1 囲繞地通行権の公示は必要ない・登記なしで対抗できる
2 『無償』の囲繞地通行権は『囲繞地の取得者にも主張できる
3 『袋地』でない状態になったら囲繞地通行権は消滅する|公道に通じた場合
4 袋地の借地人囲繞地通行権を主張,利用できる

囲繞地通行権の生じる要件など,基本的なことは別記事にて説明しています。
詳しくはこちら|囲繞地通行権|袋地の所有者は囲繞地を通行できる・通行料
本記事では,囲繞地通行権の『主張の可否』『消滅』などの面についてだけ説明します。

1 囲繞地通行権の公示は必要ない・登記なしで対抗できる

『囲繞地通行権』の公示に関して,判例の理論をまとめます。

<囲繞地通行権の公示>

あ 登記

『囲繞地通行権』の登記はできない

い 対抗関係

『袋地についての所有権移転登記』がなくても囲繞地通行権を主張できる
主な主張相手=囲繞地所有者
※最高裁昭和47年4月14日

『囲繞地通行権』という権利としての登記は制度的に存在しないのです。
ところで『囲繞地通行権』は『袋地の所有権』の内容の1つ,と位置付けられています。
そうすると『袋地の所有権登記』が『囲繞地通行権の対抗要件』という発想になります。
しかし,判例上『登記がなくても主張可能』とされているのです。

2 『無償』の囲繞地通行権は『囲繞地の取得者にも主張できる

土地の分筆などの事情により『残余地に無償の囲繞地通行権』が生じることがあります(民法213条)。
詳しくは別記事にて説明しています(リンクは冒頭記載)。
その後囲繞地が譲渡された場合の『譲受人=新所有者』との関係についていくつかの見解があります。

<無償の囲繞地通行権×囲繞地の譲渡>

無償の囲繞地通行権
→囲繞地の特定承継人(取得者)にも主張できる
※最高裁平成5年12月17日
※最高裁平成2年11月20日
※最高裁昭和37年10月30日

3 『袋地』でない状態になったら囲繞地通行権は消滅する|公道に通じた場合

囲繞地通行権は,一定の客観的な状態になったら発生するものです。
逆に,いったん囲繞地通行権が『発生』しても『公道に通じた』場合は解消・消滅します。

<囲繞地通行権の『消滅』する場合>

あ 袋地が事後的に『公道と接した』場合

※大阪地裁昭和58年5月26日

い 公道に接する土地の所有者が,隣接する『袋地』を買った場合

→この時点で『公道に通じる』
※東京地裁昭和31年12月17日

4 袋地の借地人囲繞地通行権を主張,利用できる

<事例設定>

袋地について,所有者が第三者Aに貸している
実際に使用しているAは囲繞地通行権の主張をすることができないのか

『袋地の所有者』が囲繞地通行権を主張できる,ということが民法上規定されています(民法210条1項)。
そうすると,袋地の『所有者』以外が使用している場合,つまり『使用者』は対象外と思えます。
しかし,このような杓子定規な解釈は不合理なので,次のように,拡張的な解釈がなされています。

<袋地所有者以外の囲繞地通行権主張の可否>

あ 袋地の地上権者

物権という性質→所有権と同類→通行権の主張可能

い 袋地の賃借権者

ア 対抗力(賃借権登記または建物所有権登記)がある場合
物件に近い性質→所有権と同類→通行権の主張可能
このような解釈を取る裁判例が主流である
※最高裁昭和36年3月24日;賃借権について
イ 以上の場合以外
仮に借地人自身の通行権の主張が不可能,と考えても,次の方法で主張が可能である
・借地人が地主(土地所有者)の持つ通行権を代位行使する(民法423条)