1 ローン特約による解除×仲介手数料|基本
2 ローン特約×仲介手数料|代金減額→手数料減額|事例
3 資金調達特約による解除→仲介手数料なし|事案
4 ローン特約×仲介手数料|買主の購入意思喪失|事例
5 ローン特約を付ける義務→認めた|事案
6 ローン特約を付ける義務→認めなかった|事例
7 ローン特約解除期限切れ×仲介業者の責任|事案

1 ローン特約による解除×仲介手数料|基本

不動産売買で『ローン特約』を付けることはとても多いです。
融資承認を得られない場合に契約を白紙撤回にするものです。
(別記事『全体』;リンクは末尾に表示)
ローン特約により売買契約が解除された場合『仲介手数料』の処理が問題となります。

<ローン特約による解除×仲介手数料|基本>

あ 背景

『ローン特約付きの売買契約を締結』した時点
→『白紙解除』の可能性について,関係者全員は想像できた
『当事者の意図的な行為』によって生じた『契約解消』ではない

い 原則論

原則として仲介手数料は発生しない
→支払済の部分は返還義務がある
※東京地裁平成24年11月16日

う 例外

一定の事情があると『ローン特約による解除』が認められない
例;融資審査への協力義務違反・客観的障害がない場合など
(別記事『融資申込・審査』;リンクは末尾に表示)

売買契約が解消されるとともに『仲介手数料』も発生しなくなるのです。

2 ローン特約×仲介手数料|代金減額→手数料減額|事例

融資の承認が『申込額よりも減額された』ケースを紹介します。
最終的に売主・買主の交渉により『代金額自体を減額』しました。
この場合に仲介手数料がどうなるか,という判断です。

<ローン特約×仲介手数料|代金減額→手数料減額|事例>

あ 売買契約締結

売買契約が締結された
ローン特約が付いていた

い 『減額』された融資承認

買主は融資を申し込んだ
申込額よりも低い金額で,金融機関は承認した

う 代金額の減額交渉

買主と売主は『代金の減額』を協議し合意した
融資を受け,代金の支払も終えた

え 仲介手数料はゼロor減額

買主はローン特約により媒介契約が解消されていると主張した
解消されないとしたら手数料が減額されると主張した
※東京地裁平成22年8月31日

<裁判所の判断>

あ 媒介契約の解除

ローン特約で『媒介契約』が解除できるわけではない

い 仲介手数料の減額

規定どおりの算定では約48万円であった
『代金の減額』により30万円が妥当であると認められた
このうち未払い分10万円の請求を認容した
※東京地裁平成22年8月31日

3 資金調達特約による解除→仲介手数料なし|事案

ローン特約以外にも『購入資金調達』に関するものがあります。
資金調達に関する特約による解除がなされたケースを紹介します。

<資金調達特約による解除→仲介手数料なし|事案>

あ 売買契約締結

売買契約が締結された
次の資金調達特約が付けられた

い 資金調達特約

別途契約済の土地売却代金を代金支払の原資とする
別件の売却が不可能となった場合は当該売買契約は白紙解約とする
解除期限は平成19年12月10日とする

う 別件売却の解消

別件の売却は,別件買主の解除により解消された

え 本件売買契約の解除

本件の買主は売主に解除の通知をした
しかし通知した時点で解除期限後であった
買主と売主は清算について協議した
実質的に『手付放棄+違約金支払』の内容で和解・合意した
売買契約は『合意解除』とした

お 仲介手数料の請求

仲介業者は『合意解除により報酬債権を侵害された』と主張した
※東京地裁平成22年7月20日

<裁判所の判断>

資金調達特約による解除条件が成就した
→売買契約は失効した
→債権侵害の不法行為は成立しない
→報酬請求を認めなかった
※東京地裁平成22年7月20日

ちょっとイレギュラーな事情があったのです。
しかし結果としては『ローン特約による解除』と同様の扱いとなりました。

4 ローン特約×仲介手数料|買主の購入意思喪失|事例

融資の不承認の理由について問題となった事例があります。
『買主の都合・意向』かそうでないか,という判断です。

<ローン特約×仲介手数料|買主の購入意思喪失|事例>

あ 売買契約締結

売買契約が締結された
ローン特約が付いていた

い 融資申込

買主は別に不動産Aを所有していた
融資の際,不動産Aを共同担保とする計画であった
買主は銀行Bに融資申込をした
銀行Bは融資承認の内定を連絡した

う 想定外の出費

買主の子供が刑事事件を起こした
示談金として500万円を用意することとなった

え 権利証ロック

買主は勤務先=信用組合Cから,退職金の前借りを行った
前借りの際,勤務先Cに不動産Aの登記済証権利証を預けた
ただし担保権の設定はなされていない

お 融資不承認

銀行Bの融資は承認されなくなった
理由は次の事情である
ア 不動産Aを担保に入れないこととなった
イ 将来の退職金受領がなくなった

か 解除通知

買主はローン特約による解除を通知した
売主との間では買主が25万円を支払う内容の和解が成立した

き 仲介手数料の請求

仲介業者は買主に仲介手数料を請求した
買主は『解除済み』であることを理由に拒否した
※水戸地裁平成7年3月14日

<裁判所の判断>

ローン特約は『客観的障害』を要因とする場合に適用される
買主には,融資を受けられない客観的な理由・事情はなかった
買主が『購入の意思を喪失した』ことに起因すると言える
ローン特約による解除は認めない
→仲介手数料の請求権も消滅しない
→仲介手数料の請求を認めた
※水戸地裁平成7年3月14日

以上は『仲介手数料』の扱いの問題でした。
これとは別に『ローン特約』に関して仲介業者が責任を負うこともあります。
次に説明します。

5 ローン特約を付ける義務→認めた|事案

買主が,後から『ローン特約があれば良かったのに』と悔いることがあります。
仲介業者が『ローン特約を付ける』ように活動すれば良かったとも言えます。
仲介業者に責任が認められたケースを紹介します。

<ローン特約を付ける義務→認めた|事案>

あ 契約締結|売買+請負

土地売買契約+建築工事請負契約が締結された
仲介業者Aが仲介を行った
ローン特約は明記されていなかった

い 別件=旧自宅売却の契約

買主は同時期に旧自宅を売却した
この売買の仲介もAであった
自宅売却の契約書ではローン特約が明記されていた

う 仲介業者の事情の把握

買主はAに資金計画を詳細に説明していた
買主にローンが下りなかった場合,代金支払が不能となる状態だった
Aはこの事情を知っていた
※大阪高裁平成12年5月19日

<裁判所の判断>

『ローン特約を付ける』という黙示の合意が認められる
仲介業者Aはに,この合意・義務違反があった
損害賠償請求を認めた
損害=手付金相当額400万円
※大阪高裁平成12年5月19日

6 ローン特約を付ける義務→認めなかった|事例

状況によっては,仲介業者に『ローン特約を付ける義務』が認められます(前記)。
この理論を流用としたけど認められなかったケースもあります。

<ローン特約を付ける義務→認めなかった|事例>

あ 収益物件の売買契約

売買契約が締結された
対象物件=収益物件・マンション
ローン特約が付けられていなかった
買主は契約当時88歳であった

い 融資不承認→違約金発生

買主は融資を受けられなかった
手付金の返還を受けられず,違約金を払うことになった
正確には訴訟における和解で『和解金』として支払った

う 買主の主張

買主は『仲介業者にはローン特約を付ける義務があった』と主張した
買主は仲介業者に対して損害賠償を請求した
※東京地裁平成25年10月22日

<裁判所の判断>

あ 事情の認定

仲介業者は『ローン特約がない』ことを買主に説明していた
契約締結前・締結時に確認している
買主は次のように説明していた
買主『融資が受けられない場合手持ち資金で購入する』
購入申込書に『融資利用予定なし』と記載されていた
『買主に資力がない』と疑う事情は特になかった

い ローン特約を付ける義務

仲介業者にはローン特約を付ける義務は認められない
ローン特約に関する説明義務違反・誠実義務違反もない

う 損害賠償|結論

買主の損害賠償請求は認めない
※東京地裁平成25年10月22日

7 ローン特約解除期限切れ×仲介業者の責任|事案

ローン特約付きの契約後に仲介業者の責任が生じるケースもあります。

<ローン特約解除期限切れ×仲介業者の責任|事案>

あ 売買契約

売買契約が締結された
ローン特約が付いていた
買主は金融機関に融資を申し込んだ

い 解除期限経過

『ローン特約による解除期限』が到来した
しかし,融資の審査結果がまだ出ていなかった
売主は『買主の債務不履行』を理由に解除を通知した

う 清算→買主の負担

買主には大きな負担が生じた
→手付金が返還されない+違約金支払義務
※東京地裁平成24年11月7日

<裁判所の判断>

あ 仲介業者の助言義務

仲介業者には買主への『助言義務』があった
助言内容=速やかに借入の申込を行うこと
仲介業者には助言義務違反がある

い 損害額

次の項目に相当する金額 合計約500万円
ア 仲介手数料 75万円
イ 解決金 200万円
買主が売主に払ったもの
違約金に相当する
ウ 手付金 225万円
戻らなくなったもの
※東京地裁平成24年11月7日