1 差額配分法の配分率の基本と理論
2 配分率に関する理論の欠如
3 代表的な配分率
4 マイナーな配分率
5 賃料不変更合意と差額配分法の適用事例
6 土地価格の高騰による配分率の決定
7 信頼関係破壊による配分率の決定

1 差額配分法の配分率の基本と理論

差額配分法の賃料試算では配分率が用いられます。
詳しくはこちら|差額配分法の基本(考え方と算定式)
本記事では配分率について説明します。
まずは,配分率の考え方や代表的な割合についてまとめます。

<差額配分法の配分率の基本と理論>

あ 基本的事項

適切な配分率の決定は困難である
他の方式を併用することが前提となる
理論的な合理性を欠いている(後記※1)
詳しくはこちら|差額配分法の不合理性と修正する方法

い 配分率の具体的内容

3分の1,2分の1,3分の2と割り切った率を採用する
『2分の1が説得力の点でまさる』
※江間博『新版 不動産鑑定評価の実践理論』株式会社プログレスp91

う マイナス差額の扱い(概要)

賃料差額がマイナスである場合
→扱いについては複数の見解がある
※賃料評価実務研究会『賃料評価の理論と実務〜継続賃料評価の再構築〜』住宅新報社p76
詳しくはこちら|差額配分法におけるマイナス差額の配分の肯定/否定説と配分率

2 配分率に関する理論の欠如

配分率には論理必然的な割合というものが存在するわけではありません。

<配分率に関する理論の欠如(※1)>

平成3年の座談会『継続家賃の鑑定評価』において
珍田龍哉不動産鑑定士
『昔のことを申しまして恐縮ですが,昔は積算法一本で出していまして,それが改定賃料になるべきであるということを言いますと,地価がうんとあがったのにそれだけを上げるのは無理だからせいぜい7掛けにしておけよということで鑑定評価書を書くという時代があったような気がします。2分の1法というのは差額が50%とすると75%法なんですね。3分の1法というのは,それでも手に負えない場合ということになってきているようです。』
※賃料評価実務研究会『賃料評価の理論と実務〜継続賃料評価の再構築〜』住宅新報社p73

3 代表的な配分率

実際に用いられる配分率のうち代表的なものは2分の1と3分の1です。

<代表的な配分率>

あ 基本的事項

一般的な配分率(配分方法)は『い・う』である

い 折半法

次の比率により差額を配分する
貸主・借主
=1:1

う 3分の1法

次の比率により差額を配分する
貸主・借主・経済社会の一般的な成長
=1:1:1

4 マイナーな配分率

配分率には明確な理論はありません(前記)。逆に言えば,主観的・曖昧な判断で大きなブレが生じます。
実際にマイナーな配分率もあります。

<マイナーな配分率>

あ 借地権/底地権割合を用いる見解

配分の根拠を経済的側面に求める
両当事者間の公平に求めるのではない
→借地権/底地権の割合を用いる

い 近隣借地の配分率を流用する見解

周辺地域における同種の賃貸借の賃料改定事例について
多数を収集し配分率を分析(算定)する
→これを流用する
現実的には情報の把握が困難である
※賃料評価実務研究会『賃料評価の理論と実務〜継続賃料評価の再構築〜』住宅新報社p77

5 賃料不変更合意と差額配分法の適用事例

個別的な特殊事情があったため,複数の配分率を使って複数の試算賃料を算出した事例もあります。

<賃料不変更合意と差額配分法の適用事例>

あ 鑑定の種類

地方裁判所からの継続賃料の鑑定評価

い 賃貸借契約の特約

平成7年の大震災に際して
賃料を変更しない合意(特約)がなされていた

う 差額配分法の試算の内容

次の両方の試算を用いた
その後に他の試算も含めて調整を行った
ア 3分の1法
賃料を変更しない合意を理由に3分の1法を用いた
賃料差額を貸主と借主で1:2に配分した
=貸主が負担する賃料減額分を賃料差額の3分の1とした
イ 2分の1法
貸主と借主とを平等に取り扱う
=1:2で配分する
※賃料評価実務研究会『賃料評価の理論と実務〜継続賃料評価の再構築〜』住宅新報社p83

え 補足説明

賃料を変更しない合意は特殊な事情である
『ア・イ』はこの特殊事情による判断といえる
=いずれも原則的なケースで通常の扱いとはいえない
ア 差額配分法を試算の1つとして採用した
イ 配分率は2分の1だけでなく3分の1も用いた

6 土地価格の高騰による配分率の決定

差額配分法は緩やかな土地価格の上昇が想定されています。
土地価格が高騰することは想定された前提から逸脱します。
この特殊事情に,低めの配分率を用いることで対応した裁判例があります。

<土地価格の高騰による配分率の決定>

あ 事案

賃貸借期間中において
土地価格が高騰していた

い 配分率

差額配分法の配分率について
→3分の1とした
※東京地裁平成3年10月21日

7 信頼関係破壊による配分率の決定

信頼関係破壊という特殊事情を配分率に反映させて8割とした裁判例があります。

<信頼関係破壊による配分率の決定>

あ 事案

現行賃料が決定されたときから約13年が経過している
当事者間にあった特別の信頼関係が消滅していた

い 配分率

差額配分法の配分率について
→8割とした
(差額の8割を現行賃料に加算した)
※東京地裁平成6年2月7日/『判例時報1522号』