1 事案内容
2 継続賃料利回りの補正(判断)
3 各試算賃料の採用/不採用と比率(判断)

1 事案内容

本記事では,継続賃料の算定における特殊な処理がなされた事例を紹介します。
まずは事案の内容を整理します。

<事案内容>

あ 賃貸借契約の内容

契約締結=昭和62年
期間=20年間
大規模な建物の賃貸借契約
対象エリア=1万5537.33平方メートル
目的=ショッピングセンターとして使用する

い 賃料改定

平成4年6月に合意により賃料が改定された

う 賃料減額請求

平成11年8月,賃借人は賃料減額請求をした
=価格時点
※甲府地裁平成16年4月27日;借家について

2 継続賃料利回りの補正(判断)

前記事例についての相当賃料の算定では,特殊な処理が2つ行われました。
まず1つ目は利回り法の試算において,継続賃料利回りが修正されました。

<継続賃料利回りの補正(判断)>

あ バブル期と継続賃料利回りの関係

利回り法の継続賃料利回りについて
賃料の利回りは地価の動向と同一の方向であるとは限らない
賃料についての合意時点がバブル期である場合
→基礎価格が高い
→継続賃料利回りが低く求められる
→必ずしも適正な利回りであるとはいえない

い 継続賃料利回りの補正

利回り法の継続賃料利回りについて
→次のように補正した
6.8%→9%
※甲府地裁平成16年4月27日;借家について

3 各試算賃料の採用/不採用と比率(判断)

相当賃料の算定では総合方式がとられました。
その中で各試算賃料の採否と比重について,しっかりと検討・判断が行われました。
単に平均するというような安直な方法に陥っていません。とても参考になる判断です。

<各試算賃料の採用/不採用と比率(判断)>

あ 賃貸事例比較法の不採用

類似の賃貸事例として把握できた3事例について
借主が本件の借主と同一である
→事例には規範性が認められない
他に類似の賃貸事例を収集できない
例;対象借地と類似の借地事例が少ない地域
→賃貸事例比較法は採用しない
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p762

い 各試算賃料の比率

ア 差額配分法
合理性がある
→比重を3とする
イ 利回り法
直近改定時は平成4年6月である
バブル崩壊後の地価下落期である
→当時の純賃料利回りが必ずしも適正な利回りであるとはいえない
→比重を2とする
ウ スライド法
特に問題はない
→比重を5とする
※甲府地裁平成16年4月27日;借家について