【賃料増減額の紛争中の暫定的な賃料支払(基本・誤解による解除事例)】

1 賃料増額請求の紛争中の暫定支払(基本)
2 増額請求紛争中の暫定支払の事後的清算
3 賃料減額請求の紛争中の賃料支払(基本)
4 減額請求紛争中の暫定支払の事後的清算
5 『相当と認める』金額の基準(概要)
6 減額請求の暫定支払の誤解と解除(事例)
7 賃料増減額の紛争と受領拒絶による供託

1 賃料増額請求の紛争中の暫定支払(基本)

土地の地代や建物の家賃は契約の途中で増額や減額の請求ができることがあります。
詳しくはこちら|賃料増減額請求の裁判手続(調停・訴訟・調停前置)
賃料の増減額の紛争中は賃料の金額が確定していない状態となります。この時には暫定的な金額を支払うという規定があります。
まずは,賃料増額請求の紛争中の暫定的な支払の基本的事項をまとめます。

<賃料増額請求の紛争中の暫定支払(基本)>

あ 前提事情

貸主が賃料の増額を請求した
借主はこれを適正だとは考えていない
=当事者の見解が対立している
=紛争中である
例;協議・調停・訴訟の進行中

い 暫定的な賃料の支払

最終的な賃料が確定していない状態である
→借主は相当と認める金額を支払えば足りる
従前と同一の金額も含まれる
※借地借家法11条2項,32条2項

う 事後的な清算

過不足については事後的に清算が必要となる(後記※1

要するに,増額請求を受けた借主は,最低限,従来どおりの賃料を暫定的に支払う義務があるという状態になるのです。

2 増額請求紛争中の暫定支払の事後的清算

事後的に賃料額が確定すると,暫定的な支払額との間に過不足が生じることになります。当然,清算が必要になります。この点,不足していた場合はペナルティとして年1割の利息が加算されます。
なお,調停や和解が成立した場合は,この不足額の処理まで決めているはずです。
不足額が単独で問題になることはありません。

<増額請求紛争中の暫定支払の事後的清算(※1)

あ 基本的事項

賃料の金額が最終的に確定した場合
→過不足の清算を行う

い 不足分の支払

暫定支払額が不足している結果となった場合
→利息付の金額(う)を借主が貸主に支払う
超過している結果となった場合は利息加算はない

う 事後的支払額

不足額に支払期後年1割の利息を加算した金額
※借地借家法11条2項,32条2項

3 賃料減額請求の紛争中の賃料支払(基本)

賃料の減額請求の紛争中の暫定的な支払についても規定があります。要するに裁判所が減額を認めるまでは従前の賃料額を支払う必要があるのです。

<賃料減額請求の紛争中の賃料支払(基本)>

あ 前提事情

借主が賃料の減額を請求した
貸主はこれを適正だとは考えていない
=当事者の見解が対立している
=紛争中である
例;協議・調停・訴訟の進行中

い 暫定的な賃料の支払

最終的な賃料が確定していない状態である
→貸主は相当と認める金額を請求できる
従前と同一の金額も含まれる
借主は『貸主が請求した金額』を支払う必要がある
※借地借家法11条3項,32条3項

う 事後的な清算

過不足については事後的に清算が必要となる(後記※2

簡単にまとめると,増額請求も減額請求も,結果的には,(増減額が認められるまでの間は)従前の賃料額を支払うことになるといえます。

4 減額請求紛争中の暫定支払の事後的清算

減額請求の紛争中の暫定支払についても,事後的な清算が必要となります。
結果的に『請求が過剰だった』場合は,過剰支払が生じている状態になります。
この場合は返還についてペナルティとして年1割の利息が加算されます。
なお,調停・和解が成立した場合は,その中で超過額の処理も取り決めがされているはずです。この場合は,超過額が単独で問題になることはありません。

<減額請求紛争中の暫定支払の事後的清算(※2)

あ 基本的事項

賃料の金額が最終的に確定した場合
→過不足の清算を行う

い 超過支払の返還

暫定支払額が改定賃料額を超過している結果となった場合
→利息付の金額(う)を貸主が借主に返還する
不足している結果となった場合は利息加算はない

う 返還額

超過額に支払期後年1割の利息を加算した金額
※借地借家法11条3項,32条3項

5 『相当と認める』金額の基準(概要)

以上の暫定的な支払の金額が妥当かどうか問題になることもあります。
これについて,判例は非常に緩い基準を示しています。

<『相当と認める』金額の基準(概要)>

『ア・イ』に該当する場合
→『相当と認める』金額といえる
ア 従前賃料額を下回るものではないイ 賃借人が主観的に相当と認める額である 詳しくはこちら|賃料増減額請求の紛争中における暫定支払の『相当と認める額』

6 減額請求の暫定支払の誤解と解除(事例)

前記の減額請求の紛争中の暫定支払については注意が必要です。
弁護士の誤解が元になり,契約が解除され,大きな責任問題となった実例があるのです。

<減額請求の暫定支払の誤解と解除(事例)>

あ 事案

借主が賃料減額請求を行った
貸主は従前の賃料額を請求した

い 法律的な扱い(正解)

借主は暫定的に従前の賃料額を支払う義務がある
借主が減額した賃料額しか支払わなかった場合
貸主による解除が認められることがある
※東京地裁平成10年5月28日
※東京地裁平成6年10月20日

う 誤った暫定支払

借主から依頼を受けた弁護士が次のように説明した
説明内容=減額請求の金額(減額後の金額)を支払えば足りる
借主はこのとおりに減額後の金額だけを貸主に支払った

え 貸主による解除

貸主は賃料支払義務の不履行を理由に解除の通知をした
→賃貸借契約は解除された

お 弁護士への責任追及

借主(依頼者)が弁護士に損害賠償請求の提訴をした
※大阪地方裁判所平成19年(ワ)第7730号;和解で終了

7 賃料増減額の紛争と受領拒絶による供託

賃料の増減額請求の紛争では,前記のような暫定的な支払についてのルールがあります。
しかし,実際には,暫定的な賃料支払を貸主が拒否するということもあります。
かといって支払わないままでいると解除されるという大きなリスクがあります。
このようなケースでは供託を利用することでリスクを未然に回避できます。

<賃料増減額の紛争と受領拒絶による供託>

あ 不払いのリスク

賃料増減額の紛争中において
適正な金額の暫定支払が必要となる
暫定支払に不備がある場合
→賃貸借契約を解除されるリスクがある(前記)

い 受領拒否

賃料増減額の紛争中において
→貸主が賃料を受領しないことがよくある

う 供託

借主は受領拒絶による供託をすることができる
これにより解除などのリスクを回避できる
詳しくはこちら|受領拒絶による供託|基本|弁済提供の必要性・賃料増減額との関係

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