1 土地売買×浸水|事案
2 土地売買×浸水|裁判所の判断
3 マンション売買×浸水|事案
4 マンション売買×浸水|裁判所の評価
5 マンション売買×浸水|裁判所の判断
6 マンション売買×駐車場の浸水|事案
7 マンション売買×駐車場の浸水|裁判所の判断

1 土地売買×浸水|事案

不動産の売買の後に『場所的な問題』が表面化するケースがあります。
法的な責任の内容・判断基準については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|不動産売買×調査・説明義務・瑕疵の基準|安全性・周辺環境
本記事では,実際の事例での判例を紹介します。
まずは『土地』の売買に関する事例です。

<土地売買×浸水|事案>

あ 事案・概要

港区の土地・建物
AがBに売却した
Bは購入後,建物を取り壊した
建物を新築した
翌年,集中豪雨が生じた
建物の一部が浸水した

い 『物件状況等報告書』の記載

『浸水等の被害』欄には『知らない』と記載されていた
※東京地裁平成19年1月25日

2 土地売買×浸水|裁判所の判断

前記の事例について,裁判所の判断をまとめます。

<土地売買×浸水|裁判所の判断>

あ 裁判所の評価

建物は取り壊されているので『土地』を中心に判断する
『建物』の構造により被害を受けるかどうかが決まる
『土地』の性状によって決まるものではない

い 裁判所の判断|瑕疵

『土地』の性状としての不足はない
→『瑕疵』には該当しない

う 裁判所の判断|説明義務

仲介業者は過去の浸水被害を実際に知らなかった
→信義則上の説明義務もない
※東京地裁平成19年1月25日

責任が否定されたポイントは『建物』は解体されていたことです。
つまり,実質的に『土地自体の欠陥かどうか』が考慮対象だったのです。

3 マンション売買×浸水|事案

分譲マンションの売買に関して『浸水』が問題になったケースです。

<マンション売買×浸水|事案>

あ 事案・概要

マンションを新築した
マンションの完成直前に,大雨が降った
1階部分が浸水した
そこで,建築業者はマンションの玄関に防潮板を設置した
建築業者はマンションを分譲・販売した
購入者Aは,浸水の経緯を知った
Aは建築業者・設計業者に対して損害賠償を請求した

い 近隣の状況

近隣にある類似のマンションでは,盛土=地表面のかさ上げを施工している
上記の大雨で浸水被害は生じていない
※東京地裁平成15年4月10日

4 マンション売買×浸水|裁判所の評価

前記の事案について,裁判所の認定をまとめます。

<マンション売買×浸水|裁判所の評価>

あ 防潮板の設置

マンションの居住者に不便を強いる
美観を損ねる
→ひんしゅくを買うような対応である
=浸水被害の対策として杜撰である

い 要因=責任

設計段階に,建築業者が立地条件を把握していなかった
→盛土を行わずに施工を始めた
→泥縄式に防潮板を設置した
※東京地裁平成15年4月10日

最終的な結論は次にまとめます。

5 マンション売買×浸水|裁判所の判断

前記の認定を前提にして裁判所が判断した結論をまとめます。

<マンション売買×浸水|裁判所の判断>

あ 瑕疵についての判断

『瑕疵』に該当する

い 責任の主体

ア 建築業者
損害賠償責任を認めた
イ 設計業者
責任を否定した
※東京地裁平成15年4月10日

ポイントは『売却されたマンションに居住している』ということです。
土地ではなくて『建物』の性状=品質,として考慮されたのです。
その結果『浸水しやすい』ことは建物の品質として重大であると評価されました。

6 マンション売買×駐車場の浸水|事案

分譲マンションの『駐車場』の浸水が問題になったケースを紹介します。

<マンション売買×駐車場の浸水|事案>

あ 事案・概要

浸水しやすいエリアに,Aがマンションを建築した
Aはマンションを分譲して売却した
その後,降雨の際,駐車場部分が冠水した
浸水は駐車車両のナンバープレートの下付近まで達した

い 浸水の程度

建物に床下浸水をもたらす程度にまでは至っていない
浸水対策が取られれば,いずれ解消されると言える
例;雨水管・雨水桝の整備
※東京高裁平成15年9月25日

7 マンション売買×駐車場の浸水|裁判所の判断

前記事案について,裁判所の判断内容をまとめます。

<マンション売買×駐車場の浸水|裁判所の判断>

う 裁判所の判断|瑕疵

『浸水・冠水しやすい状況』
→居住自体を困難とするものではない
→一般的な『場所的・環境的要因』の範囲内である
→『瑕疵』とは認めない

え 裁判所の判断|説明義務

売主は具体的な浸水リスクを知らなかった
→『説明義務』があったとは認めない
※東京高裁平成15年9月25日

ポイントは『マンション本体・居住部分』には支障がなかったことです。
一般的な『マンションの浸水』(前記)とは違うのです。