1 共有物分割の本質→課税なし|原則論
2 現物分割×課税|原則・例外
3 共有物分割の基本通達
4 固定資産の交換の特例
5 共有物分割後の譲渡×短期/長期
6 現物分割に伴う調整金×所得税
7 現物分割|アンバランス→課税

1 共有物分割の本質→課税なし|原則論

本記事では,現物分割における課税関係を説明します。
まずは本質から分析した原則論をまとめます。

<共有物分割の本質→課税なし|原則論>

あ 性格論

共有物分割の性格について
→『共有持分の譲渡』に該当する
この性格は,主に現物分割について妥当する
※最高裁昭和42年8月25日

い 共有物分割の本質

『元々潜在的に複数人に分かれていた所有権が具体的に分かれた』

う 実質的な見方

ア 共有資産の同一性が失われるほどの変化がない
イ 『値上がりによる利得』がない

え 税務上の扱い|例外規定

実質的な『財産の移転』ではない
→原則的に課税関係は生じない
=例外的な規定が適用されることが多い(後記※2,※3)

お 税務上の扱い|例外の例外

持分割合から逸脱する場合
→課税が生じることがある(後記※4)
※松山明弘ほか『平成22年10月改訂資産税実務問答集』清文社p18

2 現物分割×課税|原則・例外

現物分割に関する課税の基本的部分をまとめます。
原則的なルールと例外規定があります。

<現物分割×課税|原則・例外>

あ 原則論

現物分割の本質は『交換or売買』である(前記※1)
→譲渡所得税の対象となるはずである
しかし,実質と合致しない
税務上は2つの例外的扱いがある

い 例外的扱い|内容

ア 共有物分割の基本通達(後記※2)
イ 交換の特例(後記※3)

う 例外的扱い|2つの関係

『い』の2つの例外の制度について
→要件が多少異なる
実際には重複することが多い
いずれを適用しても良い

3 共有物分割の基本通達

共有物分割に関して『基本通達』があります。
共有物分割の特殊性を反映したルールです。

<共有物分割の基本通達(※2)>

あ 持分に応じた現物分割

共有持分に応じた現物分割について
→譲渡はなかったものとして扱う
※所得税法基本通達33−1の6
※法人税法基本通達2−1−19

い おおむね持分に応じた現物分割

分割後の価格比が持分割合比率とおおむね等しい場合
→譲渡はなかったものとして扱う
※所得税法基本通達33−1の6注2

4 固定資産の交換の特例

固定資産の交換の特例というルールがあります。

<固定資産の交換の特例(※3)>

あ 固定資産の交換の特例|基本

固定資産の交換について
→一定の範囲で『譲渡はなかった』ものとして扱う
※所得税法58条,法人税法50条

い 固定資産の交換の特例|交換差金(※4)

ア 要件
交換差金がある場合でも次の範囲で特例が適用される
要件=次のAがBを超えない
A=交換差金
B=交換した資産のうち大きい方の価格の20%相当額
イ 効果
交換差金だけが所得税の課税対象となる

う 現物分割×固定資産の交換の特例

現物分割について
→一般的に『あ』の特例に該当することが多い
→該当する場合は非課税となる

この特例は共有物分割だけに適用されるものではありません。
実際には適用できることが多いです。
特に,特例の中の『交換差金』が適用されることは多いです。

5 共有物分割後の譲渡×短期/長期

前記の例外的な規定は将来的な課税にも影響が生じます。

<共有物分割後の譲渡×短期/長期>

あ 前提

共有物分割の完了後に譲渡がなされた場合
→譲渡所得税が課税される
→所有期間に『短期/長期』の区分がある

い 所有期間の判定

所有期間の『短期/長期』の判定において
『譲渡はなかったものとして扱う』(前記※2,※3)場合
→共有物分割の前後を通算して期間を算定する

6 現物分割に伴う調整金×所得税

現物分割でも『金銭』の授受を伴うケースもあります。
価格賠償を含む分割類型のことです。
税務上は『調整金』と呼びます。
調整金に関する課税内容をまとめます。

<現物分割に伴う調整金×所得税>

あ 前提事情

現物分割に伴い賠償金の支払が生じることもある
※最高裁昭和62年4月22日
詳しくはこちら|共有物分割|分割類型の組み合わせ・一部分割
税務上は『調整金』と呼ぶ

い 調整金×共有物分割の基本通達

共有物分割の基本通達(前記※2)について
→『調整金』は該当しない
→適用はない

う 調整金×交換の特例

交換の特例(前記※3)について
→『調整金』は,要件を満たせば適用される(前記※4)
→該当する場合は調整金の部分が『交換差金』となる
→調整金の部分だけが所得税の課税対象となる

7 現物分割|アンバランス→課税

アンバランスを賠償金で調整しないケースもあります。
このようなケースでの課税についてまとめます。

<現物分割|アンバランス→課税(※4)>

あ 基本

持分割合を超えて分割がなされた場合
=持分価格と分割後に取得した財産の価額が等価ではない
→例外規定(前記※2,※3)の適用はない
→原則どおりの課税関係となる
=売買と同じ課税関係が生じる
例;譲渡所得税
詳しくはこちら|共有物分割×税金|基本・全体

い 贈与税

例外規定(前記※2,※3)の適用がない場合
持分取得の『対価を支払わない』に該当する可能性が高い
※相続税法9条
→贈与税の課税も生じる可能性がある
『低額譲渡』と同様の状況である
詳しくはこちら|低額譲渡・共有持分放棄×課税|みなし譲渡所得課税・贈与税