1 建物買取請求における代金算定方法
2 建物評価額の算定方法
3 建物買取請求権と借地権価格
4 建物買取請求権と場所的利益
5 場所的利益の具体的内容の例
6 場所的利益の算定・相場

1 建物買取請求における代金算定方法

建物買取請求における『代金額』は条文に規定がありません。
代金算定方法について以下説明します。

<建物買取請求における代金算定方法>

代金額
=建物評価額(後記※1)+場所的利益(後記※2)
※最高裁昭和35年12月20日
※最高裁昭和47年5月23日
※札幌高裁昭和34年4月7日
※東京地裁昭和37年9月21日
※東京地裁平成3年6月20日

右辺のそれぞれの項について次に説明します。

2 建物評価額の算定方法

建物評価額の算定方法をまとめます。

<建物評価額の算定方法(※1)>

あ 主な算定方法

採用することが多い計算方法
→不動産鑑定評価基準における『再調達価格』同様の方法

い 再調達価格の内容

建物を建築する場合の費用を算出する
→『耐用年数』のうち『経年分の減価相当額』を控除する
※札幌高裁昭和34年4月7日

3 建物買取請求権と借地権価格

建物買取請求における代金と借地権価格の関係を整理します。

<建物買取請求権と借地権価格(※2)>

建物買取請求権が行使されるのは借地の終了時点である
→更新されないor解除される状態にある
→理論的に『借地権は存在しない』状態である
→『借地権に相当する価値=借地権価格』は存在しない

4 建物買取請求権と場所的利益

代金額の算定で『借地権価格』は加算されません(前記)。
その代わりに別の名目で加算があります。
これについてまとめます。

<建物買取請求権と場所的利益(※2)>

あ 基本

建物買取請求権の対象建物について
→借地権はないが『い』の『利益』は存在する

い 場所的利益の公的な説明

『建物の存在自体から建物所有者が享受する事実上の利益』
→これを『場所的利益』と呼ぶ
※最高裁昭和47年5月23日
※札幌高裁昭和34年4月7日

5 場所的利益の具体的内容の例

『場所的利益』の公的な説明は分かりにくいです(前記)。
具体的な『利益=メリット』の内容をまとめます。

<場所的利益の具体的内容の例>

あ 借地権設定の可能性

うまく地主との協議が進むことによって
→新たに『借地権の設定』ができるかもしれない

い 地主が取得する想定

地主が借地権を取得したと想定した場合
→『土地利用権原』を考えることなく適法に建物を活用できる

う 結果的な土地利用実現の可能性

仮に地主が明渡請求を行った場合
→土地利用権原がなくても認められるとは限らない
→建物所有者は建物を利用できる可能性がある
例;『権利濫用』として明渡請求が排斥される

具体化しても,結局は『価値・利益』として不確実なものです。
ただし,判例・実務では確立している理論・計算方法です。

6 場所的利益の算定・相場

『場所的利益』の現実的な相場・目安をまとめます。

<場所的利益の算定・相場>

更地価格の10~30%程度

不動産鑑定士の評価で,10~30%が使われることが多いです。
通常,このパーセンテージについての根拠は明確に示されません。
立法によって算定方法が明確化されることが望ましいです。
いずれにしても,現時点の実務・裁判所の運用は以上のようなものです。