1 ローン条項|条項自体の解釈論・錯誤無効|概要
2 ローン特約の空欄が多い→特約が無効|事案
3 固定/変動金利の選択|売買+請負→一体化|事案
4 『公庫の融資』が前提→錯誤無効|事案
5 融資前提だがローン特約なし→錯誤無効|事案

1 ローン条項|条項自体の解釈論・錯誤無効|概要

不動産売買ではローン特約が非常によく使われています。
ローン特約は『条項自体』の解釈が問題なるトラブルが多いです。
また買主の想定と契約書の『条項』が食い違うこともあります。
事情によっては『契約全体が無効』となることもあります。
本記事ではローン特約の条項や契約が無効となるトラブル例を紹介します。

2 ローン特約の空欄が多い→特約が無効|事案

契約書上のローン特約の表記から『特約が無効』となったケースです。

<ローン特約の空欄が多い→特約が無効|事案>

あ 契約締結

売買契約が締結された
契約書は定型書式が使われた
条項の中にローン特約自体は記載されていた
特約に関連する,後記の3つの欄があった
これらの欄は記載がないままであった

い ローン特約に関連する欄|表記

ア 『融資の利用(有・無)』
イ 『融資申込先』
ウ 『期日』解除期限の意味

う ローン特約による解除

買主は代金支払の資金を調達できなかった
買主はローン特約による解除を主張した
買主は宅建業者であった
※福岡高裁平成4年12月21日

<裁判所の判断>

あ 必要とされる明確性

ローン特約は売主が不安定な状態となる
売主の不利益を前提とするものである
条項としてある程度の明記が必要である

い ローン条項の表記の評価

『融資利用の有無・解除期限』が記載されていない
いずれも記載されていないので不明確である
→特約が『無効』である
※福岡高裁平成4年12月21日

3 固定/変動金利の選択|売買+請負→一体化|事案

土地の売買と建物建築の契約がセットになっていることも多いです。
このような『2つの契約』について特別な解釈をした判例を紹介します。

<固定/変動金利の選択|売買+請負→一体化|事案>

あ 売買・請負契約締結

次のように2つの契約が締結された
ア 土地
売買契約
売主=A・仲介業者=B
ローン特約付き
イ 建物
建築請負契約
請負人=A
ローン特約なし

い 建築基準法違反

建築予定の建物は建築基準法に違反するものであった
仮に完成した場合,検査済証を受けられない状態であった
詳しくはこちら|建築基準法の違反(違法建築)への罰則と行政的措置
詳しくはこちら|違法建築→検査済証なし→増改築・用途変更・ローンNG|規制緩和方針

う 融資申込・審査

買主は,固定金利のみを前提として申込を行った
買主は変動金利を受け入れなかった
融資承認はなされなかった
買主はローン特約による解除を通知した
※大阪高裁平成10年3月24日

<裁判所の判断>

あ 固定/変動金利

融資を受ける者への影響が大きい事項である
買主が『変動金利を拒絶したこと』は『帰責性』がない

い 請負契約×ローン特約の適用

売買契約・請負契約は一体となっている
2つを含めて1つの売買契約と考える
ローン特約は契約全体に適用される
→ローン特約による解除は契約全体について有効である

う 仲介業者の説明義務違反

『虚偽の建築確認申請』が予定されていた
検査済証が受けられない
→将来の売却・増改築に支障が生じる
仲介業者はこのことを知っていた
→重要事項説明義務違反である

え 損害賠償責任

仲介業者・売主は連帯して支払義務がある
賠償額=おおよそ手付金と同額
※大阪高裁平成10年3月24日

4 『公庫の融資』が前提→錯誤無効|事案

ローン特約の『内容』が問題なるケースも多いです。
買主の想定と条項の記載が違う,という状況です。
最終的に契約全体を無効と判断したケースを紹介します。

<『公庫の融資』が前提→錯誤無効|事案>

あ 売買契約締結

売買契約が締結された
ローン特約が付いていた

い 融資の前提条件

買主は住宅金融公庫の融資を受ける予定であった
そのままでは住宅金融公庫の融資の対象ではなかった
売主は買主に次のように説明した
『公庫に提出する書面を操作すれば融資を受けられる』

う 融資申込・審査

買主は住宅金融公庫に融資を申し込んだ
結局融資要件を欠くことにより融資承認はなされなかった
買主は他の金融機関からの借入を望まなかった
そこで他の金融機関へのローン申込はしなかった
買主はローン特約による解除を通知した

え 売主の主張

ローン特約には『住宅金融公庫』という限定はなかった
住宅金融公庫以外への融資のトライをしていなかった
ローン特約による解除は認めない
※東京地裁平成5年11月25日

<裁判所の判断>

あ ローン種類×前提条件

買主は『住宅金融公庫の融資』が売買契約締結の前提条件であった
この前提が事実と異なっていた

い 錯誤→無効

『要素の錯誤』に該当する
売買契約は無効となる
→支払済の金銭はすべて返還義務がある
※民法95条
※東京地裁平成5年11月25日

5 融資前提だがローン特約なし→錯誤無効|事案

買主の想定と契約条項が異なると大きな問題となります。
ローン特約がないことを理由に『契約全体が無効』になることがあります。

<融資前提だがローン特約なし→錯誤無効|事案>

あ 資金調達計画

売買に向けた交渉が行われた
買主は売主に資金を調達する計画を説明した
計画内容=買主は財形融資を受けて資金を調達する
売主は宅建業者であった

い 売買契約締結

売買契約が締結された
ローン特約はなかった

う 融資不承認

買主は融資を申し込んだ
融資は承認されなかった
買主は契約の白紙解消を希望した
※東京高裁平成2年3月27日

<裁判所の判断>

買主は『融資を受けられる前提』で契約締結に至った
→要素の錯誤に該当する
→売買契約は無効である
※民法95条
※東京高裁平成2年3月27日