1 無効登記・完全無権利→共有者からの一部抹消登記
2 無効登記・完全無権利→共同相続人からの一部抹消登記
3 共同相続人の持分移転登記→抹消登記|基本
4 共同相続人の持分移転登記→抹消請求|理論・考察
5 共同相続人の持分移転登記→抹消請求|共有者間
6 無効登記・完全無権利+単独所有登記→抹消登記

1 無効登記・完全無権利→共有者からの一部抹消登記

無効登記の抹消を求めるケースはよくあります。
いろいろな問題の全体的なまとめは別に説明しています。
詳しくはこちら|無効・不正な登記×抹消請求|全体・まとめ|共有状態との関係
本記事では『完全な無権利者』の登記が存在するケースを説明します。
最初に無権利者が共有持分登記を持っている事案の判断をまとめます。

<無効登記・完全無権利→共有者からの一部抹消登記>

あ 真実の権利者

A・Bの共有

い 登記の状態

A・B・Cを共有者とする所有権保存登記がなされている

う 抹消登記請求訴訟

AがCに対して訴訟を提起した
請求内容=C持分の抹消登記請求

え 一部抹消のみ肯定

C持分の抹消登記は『B持分についての更正登記』を含む
→Aが請求することはできない
Aは『A持分についての一部抹消登記』を請求できる
登記手続上は『更正登記』となる
※最高裁平成22年4月20日

2 無効登記・完全無権利→共同相続人からの一部抹消登記

無効な登記が問題になるのは相続がきっかけであることが多いです。
複数の相続人の間で抹消を請求されることになります。
具体的な判例の事案を紹介します。
実質的な理論は前記と同じです。
『相続』という状況が判断に影響しているわけではありません。

<無効登記・完全無権利→共同相続人からの一部抹消登記>

あ 相続開始

Aが不動産を所有していた
Aが亡くなった

い 相続させる遺言

相続人はB・C・Dであった
遺言により不動産をB・Cが相続・承継した

う 真実に反する登記

法定相続登記が行われた
登記の状態=B・C・Dの共有

え 裁判所の判断

Dに対する一部抹消・更正登記の請求を認める
各自が個別的に紛争を解決できる
→抹消登記請求は固有必要的共同訴訟ではない
→B・C各自は単独で,自己の侵害分についての請求ができる
他の共有者が侵害された部分についての請求はできない
※最高裁昭和60年11月29日
※最高裁昭和59年4月24日

3 共同相続人の持分移転登記→抹消登記|基本

複数の相続人の間で,無効な登記が問題となったケースを紹介します。
最終的には相続人以外の者が無効登記の名義人となったものです。
まずは判例の判断結果をまとめます。

<共同相続人の持分移転登記→抹消登記|基本(※1)>

あ 相続登記|真正

Aが死亡した
相続で共同相続人B・C・Dが不動産を承継した
B・C・Dの共有とする移転登記がなされた

い 無効な持分移転登記

B持分をEに移転する登記がなされた
不正な登記であった

う 抹消登記請求

C・DがEの持分移転登記の抹消を請求した
→保存行為に該当する
→抹消登記請求を認めた
※最高裁平成15年7月11日

4 共同相続人の持分移転登記→抹消請求|理論・考察

前記判例の理論は,従前の判例とは違うようにも見えます。
これについて検討してみます。

<共同相続人の持分移転登記→抹消請求|理論・考察>

あ 一般的判例理論との違い

上記※1の事案において
C・Dは自己の持分は登記上侵害されていない
一般的な判例理論を元にすると
→抹消登記請求は認められないはずである

い 整合性・考察

『遺産』という特殊性がある(後記『う』)
→『持分権の侵害』と言えるかもしれない
または,債権者代位権の転用という考え方もある

う 相続の特殊性=現実的問題の発生

遺産分割の手続でC・Dとしては相手方が不明確となる
遺産分割or共有物分割という選択の問題も生じる
詳しくはこちら|遺産共有/物権共有|基本・法的性質・分割手続の種類
→現実的にC・Dが困ることが生じる可能性がある
※『論点体系判例民法2物権』第一法規p311

相続・遺産という特殊性が判断に影響したと指摘されています。

5 共同相続人の持分移転登記→抹消請求|共有者間

上記の考察を元にちょっと事案を変えてみます。
『共同相続人の範囲内』で不正・無効な登記がなされた想定です。

<共同相続人の持分移転登記→抹消請求|共有者間>

あ 相続登記|真正

Aが死亡した
相続でB・C・Dが不動産を承継した
B・C・Dの共有とする移転登記がなされた

い 無効な持分移転登記

B持分をDに移転する登記がなされた
不正な登記であった

う 抹消登記請求|想定

CがDの持分移転登記の抹消を請求することを想定する

え 遺産の特殊性・考察

Cは自己の持分部分は侵害されていない
登記上『相続人以外』が新たに登場していない
→権利・現実いずれの面でも侵害・困惑は生じていない
→Cの抹消登記請求は認められないと思われる
※『論点体系判例民法2物権』第一法規p314〜315

6 無効登記・完全無権利+単独所有登記→抹消登記

以上の判例の理論とは違う感じのする判例はまだあります。

<無効登記・完全無権利+単独所有登記→抹消登記>

あ 単独所有登記・完全無権利

不動産がA・Bの共有となっている
第三者Cの単独所有名義の登記がなされている

い 単純抹消→肯定

登記抹消請求は『保存』行為である
→Aは単独でCに対して登記抹消を請求できる
※最高裁昭和31年5月10日

これ以外の判例理論と整合しないようにも思えます。
事情が違うとすれば『無効登記が単独所有』というところです。
他の真の権利者を完全に排除しきっているのです。
そのため,各共有者からの『全面的な抹消』を認めたと思われます。
この『違いの理由』についてははっきりしたものではありません。