【借地契約の更新の基本(法定更新・更新拒絶(異議)・更新請求)】

1 借地契約の更新の基本
2 借地契約の更新に関するまとめ
3 借地の期間更新に関する借地借家法・借地法の適用
4 建物が存在する場合の法定更新
5 建物が存在しない場合の法定更新(基本)
6 建物の存在の判断の基準時点
7 建物滅失のケースで例外的に法定更新を認めた判例
8 異議(更新拒絶)のための正当事由(概要)

1 借地契約の更新の基本

借地には合意によって定められた期間,または法律上定められた期間があります。
詳しくはこちら|借地期間|30年→20年→10年|旧借地法は異なる|借地期間不明への対応
ところで,契約の一般論として契約期間が満了した時に契約は終了します。
しかし,借地については,この一般論は大きく修正されています。
原則として更新し,特殊な事情がある場合に限って,例外的に更新しない(終了する)のです。
本記事では,借地契約の更新に関する基本的事項を説明します。

2 借地契約の更新に関するまとめ

最初に,結論を大雑把にまとめておきます。
借地契約は,期間が満了しても,原則として自動的に更新したことになります。これを法定更新といいます。
一方,たとえば地主がその土地を使う必要性が高く,明渡料を支払う,という前提であれば更新を拒絶する,つまり更新せずに契約を終了させることができます。
なお,このように原則として更新するという扱いを避ける方法として,定期借地という契約の形式があります。

<借地契約の更新に関するまとめ>

あ 原則=更新される

法定更新という制度

い 例外=借地契約が終了する

ア 異議(更新拒絶) 地主からの更新拒絶=契約終了
正当事由がある場合に限って認められる
イ 合意解除 地主・借地人が終了に合意すれば終了する

う 定期借地(参考)

定期借地(広義)の契約について
→法定更新の規定が適用されない(期間満了で終了する)
詳しくはこちら|定期借地の基本(3つの種類と普通借地との違い)

3 借地の期間更新に関する借地借家法・借地法の適用

ところで,平成4年に借地法(旧法)は廃止され,新たに借地借家法(新法)が施行されました。では,現在では借地法は適用されないかというとそうではありません。
改正附則で,改正前から続いている借地には借地法が適用されるということになっています。
ただし,借地法と借地借家法で,更新に関する本質的な違いはありません(後述)。

<借地の期間更新に関する借地借家法・借地法の適用>

あ 法律の名称

ア 旧法=借地法イ 新法=借地借家法

い 旧法廃止・新法施行日

平成4年8月1日

う 更新に関する経過措置

施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関して
→なお従前の例による
=『借地法』時代の判例・基準が流用される
※借地借家法附則6条

4 建物が存在する場合の法定更新

どのような状況があると法定更新となるか,ということを説明します。
これについては,借地上に建物が存在するかしないかで扱いが大きく違ってきます。
そこでまず,建物が存在するケースについて説明します。
この場合は,借地人が更新を請求した場合,また,単に,期間が満了しても従前どおりに借地人が借地の使用を継続している場合には,法定更新となります。
地主として,更新を避けたい場合は,異議を述べることになります。通常は更新拒絶といいます。では,地主が更新拒絶をすれば更新せずに契約が終了するかといえば,そうではありません。正当事由が認められない限り更新拒絶は無効です。正当事由はそう簡単には認められないので(後述),実際には基本的に更新するということになります。
以上のことについては,借地法と借地借家法で違いはありません。

<建物が存在する場合の法定更新>

あ 法定更新

借地期間満了の際に,借地人が更新請求をした,または,借地人が土地の使用を継続した場合,法定更新となる

い 地主による異議

地主は異議を述べることができる

う 異議の制限

建物が存在するときは,たとえ地主が異議を述べても,それが正当事由に基づかないかぎり,異議は有効でなく,法定更新が成立する
※借地借家法5条1項,2項
※借地法4条,6条2項
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版(復刻版)』有斐閣2011年p442

5 建物が存在しない場合の法定更新(基本)

次に,建物が存在しないケースで契約が更新となるかどうか,ということを説明します。
まず,借地人からの更新請求はできません。これは借地法,借地借家法で違いはありません。
次に,借地人が借地の使用を継続している場合に,契約が更新となるかどうかを考えます。
借地借家法では,法定更新の規定が適用されず,自動的に契約は終了します。つまり,地主が異議を述べることすら不要ということになります。
借地法では,法定更新の規定が適用されますが,地主は,正当事由がなくても異議を述べることができます。地主が異議を述べることだけすれば契約は終了します。
実質的な違いはないといってよいでしょう。

<建物が存在しない場合の法定更新(基本)>

あ 更新請求

借地人が更新請求をすることはできない

い 使用継続に対する異議

前提=借地人が(建物以外で)土地の使用を継続している

借地法(旧法) 異議には正当事由は不要である(後記「う」) 6条
借地借家法(新法) 法定更新自体がない 5条2項
う 借地法の解釈

(借地法6条について)
借地上に建物がないときには,貸地人が異議を述べさえすれば,法定更新の効果は生じない
※東京地判昭和41年11月30日
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版(復刻版)』有斐閣2011年p442

6 建物の存在の判断の基準時点

以上のように,建物が存在するかしないかで,法定更新となるかどうかに大きな違いが出てきます。
では,建物の存在は,いつの時点で判定するのでしょうか。実は,更新請求土地の使用継続による法定更新のふたつで,少しだけ違いがあります。
更新請求の場合は期間満了時点,土地の使用継続に対する更新の場合には,これに対する地主の異議の時点という解釈が一般的です。

<建物の存在の判断の基準時点>

あ 建物の存在の要件の同質性(前提)

(借地法について)
借地法6条2項(使用継続)の「建物アルトキ」の意味は,借地法4条1項本文(更新請求)の「建物アル場合」というのとほぼ同一に考えてよい
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版(復刻版)』有斐閣2011年p443

い 更新請求における建物存否の基準時点

借地権の存続期間満了時に借地上に建物が存在しないときは,借地権設定当初から引き続き空地であったか,借地期間の途中で従来の建物が滅失・朽廃しないしは人為的に取りこわされ再築がなされなかったかを問わず,借地法4条の更新請求権は発生しない。ただし,かかる場合にも,6条の法定更新制度の適用はある。
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版(復刻版)』有斐閣2011年p398

う 異議における建物存否の基準時点

建物の存否は,借地法6条の場合には,異議申出の時点を基準として,考えらるべきであろう
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版(復刻版)』有斐閣2011年p443

7 建物滅失のケースで例外的に法定更新を認めた判例

以上で説明したように,建物が存在しない場合には,借地法では,地主が異議を述べるだけで(正当事由がなくても)契約が終了します。
しかし,個別的な事情によってこのとおりの結果は不合理といえるケースもあります。
これについて,地主が再築を禁止したために借地人が建物の再築を控えていたという事情から,実際には建物が存在しないのに,存在したのと同じ扱いをした,という判例があります。

<建物滅失のケースで例外的に法定更新を認めた判例>

あ 特殊事例

期間満了近くに建物が滅失した
→借地人が再築を予定していた
→地主が再築を禁止した
→地主が明渡の調停を申し立てた
→調停中に期間満了に至った

い 裁判所の判断

建物が存在するのと同じ扱いにすべきである
更新請求を否定できない(法定更新を認める)
※借地法4条
※最高裁昭和52年3月15日

8 異議(更新拒絶)のための正当事由(概要)

法定更新となる状況の時に,地主がこれを阻止する(契約を終了させる)ためには,異議を述べる必要があります(更新拒絶・前述)。異議を述べるためには,通常は正当事由が必要です。
正当事由とは地主がその土地を利用する必要性や,明渡料の提供など,いろいろな事情によって判断されます。地主にとって大きなハードルといえます。
正当事由の内容については,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理

本記事では,借地の更新に関する基本的事項を説明しました。
実際には,個別的事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地の契約終了や明渡に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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