1 信頼関係破壊理論|判例の事案・争点
2 信頼関係破壊理論|判例の結論・基準
3 信頼関係破壊理論|主要3ポイント
4 背信行為論|判例|増改築禁止特約違反
5 背信行為論|判例|無断譲渡・転貸
6 背信行為論|信頼関係破壊理論と同質である
7 信頼関係破壊理論×催告なし解除|理論
8 信頼関係破壊理論×催告なし解除|判例
9 信頼関係破壊理論の具体例

1 信頼関係破壊理論|判例の事案・争点

賃貸借の解除に関して,判例上『信頼関係破壊理論』があります。
まずは信頼関係破壊理論の背景となる事情=争点,についてまとめます。

<信頼関係破壊理論|前提となる事案・争点>

あ 事案

賃借人に用法遵守義務違反や賃料滞納があった
賃貸人は『契約の解除』を主張している
(別記事『賃貸借契約の解除・種類』;リンクは末尾に表示)

い 争点

賃借人にルール違反があったのは確かである
しかし『解除』という結果は重すぎる・バランスを欠く
解除を否定できないか

2 信頼関係破壊理論|判例の結論・基準

『信頼関係破壊理論』の判例の結論をまとめます。
要するに,適用される条件=要件と効果の部分です。

<信頼関係破壊理論|判例の結論>

あ 解除の制限

『当事者間の信頼関係が破壊された場合』に限って解除が認められる

い 『信頼関係の破壊』の基準=要件

『賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為』

う 解除の効果

将来に向かって契約が終了する
※最高裁昭和27年4月25日
※最高裁昭和39年7月28日;賃料不払
※最高裁昭和47年11月16日;用法違反・信義則上の義務違反
※最高裁昭和50年2月20日

3 信頼関係破壊理論|主要3ポイント

信頼関係破壊理論の効果の特徴を3つのポイントとしてまとめます。

<信頼関係破壊理論|主要3ポイント>

あ 解除の制限

信頼関係破壊に至っていない場合は解除が認められない

い 『催告』を不要とする

債務不履行解除の場合は『催告』が必要
→『信頼関係破壊理論による解除』では不要となる
『無断譲渡・転貸による解除』では元々催告は不要である

う 『債務不履行』がなくても解除ができる

『債務不履行』未満でも『信頼関係破壊』に該当すれば解除できる
主要な例=特約の禁止事項違反
(別記事『賃貸借契約の解除・種類』;リンクは末尾に表示)

4 背信行為論|判例|増改築禁止特約違反

賃貸借の解除に関して『背信行為論』という理論もあります。
判例の事例を紹介します。

<背信行為論|判例|増改築禁止特約違反>

あ 事案

土地の賃貸借
増改築禁止特約があった
借地人はこの特約を無視して建物増改築を行った

い 解除の制限

『背信行為』に該当しない
→解除権の行使は認めない
※最高裁昭和41年4月21日

5 背信行為論|判例|無断譲渡・転貸

背信行為論の判例として,上記とは別の事例もあります。

<背信行為論|判例|無断譲渡・転貸>

あ 無断譲渡・転貸|原則論

無断譲渡・転貸があった場合
→賃貸人は契約を解除できる
※民法612条2項

い 解除の制限

『背信行為と認めるに足りない特段の事情』がある場合
→解除権は発生しない
※最高裁昭和28年9月25日

6 背信行為論|信頼関係破壊理論と同質である

上記の2つ判例では背信行為論が使われています。
この点,前述の『信頼関係破壊理論』と実質的に同じと言えます。

<背信行為論|信頼関係破壊理論との同質性>

『背信行為論』は『解除を制限する』という効果を生じる理論である
→解除の制限という部分で『信頼関係破壊理論』と同類である

7 信頼関係破壊理論×催告なし解除|理論

信頼関係破壊理論は,解除を制限する機能があります(前述)。
一方,積極的に解除を認める効果・機能もあります。
『債務不履行による解除』とは別のものとして解除できるという理論です。

<信頼関係破壊理論×催告なし解除|理論>

あ 『債務不履行』に該当しなくても解除可能

本質的な『債務』以外の行為も解除の原因となる
→『債務不履行』未満でも『信頼関係破壊』に該当すれば解除できる
主要な例=特約の禁止事項違反

い 催告が不要

信頼関係破壊理論による解除の場合
→『催告』は不要である
『無催告解除特約』の有無とは関係がない
※最高裁昭和27年4月25日
※最高裁昭和42年3月30日
※最高裁昭和50年2月20日
※山本敬三『民法講義4−1』有斐閣p474

う 比較;債務不履行解除

債務不履行解除では『債務』の不履行+『催告』が必要である
※民法541条

8 信頼関係破壊理論×催告なし解除|判例

信頼関係の破壊を理由とする解除について具体的事例を紹介します。

<信頼関係破壊理論×催告なし解除|判例>

あ 長期間の賃料不払い

約9年10か月間賃料の支払いがなかった
賃借人が『賃貸借関係』自体を否定していた
→不信行為である
→無催告で解除できる
※最高裁昭和49年4月26日

い 建物賃貸借・失火発生

賃借人の失火により建物が焼損した
→信頼関係が破綻した
→無催告で解除できる
※最高裁昭和47年2月18日

信頼関係破壊理論は『催告が不要となる』以外の特徴もあります。
詳しくはこちら|信頼関係破壊理論・背信行為論|基本事項|基準・主要な3効果

9 信頼関係破壊理論の具体例

実際に信頼関係破壊理論の適用の判断がなされた判例はいくつもあります。
これについては別記事でまとめています(リンクは末尾に表示)。