1 化学物質過敏症|一般的定義|責任の判断の一環となる
2 化学物質過敏症|病態分類|大きく2つに分類できる
3 化学物質過敏症の病型分類|医学的な細かい分類
4 狭義のシックハウス症候群|建材からのホルムアルデヒドが典型例
5 化学物質過敏症|U.S.A.・診察基準|法的責任の判断における参考
6 化学物質過敏症|診断の特徴=誤診される傾向がある

1 化学物質過敏症|一般的定義|責任の判断の一環となる

『化学物質過敏症』にかかる被害を受け,責任問題となるケースがよくあります。
本記事では『化学物質過敏症』そのものについて説明します。
法的責任に関しては別記事にまとめてあります(リンクは末尾に表示)。
最初に『化学物質過敏症』の定義をまとめます。

<化学物質過敏症|一般的定義>

あ 化学物質への接触

次のいずれかに該当する
ア 大量の化学物質に接触し急性中毒症状が発現した
イ 有害・微量な化学物質に長期にわたり接触した

い 再度の接触

『あ』の後に,少量の同系統の化学物質に再度接触した

う 症状の発生

『い』の際に,次のような非常に多くの症状をもたらす疾患

え 症状|例

アレルギー様症状,自律神経系症状,精神心理症状
消化器症状,呼吸器症状,循環器症状
免疫・内分泌・感覚・ 運動系症状
※石川哲ほか『化学物質過敏症診断基準について』日本医事新報No.3857p25〜29

2 化学物質過敏症|病態分類|大きく2つに分類できる

『化学物質過敏症』は大きく2つに分けられます。

<化学物質過敏症(Chemical Sensitivity)|病態分類|大別>

あ シックハウス症候群(狭義)
い 多種化学物質過敏症

Multiple Chemical Sensitivity;MCS

実務上,法的責任が主張されるのは『シックハウス症候群』が多いです。
それ以外の『多種化学物質過敏症』による法的責任が生じるケースもあります。
この2つは共通することも多いです。

3 化学物質過敏症の病型分類|医学的な細かい分類

『化学物質過敏症』の専門的な病型分類も紹介します。

<化学物質過敏症の病型分類>

あ Exposure(暴露)
ア acute(急性)

・specific(特定物質)Eas
・multiple(多種物質)Eam
イ chronic(慢性)
・specific(特定物質)Ecs
・multiple(多種物質)Ecm
ウ specific(特定物質)

い Inducers(誘因)

ア 通常
threshold(閾値型)Ist

hypersensitivity(過敏型)Ish
イ multiple(多種物質)
threshold(閾値型)Imt
hypersensitivity(過敏型)Imh

この分類自体は,法的な責任と直結するわけではありません。
とにかく『ある原因物質が特定の症状を生じさせる』メカニズムは種類が多いです。
この前提知識が不足していることが『誤診』につながっているケースも多いのです(後述)。

4 狭義のシックハウス症候群|建材からのホルムアルデヒドが典型例

協議の『シックハウス症候群』の定義をまとめておきます。

<狭義のシックハウス症候群>

あ 原因

特定化学物質への慢性暴露

い 再発

一定耐用量(閾値)を越える当該特定化学物質への再接触
→発症する

う 典型例

主として建材に含まれる化学物質が原因となる

え 病型分類

特定物質・閾値型=『Ecs・Ist』型
=慢性蓄積中毒である
過敏性疾患とは本質的に異なる

具体的な典型例は建材からのホルムアルデヒドの放出に起因するものです。

5 化学物質過敏症|U.S.A.・診察基準|法的責任の判断における参考

米国では,化学物質過敏症の診断基準が設定されています。
日本で,法的責任を判断する上で参考として活用できるものです。

<化学物質過敏症|U.S.A.・診察基準>

ア 症状は,化学物質への暴露により再現する
イ 慢性の経過を示す
ウ 低レベルの暴露量により症状が出現する
以前はor通常では何らの症状を示さない
エ 症状は原因物質の除去で改善or軽快する
オ 化学的に無関係な多種類の化学物質に反応を示す
カ 症状は多種類の器官系にまたがる
※石川哲『多種化学物質過敏症』臨床環境医学9巻2号p89〜94

6 化学物質過敏症|診断の特徴=誤診される傾向がある

化学物質過敏症の実際の診断の場面での特徴・注意をまとめます。

<化学物質過敏症|診断の特徴・誤診>

あ 誤診が多い

ア 精神的原因と誤診される傾向がある
イ 潜在的な患者が多数存在するものと推測される

い 疾患概念・疾患単位としての認識不足

ア 疾患概念が確立していない
イ 一般臨床医には疾患単位として認識されていない
※古川俊治『慶應法学No.1』慶應義塾大学大学院法務研究科p73

『化学物質過敏症』であると『医師が思い当たらない』というケースもあります。
当然,この初期段階での医師の診断結果は法的責任の判断に大きく影響することが多いです。
初期段階からしっかりした対応をすることが適正な責任判断につながるのです。