1 共有者の1人の占有×明渡請求
2 共有者の1人の占有×金銭請求|原則
3 共有者の1人の占有×金銭請求|相続による共有
4 内縁の夫婦の死別×『共有』の住居|概要
5 土地賃借権の準共有×明渡請求|概要

1 共有者の1人の占有×明渡請求

共有者の1人が共有物を使用するケースはよくあります。
詳しくはこちら|共有者の1人による共有不動産の使用・占有|全体
本記事では原則的・基本的な解釈論を説明します。
まずは明渡請求が認められないという理論をまとめます。

<共有者の1人の占有×明渡請求>

あ 共有者の1人の占有

不動産をA・Bが共有している
Bが占有している
AがBに対して明渡を請求した

い 具体的使用権原→なし

共有者は単独で共有物を占有する権原はない
具体的な権原という意味である
共有者間の協議が必要である

う 抽象的使用権原→あり

各共有者は『共有物の全部』を使用する権原がある
抽象的な権原という意味である
→まったくの無権限ではない

え 明渡請求

AからBに対する明渡請求は認めない
Aの持分が過半数であっても同様である
※民法249条
※最高裁昭和41年5月19日
※最高裁平成8年12月17日

2 共有者の1人の占有×金銭請求|原則

前記のように明渡請求は原則的に否定されます。
早く占有した者がトクをする,という感じがします。
つまり,他の共有者との間に不公平が生じます。
この点は金銭の請求という形でバランスが取られます。

<共有者の1人の占有×金銭請求|原則>

あ 前提事情

共有者の1人Aが共有不動産を占有している
他の共有者BがAに金銭を請求した

い 金銭請求

Bは『持分に応じた使用』が妨害されている
→BからAへの金銭請求は原則として認められる

う 金額算定

『賃料(地代・家賃)』に相当する金額
→持分割合に応じて算定する

え 法的根拠

次のいずれかが根拠となる
ア 不当利得返還請求権
イ 不法行為による損害賠償請求権
※民法703条,704条,709条
※最高裁平成12年4月7日

3 共有者の1人の占有×金銭請求|相続による共有

特殊な事情があると『金銭請求』までも否定されます。
代表的なケースは相続前からの同居というものです。
判例による判断をまとめます。

<共有者の1人の占有×金銭請求|相続による共有>

あ 前提事情

親Aが不動産を所有している
この不動産に親A・子Bが同居している
A・B間に明確な合意・金銭の支払はなかった
→次の判断となる傾向がある

い 使用貸借関係

親子間に『使用貸借』の関係を認める

う 死後の状況

親Aが亡くなった後について
B以外の相続人からBへの明渡・金銭請求について
→いずれも一定期間は否定される

え 無償使用期間

相続開始時(所有者死亡時)〜遺産分割完了時
※最高裁平成8年12月17日
詳しくはこちら|共有者の1人が不動産を占有→明渡請求・賃料相当額の請求

4 内縁の夫婦の死別×『共有』の住居|概要

『金銭請求』までも否定する特殊事情はいろいろとあります。
前記の事案以外では『内縁の夫婦の死別』がありがちなものです。

<内縁の夫婦の死別×『共有』の住居|概要>

あ 前提事情 

内縁の夫婦が住居を共有している場合
→次の判断となる傾向がある

い 使用貸借関係

相互に『持分について使用貸借』の関係を認める

う 死別後の状況

一方が死亡した場合について
死亡した者の相続人からの明渡・金銭請求について
→いずれも否定される
※最高裁平成10年2月26日
詳しくはこちら|内縁の夫婦の死別×共有のマイホーム→使用貸借関係

5 土地賃借権の準共有×明渡請求|概要

土地の賃借人が複数存在するケースもあります。
『賃借権』を準共有している状態となります。
この場合の明渡請求も解釈の問題があります。
通常の共有,つまり所有権の共有と同じ考え方です。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|賃借権の準共有×判例法の準用|建物所有/転貸による単独所有