1 地代の相場|総合方式|裁判・鑑定では4つの算定方式を組み合わせる
2 地代の相場|総合方式に関する判例
3 地代の相場|総合方式の内容『主要4方式』がブレる判例もある
4 継続賃料の『鑑定』|裁判所が鑑定結果を排斥するレアケースもある
5 地代の相場|総合方式|考慮事項のまとめ
6 継続賃料の総合方式の『組み合わせ』|実務的な算定方法
7 地価減少時の継続地代→総合方式の『組み合わせ』にアレンジが必要

本記事では,地代・継続賃料の公的・正式な『総合方式』という算定方法について説明します。
その前提となる主要な4つの『算定方法』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|地代・継続賃料|主要算定方法|差額配分法・利回り法・賃貸事例比較法・スライド法

1 地代の相場|総合方式|裁判・鑑定では4つの算定方式を組み合わせる

実際に裁判所や不動産鑑定士の鑑定で公的に評価する方法を説明します。
最終的・強制的な算定方法です。
さかのぼって,交渉における『基準』にもなります。

<相当(適正)賃料の算定>

『総合方式』
主要な4つの算定方式を組み合わせる
※多くの判例

2 地代の相場|総合方式に関する判例

まずは『算定方式の組み合わせ』に関して判断した判例をまとめます。

<賃料算定の『総合方式』に関わる判例>

あ スライド方式『のみ』の否定

スライド方式が相当賃料を算定し得る唯一の方式ではない
※最高裁昭和40年11月30日

い 利回り方式を『原則』とすることの否定

利回り方式も相当賃料を算定し得る原則的な方式ではない
※最高裁昭和43年7月5日

う サブリース契約における総合方式の採用

サブリース契約の減額請求の審理において総合方式を採用した
※最高裁平成15年10月21日

3 地代の相場|総合方式の内容『主要4方式』がブレる判例もある

総合方式は『主要な4つの算定方法』を組み合わせるものです。
判例の中には『主要な4つ』以外も含める,というものもあります。

<『主要4方式の総合方式』を排斥したケース>

あ 鑑定人による『鑑定』の根拠

収益還元法・賃貸事例比較法・スライド法・差額配分法

い 裁判所の判断

『鑑定』結果は採用できない
『土地残余法』も調査すべきである
※東京高裁平成14年10月22日

これは特殊なもので一般的なものではありません。
『ブレ』とも言えるもので,再現可能性は低いです。
基本的には『主要4方式』が組み合わせの対象となっています。

4 継続賃料の『鑑定』|裁判所が鑑定結果を排斥するレアケースもある

裁判所が不動産鑑定士に『鑑定』を依頼し,継続賃料の『鑑定』が行われることがあります。
一般的には『鑑定結果』は中立・公正なものとして尊重されます。
しかし,理論的には裁判所は鑑定結果を独自に評価・判断することができます。
実際に裁判所が鑑定結果を否定することもあります。
前述の判例がまさにその具体例です。
『鑑定』には一定のウィークポイントがあるのです。

<継続賃料の不動産鑑定評価理論|ポイント>

あ 理論について

内部でも論争がある

い 前提事実について

裁判所の『事実認定』よりも粗い
『確認』という方法

ただ,裁判所が鑑定結果を排斥するのはレアケースです。

5 地代の相場|総合方式|考慮事項のまとめ

地代算定の『総合方式』の内容について,判例が示しているものをまとめます。

<賃料算定における考慮事項を明示した判例>

あ 考慮事項の列挙

ア 請求当時の経済事情
イ 従来の賃貸借関係
特に賃貸借の成立に関する経緯
ウ その他諸般の事情

い 判断基準・方法

具体的事実関係に即し,合理的に定めることが必要である
※最高裁昭和44年9月25日

6 継続賃料の総合方式の『組み合わせ』|実務的な算定方法

継続賃料(地代・家賃)の公的な算定方式は『総合方式』です(前述)。
実際には『組み合わせ方法』がハッキリした単純な公式で示せるわけではありません。
そこで大幅に要約した,実務的な『組み合わせ方法』をまとめます。

<継続賃料|実務的な算定方法>

あ 算定方式の類型化
継続試算賃料算定方式 考慮の程度・位置付け
利回り法 メイン
差額配分法 メイン
スライド法 『斟酌』する
賃貸事例比較法 あまり開差がない範囲にする
い 個別事情の考慮

(『あ』を基礎にしつつ)
事案の客観的・主観的な個別事情を総合的に検討する
※山本和敏『賃料増額訴訟における相当賃料の算定』実務民事訴訟講座4巻p152
※澤野順彦『判例にみる地代・家賃増減請求』新日本法規出版p82
※『不動産訴訟の実務 6訂版』新日本法規p757〜

なお,もっと簡略化して『目安』を知りたい場合の『簡略版』は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|地代・継続賃料の相場|簡易算定|公租公課倍率法・平均的活用利子率法

7 地価減少時の継続地代→総合方式の『組み合わせ』にアレンジが必要

前述の『継続賃料の総合方式の組み合わせ』は,基本的・原則的なものです。
算定方法全体が『地価が上昇している』場合の『継続賃料アップ』に最適化されたものです。
算定方法が考案された時から一転して『想定外の地価下落』が生じています。
その場合は『総合方式における算定方法の組み合わせ』は原則どおりだと不合理が生じます。
アレンジの方向性をまとめます。

<地価減少時における継続地代の評価|まとめ>

区分 算定方式 適合性
主要 利回り法 不合理
主要 差額配分法 不合理(※1)
主要 スライド法 適合
主要 賃貸事例比較法 適合
簡略版 公租公課倍率法 適合
簡略版 平均的活用利子率法 適合

※鵜野和夫『不動産の評価・権利調整と税務』清文社p596
※1 正常支払賃料が上限となる

実務上,このような『特殊事情によるアレンジ』が見過ごされるケースが散見されます。
要するに原則論以外を知らない調停委員・弁護士もいるようです。
しっかりとした主張ができるかどうかで結果が大きく違ってくることもあるのです。