1 境界線付近の建築の制限|基本|境界から50センチ
2 境界線付近の建築の制限|建築中止・変更請求
3 境界線付近の建築の制限×撤去請求|仮処分違反→例外
4 境界線付近の建築の制限×慰謝料
5 境界線付近の掘削の制限

1 境界線付近の建築の制限|基本|境界から50センチ

隣家との建物の距離は居住者にとっては関心が強いものです。
これについて民法上,一定のルールがあります。

<境界線付近の建築の制限|基本>

あ 条文

ア 原則
境界から50センチメートル以上
※民法234条1項
イ 例外
慣習が優先される
※民法236条

い 境界との最短距離の解釈|判例

ア 出窓その他の張出部分
建物の側面と同視すべきである
イ 『屋根のひさし』
距離制限に該当しない
→境界から50センチ以内でも適法
ただし『越境』は違法
※東京高裁昭和58年2月7日
※東京地裁平成4年1月28日

う 他の見解

ア 『ひさしも含む』
イ 境界と建物の土台敷との距離
※参考;小磯武男『近隣紛争の実務 補訂版』p233

原則的に『境界から50センチ』となっています。
そして,建物の一部,についての解釈はいくつか見解があります。

2 境界線付近の建築の制限|建築中止・変更請求

境界からの最短距離に違反する建物建築を止める請求ができます。
しかし,請求期間の制限があります。

<境界線付近の建築の制限|建築中止・変更請求>

あ 建築中止・変更請求

境界からの最短距離に違反している建築がなされている場合
→隣地所有者は『建築中止・変更』を請求できる

い タイムリミットの設定

次のいずれかに該当する場合は請求内容が制限される
ア 建築に着手した時から1年経過後
イ 建物が完成した後

う タイムリミット経過後の制限

建築中止・変更・撤去の請求はできない
損害賠償のみ請求できる
※民法234条2項

3 境界線付近の建築の制限×撤去請求|仮処分違反→例外

原則的に『建物完成後』は違法な建築の中止・撤去を請求できません。
しかし,特殊事情を理由に例外的に撤去請求が認められることもあります。

<境界線付近の建築の制限×撤去請求>

あ 工事中止の仮処分

建設着手から1年以内・建物完成前
隣地所有者から工事中止の要請を受けた
建築工事続行禁止の仮処分決定を受けた

い 仮処分を無視して建築続行

建築を続行し,建物を完成させた

う 裁判所の判断

収去は建築者において高額の収去費用の負担を強いられる
→しかし仮処分を無視したことにより保護しない
→違法建築部分の収去請求を認めた
※最高裁平成3年9月3日

4 境界線付近の建築の制限×慰謝料

境界線付近の建築が違法となることがあります。
通常は『建物が境界に近いこと』により生じる損害が問題となります。
しかし『協議を拒絶した』ことについて違法性を認めた判例もあります。

<境界線付近の建築の制限×慰謝料>

誠意交渉義務違反→慰謝料請求を認めた

あ 事案

隣地所有者A・Bが同時に建物建築を進めていた
AがBに建物と境界との距離保持に関する申し入れをした
Bが無視した

い 裁判所の判断

協議を拒否すべき合理的理由はない
→違法である
→慰謝料請求を認めた
※大阪高裁平成10年1月30日

5 境界線付近の掘削の制限

隣家同士の問題として『掘削の制限』もあります。
境界付近については一定の制限が設定されています。

<境界線付近の掘削の制限>

あ 深め掘削→2メートル

井戸,用水だめ,下水だめ,肥料だめを設置する場合
→境界から2メートル以上の距離

い 浅め掘削→1メートル

池,穴蔵,し尿だめを設置する場合
→境界から1メートル以上の距離
民法237条1項