1 利回り率レベルでの修正(基本)
2 利回り率レベルで修正した裁判例
3 バブル期の利回り率を修正した事例(概要)
4 利回り率レベルでの修正の数式化
5 利回り率レベルの修正の不合理性

1 利回り率レベルでの修正(基本)

利回り法は継続賃料算定手法の1つです。
利回り法による試算では,一定の修正を行うことがあります。
修正する方法はいくつかあります。
詳しくはこちら|利回り法の試算の修正方法の種類全体
本記事では『利回り率』レベルでの修正について説明します。
まずは基本的事項をまとめます。

<利回り率レベルでの修正(基本)>

あ 修正する要素

利回り率の決定において『ア〜ウ』の事情を参酌して修正を施す
ア 借地契約締結時の特殊事情
イ 従来の改定事情
ウ その他の諸事情
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p757
※東京高裁昭和49年10月29日参照
詳しくはこちら|利回り法における期待利回りの位置付け(適正利潤率の不合理性)

い 裁判例の傾向

1〜2%が中心といえる(後記※1)

う 鑑定実務の傾向

『近時の継続賃料の算定にあたっては不動産換算の利潤率を1〜2パーセントとするのが鑑定実務の近時の慣行であることが認められる』
※東京地裁昭和50年7月29日

え 修正率の算式化

修正率を算出する式を用いる方法もある(後記※2)

2 利回り率レベルで修正した裁判例

利回り法の試算において利回り率を修正した実例をまとめます。
修正後の利回り率としては1〜2%の範囲のものが多いです。

<利回り率レベルで修正した裁判例(※1)>

あ 1.2〜1.6%

1.2%
1.3%
1.4%
1.5%
1.6%
※東京高裁昭和49年10月29日

い 1.5%

※東京地裁昭和41年2月12日
※東京地裁昭和50年7月29日

う 1.6%

※横浜地裁小田原支部昭和45年6月10日

え 2.5%

※新潟地裁昭和46年8月18日

お 3.5%

※東京地裁昭和45年8月5日

3 バブル期の利回り率を修正した事例(概要)

特殊な事情を利回り率に反映した,つまり利回り率を修正した裁判例を紹介します。
特殊な事情があったので一般化はできませんが,参考になる事例です。

<バブル期の利回り率を修正した事例(概要)>

あ バブル期と継続賃料利回りの関係

利回り法の継続賃料利回りについて
賃料の利回りは地価の動向と同一の方向であるとは限らない
賃料についての合意時点がバブル期である場合
→基礎価格が高い
→継続賃料利回りが低く求められる
→必ずしも適正な利回りであるとはいえない

い 継続賃料利回りの補正

利回り法の継続賃料利回りについて
→次のように補正した
6.8%→9%
※甲府地裁平成16年4月27日;借家について
詳しくはこちら|改定賃料算定の総合方式(一般的な比重配分の傾向や目安)

4 利回り率レベルでの修正の数式化

利回り率を修正する方法・内容を類型化したものもあります。
主観による判断のブレを排除しようとする試みです。

<利回り率レベルでの修正の数式化(※2)>

あ 基本的事項

従前賃料改定時点から価格時点間の基礎価格の騰落が著しい場合
→『イ』の数式により継続賃料利回りを修正する

い 修正賃料利回りの算定式

修正賃料利回り
=実績賃料利回り×修正値(ウ)

う 修正値

修正値
=『類似不動産の賃料変動率』/『対象不動産の基礎価格変動率』

え 修正賃料利回りの妥当性の確認

修正賃料利回りと類似不動産の賃料利回りを比較・検証する
→継続賃料利回りを判断する
※田原拓治『賃料(家賃)評価の実際』清文社p405

5 利回り率レベルの修正の不合理性

以上は利回り率の修正のバリエーションの説明でした。
この点,利回り率を修正すること自体の合理性がないという指摘もあります。

<利回り率レベルの修正の不合理性>

あ 基本的事項

継続賃料利回りを修正することについて
→理論的根拠は不明である

い 借地/底地権割合との関係

継続賃料利回りを修正した場合
→借地権割合・底地権割合を人為的に変更・創設することになる
→当該地域の当該種類の不動産取引を混乱させることになる
例;借地権や底地権の売買
※鈴木禄弥『現代法律学全集14 借地法 下 改訂版』青林書院社新社1980年p893

賃料の鑑定全体について,理論的な合理性で貫徹されていません。
逆に言えば,当事者の主張・立証によって鑑定や裁判所の判断が変わりやすいということになります。