【借地権の下取の代金相場と契約の形態(自由解除条項・介入権行使時の差額分配率)】

1 借地権の下取|スピーディーに現金化・離脱|代金は低くなる
2 借地権の下取|地主の協力がない場合→エンドユーザーに売れない
3 借地権の下取|地主の協力がない場合の『下取契約』の形態
4 借地権の下取|地主の協力なし|自由解除条項・介入権行使時の『差額』分配率
5 借地権の下取|地主の協力なし|解除条項・介入権『差額』分配の設定相場

1 借地権の下取|スピーディーに現金化・離脱|代金は低くなる

借地権を『第三者』に売却することがあります。
その中でも『特に急いで売却する=借地関係から離脱する』というニーズもあります。
このような場合は,通常の『買い手探し』ではなく『下取業者』への売却という方法があります。
最初に『下取業者への売却』の条件と相場のまとめを示します。

<借地権の卸売(下取)|前提条件・相場のまとめ>

あ 共通する条件

土地(底地)に担保権設定がない

い 『地主の協力』の有無×下取価格の相場
地主の協力 コスト・手続 代金相場
あり 承諾料などのコストは売主負担 借地権の取引相場の2割引
なし 裁判所の非訟手続を用いる 坪10〜20万円程度(※1)

※1 売買契約のタイプは2つあるが代金相場に違いはない

上記の『地主の承諾』の内容をまとめます。

<地主の協力>

あ 譲渡承諾+建替承諾
い 担保権設定承諾(書)

2 借地権の下取|地主の協力がない場合→エンドユーザーに売れない

借地権の売買(下取)においては『地主の承諾』が非常に重要です。
買い取る下取業者の立場を考えると分かります。
この部分の現象・影響を整理します。

<地主の協力がない場合の現象>

あ 銀行系金融機関の融資

買主に融資を行う金融系金融機関がほとんどない
→購入できるエンドユーザーがほぼ皆無

い ノンバンクの融資

融資するノンバンクもあるが,金利が高い
→高い金利の融資を受けて買うエンドユーザーはほぼ皆無

う 下取業者の立場

購入した後に『売れない=デッドロック』リスクが高い

3 借地権の下取|地主の協力がない場合の『下取契約』の形態

地主の協力がないと『購入する』ことのメリットが非常に小さくなります。
しかし下取業者は一定の契約形態で購入しています。

<地主の協力がない場合の下取|リスクと代金相場>

あ 契約形態

通常の停止条件付売買契約
『売買予約契約』とすることもある

い 下取業者の最大のリスク

『地主が介入権を行使しない+地主が土地に抵当権を設定した』場合
→『売却できない=デッドロック資産』となる
=自費で建物を建てて『建物賃貸』をする,というくらいしかなくなる

う 代金相場・目安

坪10〜20万円が目安
一般的な交渉で地主が買い取る場合の金額としてこの程度を提示することがある

4 借地権の下取|地主の協力なし|自由解除条項・介入権行使時の『差額』分配率

地主の協力がない状態で下取業者が借地権を買い取る場合の細かい設定を説明します。
設定の中で重要なのは『自由解除条項』と『介入権行使時の差額の分配』です。

<地主の協力がない場合の下取|設定項目>

あ 自由解除条項

『買主(下取業者)が自由に解除できる』という条項
『白紙撤回』という意味

い 『地主の介入権』

裁判所の非訟手続で,地主が『優先的に借地を買い取る』権利・手続
介入権によって地主が買い取る場合『時価=一般的な借地権相場』となる
ディスカウントなしの『定価』と言うべき金額となる
『強制的・優先的』に買い取れる代わりに『高い』という状態
『下取業者の買値』よりも『高い』→『差額』が生じる

『介入権』については別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|借地権優先譲受申出(介入権)の基本(趣旨・典型例・相当の対価)

5 借地権の下取|地主の協力なし|解除条項・介入権『差額』分配の設定相場

借地権を下取業者が買い取る場合の上記2項目の設定は,ある程度の相場があります。
標準的・平均的なものをまとめます。

<地主の協力がない場合の下取|2タイプ>

自由解除条項 地主の介入権行使時
なし 『差額』の全額を下取業者が取得
あり 『差額』は売主・下取業者で折半

リスクとリターンの組み合わせをバランスさせているのです。
当然『買取代金額』を含めて,もっと別の組み合わせもあり得ます。

本記事では,借地権の下取りという方法と下取りの金額の相場について説明しました。
実際には,個別的な事情によって代金額は大きく変わってきます。
みずほ中央法律事務所では,多くの制度の特徴を把握していますので,個別的な事情から最適な方法を選択することを徹底しています。
実際の借地権の処分(売却)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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