【いろいろな法律における『道路』の定義|道路関係・建築関係・刑法・税法】

1 『道路』は法律によって定義(範囲)に違いがある
2 道路法における『道路』
3 道路交通法における『道路』
4 道路運送法における『道路』
5 建築基準法における『道路』
6 車庫法における『道路』
7 刑法(往来妨害罪)における『陸路』
8 不動産登記法における『公衆用道路』
9 税務(固定資産税・都市計画税)における『公共の用に供する道路』

1 『道路』は法律によって定義(範囲)に違いがある

(1)『道路』の定義のまとめ

いろいろな法律で『道路』やこれに準じる用語が使われています。
最初にまとめたものを示します。

<いろいろな法律における『道路』の定義|まとめ>

法律 『道路』に関する規定内容 公道 公衆通行地(※1) 占有私有地
道路法 管理一般・道路占用許可
道路交通法 交通ルール遵守・駐車禁止・道路使用許可
道路運送法 自動車道運営・運送旅客業の監督・規制
建築基準法 接道義務(建築確認)・建築禁止 (※2)
車庫法 保管場所から排除
刑法 往来妨害罪における『陸路』
不動産登記法 『地目』の1つに『公衆用道路』がある
税法(一般) 固定資産税・都市計画税 非課税 非課税 課税対象

(2)『公衆通行地』は一般の方が通行している場所という意味(上記※1)

多くの法律で『(公道以外で)一般交通の用に供する(場所)』という定義があります。
法律によって違う表現というものもあります。
基本的に同じ概念なので,ここでは『公衆通行地』と略しました。
具体例は『私道』ですが,『公的な施設の敷地(公道ではない)』も該当することがあります。
また,『私道』で『一般の方が通行している』という場合は通常,『位置指定道路』や『2項道路』として指定されています。
また,建築基準法の2項道路における『セットバック部分』はこれに該当することがあります(後記『5』)。

<『一般交通の用に供する』の具体例>

行き止まりの私道 該当する傾向
貫通している私道(私道の両端が公道) 該当する傾向

(3)『通路になっていない私有地』はどの法律でも『道路』ではない(上記※2)

別の角度から言うと,『私有地』のうち,『一般の方が通行している』部分は『道路』として扱う法律が多い,ということです。
逆に『私有地』のうち『外壁の内側』など,『一般の方が通行しない』部分は純然な『私有地』です。
当たり前ですが,どの法律でも『道路』としての扱いを受けるはずがありません。
『一般の型が通行している』という判断は『現実的な状況』が基準です。
建物再築に伴い,『外壁の位置を変えた(セットバック)』の場合は,『セットバックした部分』は,新たに『一般交通の用に供する場所』になります。

(4)私有地から公道へ=『寄付』|受け付けられないこともある

『私道』は,管理を国・地方自治体が行ってくれないのが,大きな不都合です。
そこで,『所有権を渡して公道にする』という発想もあります。
具体的には『寄付』という手続です。
『寄付』については,国・地方自治体が受け入れるかどうかの審査が必要となります。
受け入れられない,ということも多いです。
詳しくはこちら|寄付採納承認申請をパスすると,寄付ができる→私道管理を市区町村が行う

2 道路法における『道路』

<道路法における『道路』>

公道のみ(国道・都道府県道・市町村道・高速道路)
それ以外(公衆通行地)は含まれない
※道路法3条

<道路法の概要>

あ 公的な管理

国・地方自治体が舗装・側溝などの道路整備をするのは『公道』だけ
『私道(2項道路・セットバック部分)」』の道路整備は行なわない

い 『占用』するには許可が必要

『占用許可』制度

<道路法の『占用許可』制度>

あ 審査者=許可申請先

道路管理者
国(国交省)・地方自治体のことです。

い 許可対象の『占用』

ア 露店・商品置場イ 地下道ウ 上空通路 例;デパート・病院などの渡り廊下
※道路法32条

3 道路交通法における『道路』

(1)道路交通法の『道路』に関する規定

<道路交通法における『道路』>

あ 公道
い 『一般交通の用に供するその他の場所』

※道路運送法2条1項1号

<『一般交通の用に供する(場所)』の意味>

あ 判断基準

『不特定多数の者が自由に通行(利用)できる状態かどうか』

い 具体例;判例の判断

ア 私有地も含まれるイ 『敷地に接続している私道(位置指定道路や2項道路)』は通常これに該当するウ 『セットバック部分』も該当するエ 一定の条件・範囲で『民間・公的な駐車場』も含まれる

なお,他の法律でも『一般交通の用に供する(場所)』という定義が存在します(後述)。
他の法律でも同様の文言なので,道路交通法の上記判断基準は共通と言えます。

<道路交通法の概要>

あ 一般的な交通ルール
い 『使用』するには許可が必要

『使用許可』制度

<道路交通法の『使用許可』制度>

あ 審査者=許可申請先

警察署長

い 許可対象の『使用』

ア 道路工事イ 工作物の設置ウ 露店・屋台の設置エ 『一般交通に著しい影響を及ぼす』通行方法・行為 例;デモ行進・ロケ収録・集会
※道路交通法77条1項

う 無許可での『使用』の罰則

懲役3か月以下or罰金5万円以下
※道路交通法119条1項13号

道交法の『道路』の基準・規制については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|道交法の『道路』の解釈・使用許可|私有地でも無免許運転となることがある

4 道路運送法における『道路』

<道路運送法における『道路』>

あ 公道
い 一般交通の用に供する場所
う 自動車道

『専ら自動車の交通の用に供する道路』(公道以外)
※道路運送法2条7項,8項

<道路運送法の概要>

あ 自動車道の運営

高速道路・有料道路の運営です。

い 運送・旅客業の監督・規制

典型はバス・タクシー業です。

一般的な『道路の使用・占用』については道路運送法の対象外です。

5 建築基準法における『道路』

バラエティに富んでいるので,別にまとめています。
詳しくはこちら|建築基準法の『道路』|種類

6 車庫法における『道路』

(1)車庫法の『道路』に関する規定

『自動車の保管場所の確保等に関する法律』が正式名称ですが,一般的な略称『車庫法』を用います。

<車庫法における『道路』>

あ 公道
い 一般交通の用に供する場所

※車庫法2条4号

<車庫法の概要>

自動車保管場所の確保

<車庫法の具体的な規制・手続>

あ 保管場所の確保+届出

自動車の保有者に『保管場所の確保+届出』を義務付けています。
※車庫法3条

い 長時間駐車への罰則

ア 罰則の対象 ・12時間以上の駐車
・夜間(日没〜日出)8時間以上の駐車
※車庫法11条2項
イ 罰則内容 懲役3か月以下or罰金20万円以下
※車庫法17条1項2号

(2)私道への駐車→罰則対象

仮に自分の所有地(私有地)でも,『道路』(私道)となっている場合,『駐車違反』の対象となります。
道路交通法でも,車庫法でも『一般交通の用に供する場所』は『道路』として扱うのです。
『セットバックした部分』は通常これに該当します。
『通常の駐車違反』では,反則金制度の対象です。
反則金を払えば,『罰金』=前科が付く,ということを回避できます。
しかし,車庫法の『長時間の駐車』はある意味『非常に重い』です。
『反則金制度』の対象ではないので,不起訴にならない限り,刑事公判or略式起訴となります。
そうなると,通常『懲役刑』か『罰金刑』が言い渡されます(車庫法17条1項2号)

『執行猶予』付くかもしれませんが,いずれにしても『前科』となります。
『反則金制度』が使えない,ということは本質的に『重い』ことになるのです。

7 刑法(往来妨害罪)における『陸路』

自動車や歩行者が通る,一般的な意味での『道路』は,破壊するなどで支障が生じると社会的に大きな損失(迷惑)を生じます。
特にひどいレベルのものは犯罪となります。
つまり,刑法上の罰則の対象,という意味です。

<刑法上の往来妨害罪>

あ 成立要件(構成要件)

『陸路』・水路・橋を『損壊』or『閉塞』して往来の妨害を生じさせる行為

い 法定刑

懲役2年以下or罰金20万円以下
※刑法124条1項

ここでの『陸路』については,公有・私有の区別をしていません。
現実的に一般の方が交通している場所(通路),という意味です。
結局,『一般交通の用に供する(場所)』と同趣旨と言えます。

8 不動産登記法における『公衆用道路』

土地の登記の表題部(表示)の1つの項目に『地目』があります。
『地目』は現況の使用状況を記録するものです。
『地目』の種類の1つに『公衆用道路』というものがあります。

ところで,理論的には『法務局の職権』で変更などの登記をすることができます。
しかし,現実には『当事者の申請』で登記されることがほとんどです。
そして,『公衆用道路』という地目を登記しても,理論的にはその他の法律・制度の扱いが変わるわけではありません。
この点,他の法律や税務において『一般交通の用に供する』『公共の用に供する』という判断・判定をする場合の『有力な判断材料』となります。
結果的に『公衆用道路』の登記は,他の法律・制度への影響が大きい,と言えます。
詳しくはこちら|私道が『公衆用道路』となると優遇措置,寄付すると市町村管理

9 税務(固定資産税・都市計画税)における『公共の用に供する道路』

<『道路』についての固定資産税・都市計画税>

あ 私有地一般

課税対象

い 『公共の用に供する道路』

非課税
※地方税法348条2項5号,702条の2

<『公共の用に供する道路』の定義>

何ら制限を設けず、広く不特定多数人の利用に供する道路
※昭和26年7月13日地方財政委員会通達

他の法律での『一般交通の用に供する(場所)』と似ていますが,言葉がちょっと異なります。
しかし,通達の解釈内容を踏まえると,『一般交通の用に供する』と同じ意味であると考えられます。
現実に『公共の用に供する道路』なのに,課税上,そのように扱われていない場合は,一定の手続で『変更』してもらうと良いです。
詳しくはこちら|地目を『公衆用道路』に変更するためには登記申請を行う

なお,以上は『固定資産税・都市計画税』だけについての説明です。
不動産譲渡所得税や不動産取得税,登録免許税などは別の扱いがあります。

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