【隣地使用に対する償金請求権(趣旨・要件・内容=算定方法)】

1 隣地使用に対する償金請求権の趣旨と要件
2 損害を超える使用料相当の償還請求
3 『償金』の内容・性格の解釈

1 隣地使用に対する償金請求権の趣旨と要件

一定の状況で隣地の使用が認められます。
詳しくはこちら|隣地使用権の基本(規定・趣旨・法的性質・類似規定)
使用と引き換えに,償金の支払を要することになります。
本記事では隣地使用に対する償金請求権について説明します。
まずは,償金請求権の趣旨を要件の基本的事項をまとめます。

<隣地使用に対する償金請求権の趣旨と要件>

あ 趣旨

適法行為による損害の填補である
※埼玉弁護士会『相隣関係をめぐる法律と実務〜現代型相隣紛争解決の手引〜』ぎょうせいp84

い 償金請求の要件

『ア・イ』の主張・立証で足りる
ア 立ち入り行為 相手方が隣地or住家への立ち入りを行った
イ 損害の発生・損害額 損害が発生した+その額

う 不法行為との比較

『い』には故意・過失の立証は含まれない(不要である)
不法行為に基づく損害賠償請求とは異なる
※埼玉弁護士会『相隣関係をめぐる法律と実務〜現代型相隣紛争解決の手引〜』ぎょうせいp85

2 損害を超える使用料相当の償還請求

償金の内容,つまり金額の算定に関して『使用料相当』の金額を請求するという発想があります。
理論的には『損害』という概念とは別のものです。解釈の前提として,問題点の所在をまとめます。

<損害を超える使用料相当の償還請求>

あ 前提事情

隣地使用権を行使した者に使用料相当額の利得があった
『ア』よりも高額の『イ』が発生した
隣地の使用期間が長期のケースで問題が表面化する
ア 隣地の権利者が受けた『損害』イ 隣地使用者が得た利得=使用料相当額(※1)

い 発想

使用料相当額(前記※1)を償金として請求したい

う 解釈

『法律上の原因』はある
→不当利得には該当しない
しかし『償金』には使用料相当額も含まれる(後記※2
※鎌野邦樹『建設工事と相隣関係』/松本克美ほか『専門訴訟講座2 建築訴訟』民事法研究会p159

3 『償金』の内容・性格の解釈

前記の『使用料相当』の金額の請求は,償金請求権の法的性格の解釈と関係しています。『償金』の内容や解釈についてまとめます。

<『償金』の内容・性格の解釈>

あ 基本事項

『償金』には『い・う』の2つの性格が含まれる

い 損害の補償

隣地使用の上で損害発生を避けられなかった
→この損害についての補償という性格
=損害賠償的な性格

う 利得の償還(※2)

隣地使用者が使用料相当の利得をした
→利得償還という性格
=不当利得返還請求的な性格
※広中俊雄『物権法』青林書院p379
※末弘厳太郎『相隣関係における『損害』と『償金』』/『末弘著作集2 民法雑記帳(上巻)』日本評論新社p266

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