1 宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|一般的
2 宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|具体的
3 重要事項説明義務|法定の事項を契約当事者に説明する
4 宅建業法違反×行政責任|指示処分・業務停止・免許取消
5 宅建業法違反×刑事責任|法定刑
6 刑法違反×刑事責任|法定刑|詐欺罪・横領罪・恐喝罪
7 宅建業法/刑法違反×刑事責任|手続|逮捕・勾留・起訴・公判
8 宅建業法上の『説明義務違反』と『売買契約の有効性』は別である
9 不動産売買トラブルの解決の実務|民事・行政・刑事責任の関係

1 宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|一般的

不動産の売買では,通常,仲介業者が存在します。
重要事項説明など,取引の『事故』を防止する任務があります(後述)
一方で,構造的に『成約に向けた努力』が行き過ぎる傾向があります。
そこで,宅建業法・施行規則で『不正セールス』が特定され,禁止されています。

<宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|一般的>

あ 告知義務違反・不実告知

故意に事実を告げないor不実を告げる行為
対象事項=『重要事項』などの一定の事実

い 高額報酬の要求

不当に高額の報酬を要求する行為

う 経済的供与

手付金の貸付・信用供与による契約締結の勧誘
※宅建業法47条

2 宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|具体的

宅建業法上の禁止事項には,さらに具体的な行為も規定されています。
要するに『不正セールス集』の内容となるようなモノです。
『悪質業者の新人教育マニュアル』みたいなリストです。

<宅建業法・禁止事項=不正セールス手法|具体的>

あ 断定的判断の提供

次の事項について誤解を招く断定的判断を提供する
対象事項=将来の環境・交通その他の利便

い 急かす

契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒む

う 勧誘目的宣言なし

勧誘前に,宅建業者名・氏名・『勧誘をする目的』を告げずに勧誘を行う

え 拒否後の勧誘

『契約を締結しない』旨の意思を表示したに勧誘を継続する

お 迷惑・困惑なセールス攻撃

迷惑を覚えさせるような時間に電話or訪問する
深夜or長時間の勧誘その他の私生活or業務の平穏を害するような方法により困惑させる

か 預かり金返還拒否

契約の申込の撤回を行うに対し,既に受領した預かり金返還を拒否する

き 手付放棄解除の妨害

手付放棄による契約解除をに対し,契約解除を拒むor妨げる
※宅建業法47条の2,施行規則16条の12

3 重要事項説明義務|法定の事項を契約当事者に説明する

『宅建業者』には『重要事項の説明義務』が課せられています。
一定の事項について契約当事者に説明する義務があるのです。
『重要事項』として定められている内容については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|宅建業者・重要事項説明義務|基本|内容・説明する場面・方法

4 宅建業法違反×行政責任|指示処分・業務停止・免許取消

重要事項説明義務違反に対しては,宅建業法上のペナルティの対象となっています。

<宅建業法違反×行政責任>

あ 対象となる違反行為

重要説明義務違反
禁止行為の違反

い 行政責任の内容

ア 指示処分
イ 業務停止
ウ 免許取消

う 行政処分・手続

監督機関が個別的な違反内容に応じて判断する
監督機関=国土交通大臣or都道府県知事
※宅建業法65条,66条
詳しくはこちら|宅建業者に対する監督処分の基本(種類・対象行為)

5 宅建業法違反×刑事責任|法定刑

宅建業法違反は『刑事責任』も規定されています。

<宅建業法違反×刑事責任|法定刑>

あ 無免許・業務停止命令違反

無免許での事業遂行・名義貸し・業務停止命令違反
法定刑=懲役3年以下or罰金300万円以下
併科=あり
※宅建業法79条,12条1項,13条1項,65条2項,4項

い 事実の不告知・不実告知

法定刑=懲役2年以下or罰金300万円以下
併科=あり
※宅建業法79条の2,47条1号

う 高額報酬の要求

法定刑=懲役1年以下or罰金100万円以下
併科=あり
※宅建業法80条,47条2号

え 経済的供与

法定刑=懲役6か月以下or罰金100万円以下
併科=あり
※『い〜え』の違反行為の内容は前記のとおり
※宅建業法81条2号,47条3号
詳しくはこちら|宅建業法違反の刑事責任(刑事罰)の規定

6 刑法違反×刑事責任|法定刑|詐欺罪・横領罪・恐喝罪

宅建業者の不正行為は『刑法』に抵触することもあります。
刑法上の罪名と法定刑について,関連するものをまとめます。

<刑法違反×刑事責任|法定刑>

罪名 法定刑 刑法
詐欺罪 懲役10年以下 246条
業務上横領罪 懲役10年以下 253条
恐喝罪 懲役10年以下 249条

7 宅建業法/刑法違反×刑事責任|手続|逮捕・勾留・起訴・公判

宅建業法違反や刑法に抵触した場合は『刑事手続』の対象となります。
要するに通常の『犯罪』としての扱いです。
事情によっては身柄拘束の対象となります。

<宅建業法/刑法違反×刑事責任|手続>

一般的な刑事手続となる
詳しくはこちら|刑事弁護の手続の流れ|専門弁護士ガイド

8 宅建業法上の『説明義務違反』と『売買契約の有効性』は別である

宅建業法上の重要説明が不十分であった場合の契約の効力をまとめます。

<宅建業法違反×契約の効力>

あ 事案

宅建業法違反の状態で取引=契約締結がなされた
例;重要事項説明がなされないまま売買契約が締結された

い 契約の有効性|基本

宅建業法違反・重要事項説明義務違反を理由として『契約が無効』となるわけではない
民法上の規定により『契約が無効・解消される』ことはあり得る

う 意思表示の瑕疵|民法上の詐欺・錯誤

事情によっては『詐欺取消』『錯誤無効』などが成立する
→契約は解消される
※民法95条,96条

え 損害賠償請求

契約の解消とは別に『損害賠償請求』が認められることもある
※民法709条,415条

契約の解消や損害賠償については別記事で説明しています。
(別記事『契約解消』;リンクは末尾に表示)

9 不動産売買トラブルの解決の実務|民事・行政・刑事責任の関係

一般的な不動産売買のトラブルでは,民事的処理がメインとなります。
つまり,売買契約の解消や損害賠償の獲得が重要であることが多いです。
この場合で『行政・刑事責任』は,サブという位置付けになります。
そのため,弁護士によってはしっかり把握せず,軽視する傾向があるようです。
しかし,実務での解決プロセスでは,あらゆる法的責任を視野に入れた交渉が,有利な解決に結びつきます。
民事的処理だけではなく,刑事・行政責任の追及も含めて最適戦略を検討・選択すべきです。