1 賠償金×担保の負担額控除
2 共有物×担保権|背景・典型|概要
3 現実的な利害関係|基本的判断要素
4 現実的な利害関係|判断基準
5 現実的な利害関係|典型例
6 賠償金×オーバーローン|概要

1 賠償金×担保の負担額控除

全面的価格賠償では賠償額算定が必要です。
詳しくはこちら|全面的価格賠償|賠償額=適正価値|算定|基本・鑑定
対象の共有物に担保権が設定されていることもよくあります。
この場合に,賠償金算定上の担保権の扱いが問題となります。
まずは問題となる状況と問題点を整理します。

<賠償金×担保の負担額控除>

あ 前提事情(※2)

共有不動産に担保権が設定されている
共有者=A・B
全面的価格賠償でAが取得する

い 賠償金×担保の負担額控除|基本

全面的価格賠償の賠償金算定において
担保の負担金額を控除するか否かについて
→統一的な見解はない
→『現実的な利害関係』を考慮して判断される

2 共有物×担保権|背景・典型|概要

担保の扱いについては『現実的な利害関係』で決まります(前記)。
というのは,共有者間には背景に利害関係があることが多いのです。
典型的な背景・人間関係を整理します。

<共有物×担保権|背景・典型|概要>

あ 共有者間の関係性|典型

兄弟・親子・夫婦(内縁含む)

い 担保権|典型

被担保債権について
→複数の共有者が関係していることが多い
例;連帯債務・連帯保証

3 現実的な利害関係|基本的判断要素

『現実的な利害関係』の基本的な判断要素をまとめます。
ちょっと抽象的なものです。
具体的な判断基準は後述します。

<現実的な利害関係|基本的判断要素>

あ 取得者Aの実質的な負担

前記※1の事例において
被担保債権の債務不履行が生じた場合
→担保権者が実行することがある
→Aは不動産所有権を失う

い 負担に対する保護

担保権実行によりAが所有権を失った場合
→Aは次のような保護を受ける
ア 求償権
Aは債務者に対して求償債権を持つ
※民法351条
イ 法定代位
Aは債権者が有していた権利を行使できることになる
例;他の共同担保の実行
※民法500条

う 負担の不確定性

仮に債務者が完済した場合
→『あ』の負担は消失する

4 現実的な利害関係|判断基準

現実的な利害関係についての具体的な判断基準を整理します。

<現実的な利害関係|判断基準>

あ 基本

取得者が現実的に負担すると予想される内容
『い〜え』のような事情により判断する

い 債務者の資力

ア プラス・マイナスの財産
イ 収支状況

う 法定代位による保護

担保権が実行されたという仮定にのいて
取得者が法定代位により取得する担保権
ア 担保物
他の共同担保の内容・価値
イ 保証人
保証人の有無・資力

え 取得者が担保権を負担する合理性

取得者が担保権を負担する実質的な合理性(※1)

5 現実的な利害関係|典型例

現実的な利害関係の代表的な典型例をまとめます。

<現実的な利害関係|典型例>

あ 前提事情

共有物に担保権が設定されている
共有者=A・B
被担保債権の債務者=A
全面的価格賠償によりAが取得する

い 賠償額算定

取得者自身が担保権の債務者である
→担保権の負担は当然・合理的である(上記※1)
→控除しない傾向となる
※京都地裁平成22年3月31日

6 賠償金×オーバーローン|概要

賠償金の算定において担保負担額を控除することもあります(前記)。
ところで,担保負担額が担保物の評価を上回るケースも多いです。
いわゆるオーバーローンと呼ばれる状態です。
この場合の賠償金算定についてはちょっと複雑な解釈論があります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|全面的価格賠償×オーバーローン|特殊事情→賠償額100万円|判例