【共有物分割の登記の登録免許税】

1 共有物分割の登記の登録免許税|基本
2 登録免許税の課税標準
3 現物分割による登記の登録免許税
4 登録免許税における共有物分割の範囲
5 現物分割の和解・合意における注意点

1 共有物分割の登記の登録免許税|基本

不動産の共有物分割が完了したら,通常,登記申請を行います。
詳しくはこちら|共有物分割・完了後|登記の方法
登記申請では,登録免許税の納付が必要になります。
分割類型別に,登録免許税の扱いの基本的事項をまとめます。

<共有物分割の登記の登録免許税|基本>

あ 全面的価格賠償

課税標準額の1000分の20
『売買』と『共有物分割』の税率は同じである

い 現物分割

分筆登記と『交換or共有物分割』の登記を行う
登記原因の特定方法によって税率が異なる(後記※1

う 換価分割

共有者が登録免許税を負担することはない

2 登録免許税の課税標準

分割類型によって,登録免許税の定率課税となります(前記)。
ベースとなる課税標準についてまとめます。

<登録免許税の課税標準>

定率の登録免許税について
→課税標準額は固定資産評価額である
詳しくはこちら|土地の公的評価額の種類(1物4価(5価)・実勢価格との比率)

固定資産評価は本来『固定資産税』の課税で使うものです。
しかし,登録免許税にも流用することになっているのです。

3 現物分割による登記の登録免許税

現物分割による登記では登録免許税の計算方法が2とおりあります。
この内容を整理します。

<現物分割による登記の登録免許税(※1)

あ 民事的解釈論

現物分割の性質は交換契約である
※最判昭和42年8月25日
詳しくはこちら|共有物分割の法的性質と契約不適合責任(瑕疵担保責任)

い 登録免許税の扱い

登録免許税は登記原因によって異なる

登記原因 税率
交換 1000分の20
共有物分割 1000分の4(※2)

※登録免許税法9条,別表第1『1(2)ロ・ハ』

同じ内容の解決でも『登記原因』によって税率が大きく違うのです。

4 登録免許税における共有物分割の範囲

現物分割では大幅に低い登録免許税率を使えます(前記)。
この特別な扱いが適用される範囲は限定されています。

<登録免許税における共有物分割の範囲(※2)

あ 条文上の規定

『共有物分割』として扱う範囲
→分割前の持分に応じた価額に対応する部分に限る
※登録免許税法17条

い まとめ

共有持分割合と離れた分割結果の場合
共有持分割合を超過した部分について
→1000分の4の税率が適用されない
原則どおり1000分の20が適用される

5 現物分割の和解・合意における注意点

現物分割の和解や合意では『文言』に注意が必要です。
同じ意味の用語でも登録免許税額に大きな違いが生じるのです。

<現物分割の和解・合意における注意点>

あ 登録免許税に関するリスク

『交換』という文言を使った場合
→登録免許税率の適用で不利益を受ける可能性がある
=1000分の20が適用されるリスクがある

い 予防策

和解書・合意書において
『交換』という文言は用いない
『共有物分割』『現物分割』という文言を用いる

共有不動産の紛争解決の実務第2版

使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで

共有不動産の紛争解決の実務 第2版 弁護士・司法書士 三平聡史 著 使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記、税務まで 第2班では、背景にある判例、学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補! 共有物分割、共有物持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続きを上手に使い分けるためこ指針を示した定番書!

実務で使用する書式、知っておくべき判例を多数収録した待望の改訂版!

  • 第2版では、背景にある判例・学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補!
  • 共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分けるための指針を示した定番書!
  • 他の共有者等に対する通知書・合意書、共有物分割の類型ごとの訴状、紛争当事者の関係図を多数収録しており、実務に至便!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【無効行為の転換の理論・一般的な基本的理論と要件】
【借地契約解除と建物買取請求権】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00