【公衆用道路の優遇措置|固定資産税・都市計画税・不動産取得税|地目変更】

1 登記の地目『公衆用道路』は現状を示し,固定資産税や通行権とは無関係
2 登記上『公衆用道路』でも誰でも利用できるわけではない
3 固定資産税,登記における『公衆用道路』はそれぞれ税の優遇措置が適用される
4 公衆用道路×固定資産税・不動産取得税
5 地目を『公衆用道路』に変更するためには登記申請を行う
6 公衆用道路認定申請により,固定資産税上『公衆用道路』に変更される
7 『公衆用道路』となっても市区町村が道路の管理を行うわけではない
8 地区町村に『寄付』する手続|寄付採納承認申請

1 登記の地目『公衆用道路』は現状を示し,固定資産税や通行権とは無関係

(1)地目は現況を示すに過ぎない

登記の表題部地目という項目(フィールド)があります。
この内容は,その土地の現状を示すものです。
『土地の主な用途により・・・定める』とされています。
不動産登記規則99条において,『地目』は21種類が規定されています。
その1つである『公衆用道路』は,あくまでも実際の利用状況を反映させたものです。
不動産登記事務取扱手続準則68条において『一般交通の用に供する道路』と規定されています。
簡単に言えば次のようになります。

<登記の地目における『公衆用道路』の意味>

・建物その他の建造物が存在しない
・住宅等の建物敷地へのアクセス(通行)に使われている

(2)地目固定資産税通行権とは関係しない

『公衆用道路』を国語的に考えると,誰でも通行できるとか土地の税金がかからないという発想が生まれます。
しかし,次の各事項は理論的には直接リンクしていません。

<『公衆用道路』|異なる語法・意味>

ア 登記上の『地目』が『公衆用道路』であるイ 固定資産税上の『公衆用道路』ウ 通行権(者)エ 建築基準法上の『道路』

2 登記上『公衆用道路』でも誰でも利用できるわけではない

登記上『公衆用道路』となっている土地の利用権は,登記とは関係なく,純粋な民法のルールで考えます。
当然ながら,所有者共有者は,まさに土地を利用できる人,ですから,通行可能です。
次に,所有者から通行を許可された者も当然利用可能です。
よくある形態は,賃貸借契約通行地役権設定契約を締結する方法です。
なお,例外的に契約しなくても通行できる囲繞地通行権もあります。
※民法210条~
さらに,2地点(以上)の別の公道をつないでいる(貫通している)私道で,永年不特定多数の人が一般的な道路として使っている,というような場合は,既成事実が尊重され,結果的に誰もが通れる状態として扱われる場合もあります。
『登記の地目』ではなく,建築基準法上の『位置指定道路』となっている場合は扱いが大きく異なります。
詳しくはこちら|私道×第三者の通行権|原則=NG・例外=長期間の公衆交通

3 固定資産税,登記における『公衆用道路』はそれぞれ税の優遇措置が適用される

(1)固定資産税上の『公衆用道路』

固定資産税上『公衆用道路』という扱いであれば,固定資産税・都市計画税不動産取得税が非課税となります。

(2)登記上の『公衆用道路』

また,登記上『公衆用道路』であれば,所有権移転登記を行う際の登録免許税が減額されます。

<登記上『公衆用道路』の場合の登録免許税減額>

あ 対象登記

次の所有権移転登記
・相続(遺産分割)
・売買

い 登録免許税の減額

ア 原則 課税価格を固定資産税評価額の30%とする
=70%引き
イ 例外 固定資産税評価額=ゼロ,の場合
→隣接する土地の固定資産税評価額を用いる

4 公衆用道路×固定資産税・不動産取得税

固定資産税上の『公衆用道路』の特別な扱いをまとめます。

<公衆用道路×固定資産税・不動産取得税>

あ 固定資産税など

固定資産税上の『公衆用道路』として認められた場合
→対象土地の固定資産税・都市計画税が非課税となる
※地方税法348条2項5号,702条の2

い 不動産取得税

『公衆用道路』の所有権移転があった場合
→不動産取得税が非課税となる
※地方税法73条の4第3項

固定資産税と連動して不動産所得税も非課税になるのです。

5 地目を『公衆用道路』に変更するためには登記申請を行う

(1)地目の変更は法務局が職権でも行える

地目は,土地についての表示の登記の1項目です。
不動産登記法上,法務局が自ら登記を変更することができることになっています。
これを職権登記と言います。
しかし,一般的には職権登記は行われません。

(2)地目変更申請を行うと,調査→変更登記がなされる

当事者(所有者)から法務局に地目変更登記申請,を行うことができます。
すると,法務局の職員(登記官)が,現地を調査,確認した上,登記の変更を行います。
ただし,申請書や添付書類で現状が十分に把握できる場合は,調査は省略されます。
※不動産登記法29条

6 公衆用道路認定申請により,固定資産税上『公衆用道路』に変更される

(1)『公衆用道路』は,登記と固定資産税の2つの制度で別個のもの

『公衆用道路』という言葉は,登記上(法務局)と固定資産税評価上(地区町村)の2種類の意味があります(前述)。
登記上で『公衆用道路』になっても,固定資産税評価上では自動的に『公衆用道路』に変更にはなりません。
そこで,登記とは別に,固定資産税上『公衆用道路』として認定する手続を取ってもらう必要があります。

(2)市区町村に公衆用道路認定申請を行うと,固定資産税上の扱いが変更となる

そのためには市区町村に,公衆用道路認定申請を行います。
役所によってネーミングが異なる場合もあります。
この申請があると,市区町村の職員が現状を確認した上,不特定多数の者が利用できる状態であれば,『公衆用道路』として認定します。

(3)公衆用道路認定申請では分筆登記は不要

なお,以前は分筆登記をしていないと公衆用道路認定申請を受け付けないという扱いがありました。
しかし,最近は分筆登記をしていなくても対象部分が図面で特定できれば受け付けるという傾向にあります。

7 『公衆用道路』となっても市区町村が道路の管理を行うわけではない

<発想>

私道を持っている
公衆用道路になれば,市が舗装などのメンテナンスをしてくれるのか

固定資産税上『公衆用道路』に変更されても,と管理業務とは無関係です。
私有に変わりはないので,地区町村が管理を行うというわけではありません。
例えば,舗装歩道,排水溝の設置などの積極的な管理的業務は,原則的に行なわれません。

8 地区町村に『寄付』する手続|寄付採納承認申請

私道の所有権自体を市区町村に移転する方法もあります。
『寄付』という制度です。
ただし『寄付』には一定の審査があり,拒否されることもあります。
『寄付採納申請』という手続が必要なのです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|地方自治体への寄付|寄付採納申請|審査の条件|行政の無過失責任

共有不動産の紛争解決の実務第2版

使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記・税務まで

共有不動産の紛争解決の実務 第2版 弁護士・司法書士 三平聡史 著 使用方法・共有物分割の協議・訴訟から登記、税務まで 第2班では、背景にある判例、学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補! 共有物分割、共有物持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続きを上手に使い分けるためこ指針を示した定番書!

実務で使用する書式、知っておくべき判例を多数収録した待望の改訂版!

  • 第2版では、背景にある判例・学説の考え方を追加して事例検討をより深化させるとともに、改正債権法・相続法が紛争解決に与える影響など最新の実務動向を丁寧に追録して大幅改訂増補!
  • 共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分けるための指針を示した定番書!
  • 他の共有者等に対する通知書・合意書、共有物分割の類型ごとの訴状、紛争当事者の関係図を多数収録しており、実務に至便!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【離婚要因の『有責』は親権者の判断には関係しない】
【競売の買受人は引渡命令申立ができる】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00