1 無効登記・一部権利あり|事案・過去の判例
2 無効登記・一部権利あり→一部抹消登記
3 持分を超える登記×数次相続登記→単純抹消登記
4 相続前の無効登記×相続後一部取得|事案
5 無効登記×相続後一部取得|裁判所の判断
6 無効登記×相続後一部取得→真名移転登記

1 無効登記・一部権利あり|事案・過去の判例

無効登記の抹消を求めるケースはよくあります。
いろいろな問題の全体的なまとめは別に説明しています。
詳しくはこちら|無効・不正な登記×抹消請求|全体・まとめ|共有状態との関係
本記事では『無効な登記の名義人に一部権利がある』ケースを説明します。
つまり,共有持分を持つ者が本来よりも多い登記となっているというものです。
最初に事案の概要と過去の判例の理論をまとめます。

<無効登記・一部権利あり|事案・過去の判例>

あ 無効な登記|一部権利あり

登記=Aの単独所有
真実=Aは共有持分を持つ

い 従前の判例

他の共有者の『抹消』登記請求を認めていた
→登記上Aの共有持分すら残らなくなる
※大判大正8年11月3日

う 判例変更

その後判例では別の理論が採用されている(※1)

2 無効登記・一部権利あり→一部抹消登記

前記の事案における,現在の判例理論をまとめます。

<無効登記・一部権利あり→一部抹消登記(※1)>

あ 単純な『抹消』登記→否定

Aはまったくの無権利者ではない
=登記は一部合致している
→全面的な『抹消』請求は認めない

い 一部抹消のみ肯定

請求者の持分部分についての抹消のみ認める
一部の抹消と言える
登記手続上は『更正登記』となる
→登記上Aの共有持分は残る
※大判大正10年10月27日
※最高裁昭和38年2月22日
※最高裁昭和39年4月17日
※最高裁昭和44年5月29日
※最高裁昭和59年4月24日

3 持分を超える登記×数次相続登記→単純抹消登記

『数次相続登記』という登記手続の種類があります。
一種の中間省略登記です。
無効な登記に『数次相続登記』が含まれると例外的扱いとなります。

<持分を超える登記×数次相続登記→単純抹消登記>

あ 相続関係

Aが不動産を所有していた
Aが亡くなった
Aの相続人X・Bが承継した
Bが亡くなった
Bの相続人Yが承継した

い 不動産登記

AからYに対して直接所有権移転登記がなされた
登記原因=A→B→Yという数次相続

う 真実の権利関係

A→X+B
B持分→Y
最終的状態=X+Yの共有

え 抹消登記→肯定

Yには共有持分権がある
→本来『抹消』ではなく『更正請求』が認められる
→しかし数次相続登記のため『更正請求』ができない
→『抹消登記請求』を認めた
※最高裁平成17年12月15日

4 相続前の無効登記×相続後一部取得|事案

無効な登記が,その後のプロセスで複雑な状況となることがあります。
無権利であった者が,その後の相続で実際に権利を取得したケースです。
まずは事案を整理します。

<相続前の無効登記×相続後一部取得|事案(※2)>

あ 相続前の無効な登記

AがBに贈与した+登記をした
贈与は無効であった
例;通謀虚偽表示

い 相続

Aが亡くなった
相続人はB・Cであった
Bは実体法上,共有持分を取得した

5 無効登記×相続後一部取得|裁判所の判断

上記※2の事案について,裁判所の判断内容をまとめます。

<無効登記×相続後一部取得|裁判所の判断>

あ 贈与による移転登記

Bは共有持分=権利を持つ
しかし取得原因は『相続』である
→『贈与』自体が実体を欠く無効な登記である

い 抹消登記

『贈与』登記を存続させるべきではない
=抹消するのが原則である
→CはBに対して『抹消登記請求』ができる(※3)
※東京高裁平成8年5月30日
※東京地裁平成6年2月16日
※東京高裁平成7年5月31日

6 無効登記×相続後一部取得→真名移転登記

上記※2の事案では,通常,全面的な抹消登記が認められます(前記)。
これを前提として,別の方法も合わせて認める裁判例もあります。

<無効登記×相続後一部取得→真名移転登記>

あ 相続前の無効な登記×相続承継

相続前にAからBに無効な登記がなされた
相続によって実体法上,Bは共有持分を取得した(上記※2と同様)

い 抹消登記請求

CはBに対して『抹消登記請求』ができる(上記※3と同様)

う 移転登記請求|可能

『Bの所有権=共有持分』は真実に合致する部分もある
→抹消登記の代わりに『所有権移転登記』の請求もできる

え 移転登記請求|内容

『真実に合致しない部分』だけを真実の権利者に移転させる
登記原因=『真正な登記名義の回復』
『真名移転』と略して呼ぶこともある
※東京地裁平成5年3月25日