1 形式的競売×担保権の処理|原則=消除主義
2 形式的競売×担保権の処理|例外=引受主義
3 無剰余取消→消除主義方向|判例
4 消除主義or引受主義|選択に関わる主張
5 引受主義・無剰余取消|関係性
6 担保権の処理×無剰余取消|整合性

1 形式的競売×担保権の処理|原則=消除主義

形式的競売では担保権の処理が問題となります。
基本的な理論・解釈については別に説明しています。
詳しくはこちら|形式的競売×担保権の処理|基本|消除/引受主義・判断権者
本記事では執行裁判所による担保権の処理の内容を説明します。
まず,原則としては『消除主義』が採用されます。

<形式的競売×担保権の処理|原則=消除主義>

あ 執行裁判所の判断|原則

一般的に消除主義が選択されている
租税債権による交付要求も認めている
※民事執行法59条準用
※東京地裁の運用
※坂本勁夫『不動産競売申立ての実務と記載例 全訂3版』金融財政事情研究会p363〜
※『月報司法書士2011年11月』日本司法書士会連合会p24

い 無剰余取消の準用

剰余が生じる見込みが無い
=被担保債権額が買受可能価額を上回る場合
→競売手続は取り消される
※民事執行法63条準用
※最高裁平成24年2月7日
※吉野衛ほか『注釈民事執行法(8)』p307
※東京地方裁判所民事執行センター実務研究会『民事執行の実務ー不動産執行編(下)第3版』p381

無剰余取消については後述します。

2 形式的競売×担保権の処理|例外=引受主義

執行裁判所は,例外的に『引受主義』を採用することもあります。

<形式的競売×担保権の処理|例外=引受主義>

あ 執行裁判所の判断|例外

次の『ア・イ』に該当する場合
→例外的に引受主義が採用される傾向が強い
ア 担保権者が『引受主義』採用を了承している
イ 申立人=共有者が『引受主義』採用を希望している

い 無剰余取消の準用

引受主義を取る場合
→無剰余取消は意味がない(後記※1)
→準用しない

3 無剰余取消→消除主義方向|判例

消除主義を採用していると思われる裁判例を紹介します。
ストレートに消除主義を採用・判断したわけではありません。

<無剰余取消→消除主義方向|判例>

あ 事案

不動産をA・Bが共有していた
不動産には担保権が設定されていた
被担保債権の残額が不動産評価額を超えていた
いわゆるオーバーローンである

い 裁判所の指摘

換価分割による形式的競売となった仮定として
競売手続が無剰余取消となる可能性がある

う 分析→消除主義

無剰余取消は消除主義が前提となっている(後記※1)
→裁判所は消除主義を採用していると思われる
※京都地裁平成22年3月31日

4 消除主義or引受主義|選択に関わる主張

以上のように消除主義・引受主義の選択にはブレがあります。
実務では,適切な主張が判断を変えることにつながります。
この選択に関わる主張の例をまとめます。

<消除主義or引受主義|選択に関わる主張>

あ 消除主義につながる主張

期限の利益喪失約款による連続競売リスク
詳しくはこちら|形式的競売×担保権への影響|期限の利益喪失

い 引受主義につながる主張

ア ローン返済の確実性
現実的に住宅ローン返済の確実性がある
イ 金融機関の温存意向
金融機関が次のような意向である
・担保権を実行しない
・担保権を存続させたい

5 引受主義・無剰余取消|関係性

無剰余取消という制度・規定があります。
これは『引受主義』とセットになっています。
このことについてまとめます。

<引受主義・無剰余取消|関係性(※1)>

あ 無剰余取消制度

引受主義は担保権が消滅する
→回収なしなのに担保権が消滅すると困る
→回収見込みがない場合は競売手続が取り消される
※民事執行法63条

い 無剰余取消・引受主義|関係性

無剰余取消は引受主義が前提となっている
詳しくはこちら|オーバーローン不動産の共有物分割訴訟;まとめ

6 担保権の処理×無剰余取消|整合性

『消除or引受主義』と『無剰余取消ありorなし』は相関関係があります(前記)。
整合する組み合わせをまとめてみます。

<担保権の処理×無剰余取消|整合性(※1)>

担保権の処理 無剰余取消 担保権者の債権回収
消除主義 適用あり 弁済・配当あり
引受主義 適用なし 弁済・配当なし