1 留置権|本来的効果・競売手続
2 留置権による競売|換価金の法的扱い|複数見解
3 留置権による競売|換価金の法的扱い|実務
4 留置権に基づく競売|他の担保権の扱い

1 留置権|本来的効果・競売手続

留置権に関する基本的事項は別に説明しています。
詳しくはこちら|留置権|基本|典型例・要件・効果・使用/保存行為
本記事では留置権に基づく競売について説明します。
まずは本来的効果と競売手続との関係について整理します。

<留置権|本来的効果・競売手続>

あ 留置権の本来的効果

留置権の本来的効果
=留置する
→心理的なプレッシャーという趣旨である

い 問題点

債務者がプレッシャーを感じないことがある
債務者が放置した場合
→債権者は保管の手間・コストを要する

う 競売制度

債権者は対象物を強制的に競売できる
これにより直接的に債権回収を実現できる
※民事執行法195条

競売の制度は民法上の規定ではありません。
民事執行法でサポート的に規定されているのです。

2 留置権による競売|換価金の法的扱い|複数見解

留置権による競売では換価金の扱いにいくつかの見解があります。
複数の見解をまとめます。

<留置権による競売|換価金の法的扱い|複数見解>

あ 換価金の弁済充当→否定傾向

『留置権』は優先弁済権を持つ権利ではない
→換価金を弁済に充てることは否定される傾向にある
仮に認めるとした場合
→『債務名義取得+動産競売申立』が必要である

い 換価金の受領→肯定(※1)

留置権者は,もともと対象物を占有していた
換価金は価値的に同一物である
→留置権者は換価金も占有=受領することができる
→相殺ができる
→結果的に留置権者が優先弁済を受けたのと同じ結果となる
※東京地裁の運用

う 別の見解|案分配当

留置権者は他の債権者と同じ扱いである
=『債権者平等』という考え方
→一般債権者と平等の割合で弁済を受ける

3 留置権による競売|換価金の法的扱い|実務

実務における換価金の扱いについてまとめます。

<留置権による競売|換価金の法的扱い|実務>

あ 東京地裁の運用

東京地裁では換価金の『受領』を認める
→結果的に優先弁済が実現する(前記※1)

い 他の裁判所の運用

件数が非常に少ない
→通常『運用の主流』は存在しない
→東京地裁の運用を流用する傾向がある

4 留置権に基づく競売|他の担保権の扱い

留置権に基づく不動産競売では,既に抵当権があるケースもあります。
他の担保権の扱いについて2つの見解があります。

<留置権に基づく競売|他の担保権の扱い>

あ 基本

留置権に基づく競売について
→他の担保権の扱いに関する規定はない
→次の『い・う』の解釈がある

い 引受説

留置権の本来的効果は『心理的プレッシャー』である
→この効力にとどめるべきである
→抵当権はそのまま存続する
※東京地裁昭和60年5月17日

う 消除説

ア 解釈論
抵当権を残した状態で取得することは現実的ハードルが高い
→引受説は不合理である
→抵当権は消滅させる
=通常の競売と同じ運用
イ 具体的処理
抵当権にも配当を行う
抵当権は消滅(抹消)する
※東京地裁の運用

現時点の東京地裁執行センターは消除説を取っています。
競売手続をスムーズに進めるという現実面を重視していると言えます。