが一般的です。
しかし,指数の