【トレーラーハウス|建築基準法の建造物に該当するか】

1 建築制限により『建物建築不可』→駐車場・資材置場くらいにしか使えない
2 建築制限があっても『トレーラーハウス』であれば設置可能
3 トレーラーハウスでも『固定性』が強いと『建築物』扱いとなる
4 トレーラーハウスは災害復興で活躍した例がある

1 建築制限により『建物建築不可』→駐車場・資材置場くらいにしか使えない

使い勝手の良い土地があっても,建築基準法その他の規制により,建物を建築できない,というケースはあります。
接道義務に適合していないなど,建築基準法に反していると,建築確認が下りないのです。
※建築基準法6条
詳しくはこちら|接道義務・接道要件|但し書き道路・協定道路
違反した建築物については除却を含めた措置が取られます。
※建築基準法9条
このような場合,駐車場や資材置き場など,建物を建築しない用途で使うくらいしかできないことになります。
では,居住用や店舗営業ができないかと言うと,そうではありません。

2 建築制限があっても『トレーラーハウス』であれば設置可能

建築基準法上の『建築物』に当たらないモノであれば設置できます。
1つの典型的な方法はトレーラーハウスの設置です。
キャンピングカーと呼ばれるものと同類です。
トレーラーハウスは車両の1種であり,原則として,建築物とは言えないでしょう。
ですから,建築基準法による規制を受けないのです。

3 トレーラーハウスでも『固定性』が強いと『建築物』扱いとなる

豪華なトレーラーハウスによって,一般の建物以上,という居住スペースを確保する事例が以前流行りました。
そうすると,建築物の規制の脱法となってしまいます。
そこで『建築物』の解釈について,公的見解がいくつか出されるに至りました。

<トレーラーハウス×建築物|判断基準>

随時かつ任意に移動できるかどうか

<『建築物』判断要素>

あ 規模

床面積・高さ・階数

い 形態
う 設置状況

固定された配管・配線の有無
次のようなライフライン
ア 給排水イ ガス・電気ウ 固定電話

え 移動の支障となる設備の有無

ア 階段イ ポーチ・ベランダ・テラス ※平成9年3月31日付住指発第170号『トレーラーハウスの建築基準法上の取扱いについて』
※昭和62年12月1日住指発第419号『トレーラーハウスに関する建築基準法の取扱いについて』
※平成14年全国建築主事行政会議『トレーラーハウスの取り扱いについて』

4 トレーラーハウスは災害復興で活躍した例がある

意外なところでトレーラーハウスは活躍しています。
東日本大震災からの復興で大活躍しています。

宮城県石巻市では,復興商店街ホットランドが震災後スピーディーにオープンしました。
そのキーとなったのがトレーラーハウスです。
周囲が,物資不足・流通のダメーヂにより建物建築が遅れているのを尻目に,平成23年7月には営業を開始しました。
雇用創設だけではなく,復興への熱意を喚起するなど,多くの意味で活躍しました。
このように,建築基準法の規制とは関係なく,トレーラーハウスが活躍することもあります。

<トレーラーハウスの活躍例>

あ 建物を建てられないような場所に設置

建築基準法等の規制により建築物の建築ができない場所

い スピーディーな営業(運営)

ア すみやかに開業したい場合イ すみやかに居住したい場合 →被災地等,建築業者・材料が不足しているエリア

う 場所の利用が暫定的・期間限定の場合

ア 一時利用の土地賃貸借の場合イ 定期借地等で,残り期間が短い場合ウ アンテナショップのように試験的に出店する場合エ 出店費用,撤退費用を抑えたい場合

条文

[建築基準法]
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条  建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
一  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの
二  木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
三  木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
四  前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 (平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物

(違反建築物に対する措置)
第九条  特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
2~15(略)

判例・参考情報

(通達1)
[建設省住指発第170 号]
トレーラーハウスのうち、規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況(給
排水、ガス・電気の供給又は冷暖房設備、電話等の設置が固定された配管・配
線によるものかどうか、移動の支障となる階段、ポーチ、ベランダ等が設けら
れているかどうかなど)等から判断して、随時かつ任意に移動できるものは、
建築基準法第2条第1号に規定する建築物には該当しないものとして取り扱う
こと。

(通達2)
[トレーラーハウスの取り扱いについて;平成14年全国建築主事行政会議]
トレーラーハウス(起動装置を備えない車両で、自動車等により目的地まで牽引し、住宅・事務所・店舗等として使用するもの(屋内的用途として認められるもの))のうち、次のいずれかに該当するものは、法第2条第1号の建築物として取り扱うものとする。
なお、設置時点では建築物に該当しない場合であっても、その後の維持管理の結果として次のいずれかに該当するに至った場合は、その時点から建築物として扱う。
1.トレーラーハウスの移動に支障のある階段・ポーチ・ベランダ・柵等があるもの。
2.給排水・ガス・電気・電話・冷暖房等のための設備配線配管をトレーラーハウスに接続する方式が、着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)でないもの。
3.その他、トレーラーハウスの規模(床面積・高さ・階数等)・形態・設置状況等から、随時かつ任意に移動できるとは認められないもの。

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