1 『土地』売買|場所的・環境的要因×土地の『瑕疵』
2 不動産売買×調査・説明義務|一般的事項|公的検査まで
3 不動産売買×調査・説明義務|周辺環境
4 『土地』売買|場所的・環境的要因×説明義務
5 『建物』売買|浸水リスク×責任
6 不動産売買×調査・説明義務|違反→責任
7 不動産売買×過去の浸水|宅建業者の説明義務|行政指導の基準
8 売主の調査・説明義務|周辺環境|いつくかの判例

1 『土地』売買|場所的・環境的要因×土地の『瑕疵』

不動産は『周囲の環境』によって居住の快適性・便利さが大きく異なります。
不動産売買では実際に『場所的・環境的な事情』が問題になることが多いです。
法的な責任としては『瑕疵』と『調査・説明義務違反』があります。
最初に『瑕疵』についての判断基準をまとめます。

<『土地』売買|場所的・環境的要因×土地の『瑕疵』>

あ 場所的・環境的要因|例

『場所的・環境的要因による土地の性状』の例
→浸水しやすい
以下『浸水リスク』を前提に性質の分析を示す

い 性質|土地以外に起因する

対象土地以外の要因による影響が大きい
ア 周囲の土地の宅地化の程度
イ 土地の排水事業の進展具合

い 性質|時間経過により変化する

時の経過による変化も大きい
例;排水の整備・周囲の環境変化

う 性質|価値として評価済み

浸水リスクは,付近一帯の土地全体に共通する
→通常,付近一帯の土地の価格評価に織り込まれる
→冠水被害が生じることは既に考慮・反映済みである

え 結論

場所的・環境的要因(浸水リスク)
→独立して『瑕疵』とは認めない
※東京高裁平成15年9月25日

このように『瑕疵』認定のハードルは結構高いです。
一方『調査・説明義務』についてはこれよりはハードルが低いです。
次に説明します。

2 不動産売買×調査・説明義務|一般的事項|公的検査まで

不動産の売買契約の中心は『対象物(不動産)を譲渡する』というものです。
解釈上,これに加えて付随的に『安全性について調査する義務』も認められています。

<不動産売買×調査・説明義務|一般的事項>

あ 調査・説明義務を負う者

売主・仲介業者
仲介業者は事情によって責任の有無が違う

い 調査義務|原則

ア 予見可能かつ通常の調査で判明する範囲の調査で足りる
イ 公的機関による検査の実施の有無についての調査で足りる
ウ 安全性について独自に調査する必要はない
※大阪地裁平成10年7月29日

う 調査義務|例外=責任が加重される

次の事項については『独自の調査』も行う義務がある
例;買主(候補者)の購入目的・趣旨に関わる事項など
※神戸地裁昭和61年9月3日

なお土地売買での『地盤』に関する調査義務・責任については別に説明しています。
詳しくはこちら|土地売買×地盤沈下・軟弱地盤・液状化|法的責任・判断基準

3 不動産売買×調査・説明義務|周辺環境

特別な事情がある場合は売主の調査・説明義務の解釈も違ってきます。
周辺環境に関する『特別な前提事情』をまずはまとめます。

<不動産売買×調査・説明義務|周辺環境>

あ 前提事情

次のいずれも該当する場合『調査・説明義務』が生じる
ア 近隣の環境変化+対象物件の環境悪化が生じる事情が存在する
イ 売主に『明らかな認識可能性』がある

い 認識可能性|内容

次のいずれかに該当するという意味である
ア 環境悪化の事情を知っていた
イ 簡単な調査により環境悪化の事情を知り得た

う 環境悪化の例|日照系

近隣に高層マンションが建設される事情が存在した
売買対象のマンションの日照・眺望・通風に悪影響が生じる
※札幌地裁昭和63年6月28日

4 『土地』売買|場所的・環境的要因×説明義務

土地の売買時の場所的・環境的要因の説明義務をまとめます。

<『土地』売買|場所的・環境的要因×説明義務>

あ 基本的事項

一定の重要な事項について
→信義則による説明義務が生じる
場所的・環境的要因による土地の性状も対象となる
例;浸水リスク

い 説明義務|知っていた場合

重要な事項を具体的に認識していた場合
→説明義務が生じる

う 説明義務|知らなかった場合

次のすべてに該当する場合に説明義務が生じる
ア 法令上の義務or業界の慣行がある
重大な事態の発生可能性を説明する法的義務or慣行
イ 情報入手の容易性
情報を入手することが現実的に可能である
※東京高裁平成15年9月25日

売主や仲介業者の知っている事情によって説明義務の有無が違うのです。

5 『建物』売買|浸水リスク×責任

『建物』の売買については浸水リスクは大きな問題として扱われます。

<『建物』売買|浸水リスク×責任>

あ 『瑕疵』判断基準|概要

『建物』の性状と言えることが多い
浸水対策の施工・設備の状況・完成度により判断する

い 瑕疵担保責任|主体

ア 売主・建築請負人
『瑕疵』と認められた場合責任を負う
イ 設計者
設計の決定・判断は施主にある
→設計者に最終判断の権限はない
→原則的に責任を負わない
※東京地裁平成15年4月10日

6 不動産売買×調査・説明義務|違反→責任

不動産売買で『調査・説明義務』があるのに不十分だった場合の責任をまとめます。

<不動産売買×調査・説明義務|違反→責任>

あ 法的根拠

債務不履行責任

い 責任の内容

ア 損害賠償責任
『調査or説明義務違反』によって生じた『損害』
イ 契約解除
程度・事情によって解除が認められることもある
※民法415条,541条
※札幌地裁昭和63年6月28日

7 不動産売買×過去の浸水|宅建業者の説明義務|行政指導の基準

『説明義務違反』については民事以外の責任もあります。
仲介業者の行政的な責任に関するものを紹介します。

<不動産売買×過去の浸水|宅建業者の説明義務|行政指導の基準>

あ 説明義務

浸水・冠水リスクが高い場合
ア 物件所在エリアが降雨によって浸水or冠水のおそれがある場合
イ 過去に降雨によって浸水したことがある場合

い 調査義務

明らかに浸水のおそれがない場合以外
対象物件が,降雨によって浸水するリスク
→調査する義務がある

う 不明な場合の対応

浸水or冠水が数年に1回しかない場合
→『浸水or冠水が2,3年に1回あった』と説明する努力義務がある
明確に否定できる場合でなければ説明義務がある

え 違反への対応

『行政指導』の対象となる
→強制的・正式な罰則,という意味ではない
※国交省の見解;非公式ヒアリング

8 売主の調査・説明義務|周辺環境|いつくかの判例

不動産の購入後に周辺環境について想定と違うことに気付くケースは多いです。
このようなトラブルについて,実際に裁判所が判断をした判例が蓄積されています。
いくつかの判例について,別記事で説明しています。
詳しくはこちら|セールストーク×法的責任|環境保証タイプ|眺望・日照・通風・騒音
詳しくはこちら|不動産売買|過去の水害・浸水リスク|判例|瑕疵・調査・説明義務違反