1 弁済の提供(総論)
2 弁済の提供の効果
3 弁済の提供の種類
4 弁済の提供を不要とする状況
5 供託によるリスク回避(概要)

1 弁済の提供(総論)

給付する義務の履行を弁済といいます。
具体例は,金銭を支払うとか物や不動産を渡す(引き渡す)というものです。
弁済がないと債務不履行になり,損害賠償責任が生じたり,相手から契約を解除されることがあります。
この点,弁済をしなくても,弁済をしたのと同じ扱いになることがあります。
『弁済の提供』と呼ばれるものです。
本記事では弁済の提供について説明します。

2 弁済の提供の効果

弁済の提供がどのような効果を生じるのか,についてまとめます。

<弁済の提供の効果>

債務者が弁済の提供をした場合
→債務不履行による責任が生じない
実際に弁済が完了しなくても同様である
※民法492条

3 弁済の提供の種類

弁済の提供は現実の提供,口頭の提供の2つに分けられます。
債権者の態度によって,どちらの提供が必要になるのか,が違うのです。

<弁済の提供の種類>

あ 現実の提供

原則として現実の提供を要する
※民法492条,493条本文

い 口頭の提供

『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→口頭の提供で足りる
=弁済の準備+受領の催告
ア 債権者があらかじめ受領を拒んでいる
イ 債権者の協力が必要なのに協力をしない
※民法493条ただし書

4 弁済の提供を不要とする状況

債権者の態度によっては,弁済の提供自体が不要になるという特殊な扱いもあります。

<弁済の提供を不要とする状況>

口頭の提供をしても受領しない意思が明確である場合
→口頭の提供も不要である
=債務不履行の責任は生じない
※最高裁昭和32年6月5日;賃料債務について

5 供託によるリスク回避(概要)

実際に弁済しなくても,弁済の提供だけすれば,債務不履行になりません(前記)。
しかし実際には,後から弁済の提供にあたらないと判断され,債務不履行になってしまうリスクも残ります。
このリスクを回避する方法として『弁済供託』があります。
債権者が受領を拒否しているようなケースでは利用できます。
実務では『弁済の提供』で止めずに,弁済供託を行い,確実にリスク回避をすることが一般的です。
詳しくはこちら|弁済供託|基本|制度趣旨・被供託者|受領拒否/不能・債権者不確知